コロナ禍で混乱する経済状況では、現金も株式も信用できないという考えを持つ人が一定数存在します。すると、市場のマネーはそれ以外の資産に向かう事になります。投資用語で言うとこれをコモディティ投資といい、代表的な所では金やプラチナなどの貴金属、大豆、石油などの商品先物が代表的ですが、近年はこれらに加えてロレックスが加わってきたという事です。
最近のロレックスマラソンを見るにつけ、転売ヤーを含め、正規店巡りをしている人のうち、ロレックス高騰の流れがどこまで続くのか(まさか、永遠に続くとは思ってないですよね?)を理解している人がどれほどいるか心配になります。
この様にみなオジが心配になる程、ロレックスは投資…いや、もはや投機商品としての側面が強く感じられます。今回は、ロレックス1強の現状に一石を投じるテーマでお送りしたいと思います。
目次
時計好きにはロレックスを投資対象とするのは…
以前のブログテーマで、「ロレックスは資産性の面で(副業規制のある)公務員にお勧め」と言っておきながらナンですが、みなオジはロレックスを投資の対象として見ることはお勧めしません。
過去トピック ボーナスで買いたいロレックス3選は→コチラ
正確に言えば、最初から投資ありきで購入するのではなく、値上がりしていればラッキーくらいに(できれば自分が好きなモデルを)購入し、長く愛用して買い替えた時に結果的に損していなかったという流れが時計との理想的な向き合い方ではないかと思います。
みなオジの経験談的には…
実際に、みなオジもロレックスを10年間愛用し続け、それを手放したときに購入額以上で売れたという経験がありますが、購入した当時は値上がり等全く期待していませんでした(当時はロレックスが値上がりするなんて、全く考えていませんでしたし)。おそらく、投資目的でロレックスを購入していたら、(傷がつくことを恐れて)所有期間全く満喫できない(ほぼ観賞用)と思いますし、仮に手放したときに購入価格から1万円位しか値上がりしていなかったら、きっとその時計に失望してしまうと思います。
その点、端から値上がりを期待せずに購入すれば、購入時より1万円低い価格で買い取ってもらったとしても、1万円で高級時計を10年間も使う事が出来たと満足できて、下手な時計を買うよりお買い得だったとその時計に感謝の気持ちさえ抱ける事でしょう。
高級時計を投資として見た時の「3つのリスク」
先程のみなオジの例は、あくまで精神面におけるお勧めしないエピソードに過ぎません。実益的な観点としては、労力の割に効率的ではない事が挙げられ、具体的には以下の3つのリスクが考えられます。
・インカムゲインが生じない ・紛失リスクと保管コスト ・陳腐化リスク |
その1 インカムゲインが生じない
ロレックスが投資に向かない理由の一つ目は、100万円で時計を購入して売れるまでに10年保管したとして、その間そのロレックスは何の価値も生み出さないからです。つまり、株では生じる配当(インカムゲイン)が腕時計では発生しないのです。
また不動産であれば、すぐに売らなくても人に賃貸する事により毎月の賃料相当が振り込まれますが、時計は人に貸すには適しないので、ひたすら自分で保管する必要があると言えます。そうした場合、次の「紛失リスク」と「保管コスト」という問題に直面するのです。何より、あなたがロレックスファンである場合、使わない状態で手元に置いておくという事が、精神的にストレスになる可能性もあるのではないでしょうか。
ちなみに、現物資産である以上貸して(その使用料を得る)ことも可能ですが、その瞬間から「未使用品」ではなくなり売却価格が下がるということも念頭に入れておかなければなりません。もちろん、第三者に貸すことで高い利回りが得られるという事であれば、そのデメリットと比較して検討の余地はあるでしょう。最近では、時計の預託サービスを行う業者があり、その様な専門業者を利用することで万が一の紛失、盗難、故障の際は保障されるので、使用品を使わずに寝かせて置くくらいなら、レンタルなどでインカムゲインを狙うというのも一つかもしれません。
その2 紛失リスクと保管コスト
個人でロレックスを収集している場合は、通常、自宅等で保管しているかと思いますが、高価なモノを自宅に置くと、色々と心配事があるかと思います。例えば、時計(もしくは保証書などの付属品)を無くしたり、壊したり、盗難や火災など滅失する可能性もあります。リスク回避のために保険を掛けたり、貸金庫を借りれば、それにも年間のコストが掛かります。また、時計は精密機械なので、5年に1回はオーバーホール(5万~10万円程度かかる)を行う必要もあります。高級時計は維持するだけでも一苦労なのです…
その3 陳腐化リスク
また、時計の資産性は絵画等のそれとは異なり、難しい問題を孕んでいます