皆さんのお宅にも、良く新築マンションのチラシやDMが投函されている事があるかと思いますが、実際にどのくらいの人がきちんと目を通しているのでしょうか?
私は、都心の物件は大抵資料請求をしており、中身もしっかり見ているのですが、昔から使われてきた鉄板フレーズや最近使われだしてきた言い回しもあって、いつ見ても読者を飽きさせません。最近ではクセの強い「やりすぎフレーズ」や、聞いててこっちが恥ずかしくなるようなワードチョイスもあり、巷では「マンションポエム」等と言われて密かに注目を集めているようです。今回、実例を挙げて紹介したいと思います。
いきなりですが、下の広告は、天下の「日清」が、上の「エクセレントシティ千葉グランクラス」のポエムっぷりに、オマージュした作品です。(日清の「いたずら心」は凄いですね)
この様に、マンションポエムは、もはや一大アートを形成しているのです。(適当)
目次
マンションならではの決まり文句
単語編
まずは初級編と行きましょう。基本的に、下のフレーズはマンション広告以外で見かける事はほとんどありません。おそらく不動産の色が強くつきすぎて、他の商品の形容詞にそぐわなくなってしまったのではないでしょうか?
瀟洒(な佇まい)
これは「しょうしゃ」と読みます。字も「酒」と誤認しがちですし、読み方も「しょうしゅ」と誤読してしまいそうです(ついでに「瀟」は書けない…)。ことばの意味も分かったようなわからない様な、「なんとなくよさげ」な感じは伝わりますが、正確には以下の通りです。
瀟洒→すっきりとあか抜けしているさま。俗っぽくなくしゃれているさま。 |
静謐(な空間)
これは「せいひつ」と読みます。とりあえず静けさが売りという事でしょうか。であれば、田舎は全て静謐なのか?とも思ってしまうので、これも一応言葉の意味を調べてみました。
静謐→① 世の中がおだやかに治まること。また、そのさま。 ② 静かで、落ち着いていること。また、そのさま。 |
〇〇の杜(に包まれた)
これも、良くあるフレーズですね。ちなみに、この「杜」という字、知ってそうで意外と知らない言葉ではないでしょうか。辞書で調べてみると、こんな感じです。
杜→・国訓では、神社の「鎮守の森」や「ご神木」を意味する。 ・「屋敷林」などの「人工林」「二次林」を意味する。潜在自然植生を踏襲する場合もある。 ・杜の都 – 宮城県仙台市の雅称・愛称。宮城県では「杜」の一字で仙台を暗に示している場合も多い。 ・森とほぼ同じ意味で使用する例もある。 ・樹木の密集した場所については森林を参照。 |
〇〇に棲む
また、ポエムパターンとして良くあるのが、上記の「杜」の様に普通の漢字は用いない所が特徴ではないでしょうか?「すむ」にしても素直に「住む」と書けば良いものの、敢えての「棲む」を使う事が多いです。これは「棲息」という言葉でわかる通り、人間ではなく、動物が「棲む」という場合によく使われる感じです。動物の住処の様に静寂に満ちた環境であるという事を暗喩したいという事でしょうか。
他にも、「憧憬の〇〇」、「煌めきの✕✕」など、お決まりの形容詞もマンションポエムには特徴的で、これからも悪ノリしてセンスある言葉遊びをして欲しい所です。
キラキラフレーズ編
一時、子供の名前もキラキラネームが流行りましたが、マンション界隈でも負けていません。もはや眩しすぎて直視することができないレベルです。こういうのは付けた当時は良くても、後で振り返ると、結構こっぱずかしいフレーズだったり(中には、マンション名が変だったり)します。いくつか事例を挙げてみましょう。
「永劫なる輝きの丘に、比類なき『住の叡智』が聳え立つ」 |
さて、これはどこの物件だかわかりますか?
はい、コレ、みなオジのオリジナルです(爆)。とりあえず、それっぽいものを作ってみました。なんか取り敢えず、スゲーものが、高台に出来ますよ、という事は伝わるのではないかなと思います。いや~、良くあるフレーズを組み合わせたらこんなんなってしまいました。ベタ過ぎて、どこかで似たようなフレーズが使われてそうです…
「上”室”に誘う、都会空間。Tokyoの中心で、トキメキを抱く。」 |
トキメキを抱けるかどうかは、自分次第な気もしますが…もはや、おやじギャグの領域で、悪ノリした 者勝ちの様相を呈しています。
他にも、韻を踏んだものや、パンチライン連発の作品(ラップか?)もお披露目しようかと思いましたが、間違いなく末代までの恥になると、ふと冷静になりヤメました。(賢明)
マンションポエムのコツって?
もはや、マンションポエムは作られ過ぎて飽和状態になっており、何か聞いたことのあるワードの組み合わせで、なんとなくソレっぽいものが出来てしまうという状態です。
個人的な話ですが、みなオジは以前広告関連の仕事を生業にしていて、人手が足りない時はキャッチコピー等を作っていました。(コピーライティングに関する専門的な学習経験は皆無で、ほとんど実戦でその場その場の思い付きで捻り出していたという感じですが。)まあ、センスがないのと語彙力が低いので、代表作といえるものは作れませんでしたが、そういう経験もあって、この手のコピーにはついつい目が行ってしまったという訳です。
マンションポエムの神髄はいかに羞恥心を捨て、「強いワード」を置くことができるかに掛かっていると思います。マンションは一生に一度の大きな買い物なので、非日常を醸しだす事がまず第一です。具体的説明はむしろ不要で、当たり障りのないイメージ先行の薄っぺらいものが好まれます。
(番外編①)港区にもキラキラネームの波が
みなオジが良く利用する道路で「新虎通り」(環状2号線)という道路がありますが、これは通称「マッカーサー通り」といわれています。これは、連合国軍最高司令官マッカーサーにまつわる由来があって名付けられたものですのでこれは関連のある通称として問題ありませんが、最近ではこの通りが東京オリンピック・パラリンピックに向けた選手村とスタジアムを結ぶ重要な道路であることから「東京シャンゼリゼプロジェクト」(!?)と銘打って、この道路を賑わいの場として活用するという取組みが行われており、新虎通りを「(東京の)シャンゼリゼ通り」と呼ぶようになっています(が全然定着していない)。
タクシーの運転手さんに意を決して「シャンゼリゼ通り使ってください」と言ったとき、「はい、環状2号ね」と復唱されたらクソ恥ずかしいのですが、PJ実行委員の人、責任取ってください。
みなオジ注目のマンションでも…
以前のブログテーマでも取り上げましたが、「パークコート虎ノ門」も三井不動産の最高峰マンションブランドであり、この物件に限らず非常にプロモーションが巧みです。(個人的には喉から手が出るくらい欲しい物件で、ブログ内でも大絶賛していましたが、予想通り、完成前に全戸申込となりました。)
過去ブログ マンションギャラリー訪問(パークコート虎ノ門)は→コチラ
下記は、PC虎ノ門のコンセプトブックなのですが、ポエムもここまで貫いてくれると、芸術作品として清々しささえ感じます。
「灯りながら、灯している」…通常なら突っ込みまくりなのですが、コンセプトブックへの金の入れ様と、そのクオリティを目の当たりにすると、ツッコミを入れるこちらがセンスないと思われてしまいそうです。
その他にも、「この地への敬意を草木に込めて」、「ガラスの内の宇宙を想う」の様に、マンションの資料かというほど、スケールの大きいメッセージが込められています。
(番外編②)タワーマンションにありがちなフレーズ
この件もご多分に漏れず、安易に他から拝借せずに、もっと、自分の地域にに自信を持って欲しい。
天空の〇〇
天空の…と言われたら、「ラピュタしかないだろ」って思ってしまいますが、マンション購入により自分の城となる訳で、あながち間違いでもないのかと一応自分を納得させました。これ、「高台」じゃダメなんですかね?
世界が待ち望んだ「特等席」
タワマンだと何を言っても許されるのか?とアンチが騒ぎ立てそうです。いきなり「世界」と、大きく出ましたが、アジアの島国は世界でどれほど「特等席」として認知されているのか、という議論は野暮というもの。港区のタワマンなら、少なくとも神宮外苑花火は見やすいかもしれません。(昨年は中止でしたが、2021年はやるのかな??)
不動産に結構ある、「虎の威を借る」パターン
みなオジが良く利用する道路で「新虎通り」(環状2号線)という道路がありますが、これは、新橋と虎ノ門の間を通す道路で別名「マッカーサー通り」といわれています。これは、連合国軍最高司令官マッカーサーにまつわる由来があって名付けられたものですのでこれは関連のある通称として呼ぶのに抵抗ありませんが、最近ではこの通りが東京オリンピック・パラリンピックに向けた選手村とスタジアムを結ぶ重要な道路であることから「東京シャンゼリゼプロジェクト」(!?)と銘打って、この道路を賑わいの場として活用するという取組みが行われており、新虎通りを「(東京の)シャンゼリゼ通り」と呼ぶようになっています(が全然定着していない)。
タクシーの運転手さんに意を決して「シャンゼリゼ通り使ってください」と言ったとき、「はい、環状2号ね」と復唱されたらクソ恥ずかしいのですが、PJ実行委員の人、責任取ってください。
マンション広告でも凄い感を出そうと思った時、手法としてこの様な「虎の威を借りるパターン」を採る事は結構あります。やりすぎは勿論アウトですが、次の段落では広告表現と規制(「グレーゾーン事案」含む)について触れていきましょう。
広告に関する規制を守ろう
一応、司法書士ブログのカラーも出しておきたいので、法律的な観点で不動産に関する広告についても語ると、(ポエムはさておき)広告表現についてはもちろん好き勝手やって良い訳ではなく、景表法(不当景品類及び不当表示防止法)などが定められており、そのルールに則って表示することが必要です。一般的に、「優良誤認」「有利誤認」(二重価格表示)や「比較広告」「最高級表現」の禁止などがあります。例えば「No,1」、「最高の」といった言葉は、客観的な資料を付けて証明しなければいけません。マンションに関するものであれば、「来場キャンペーン(来場全員に1,000円のQUOカードプレゼント)」や「成約キャンペーン(先着3名に合計300万円の生活応援資金プレゼント)」(いわゆる総付景品)についても、一定のルールに基づき実施する必要があります。
(1) 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること。 (2) 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。 (3) 比較の方法が公正であること。 |
また、不動産に関しては、公正取引委員会が統一ルール(不動産の表示に関する公正競争規約)を定めており、それに従う必要もあります。例えば、物件から駅までの所要時間(いわゆる「駅徒歩〇分」という表示)を表示する場合は「1分で80m」(2点間の直線距離ではない)を基準に算出する必要があります。この広告規約を破ると、不動産公正取引協議会からの警告を受け、悪質な場合は違約金が課せられます。
その他、有名なところでは、おとり広告(不当誘引)の禁止などもありますね。
ただし、上記の様な厳しい規制を設けても、簡単に新たな手段(もちろん合法)を駆使して消費者を混乱させてきます。さすがは海千山千の不動産業界ですね。
◆「期分販売」の「第4期第5次3戸 即日完売」(どんだけ区切るのか?)の様な販売状況の触れ込み
◆公共交通機関の「2路線利用可」(ただし、どちらの駅からも遠い!)
◆マンション名が別のアドレス(例えが微妙ですが、「東京〇ィズニーランド」(所在:千葉県浦安市))
この様に規制の効果のほどは定かではありませんが、見る側の成熟度も非常に大切だと思う今日この頃です。
過去ブログ:「期分け販売」についての解説は→コチラ(マンション抽選会の思い出(当選のコツを教えます))
マンションポエムの真の狙いとは?(邪推)
穿った見方かもしれませんが、チラシやDMには物件概要(駅徒歩、敷地面積、価格等)やスペックなど重要な記載が満載ですので、もしかするとマンションポエムの真の目的は、衝撃的なコピーを読み手にぶつけて、不都合な事実から検討者の目(注意)を逸らすという高等(?!)テクニックを駆使しているのかもしれません。深読みしすぎかな?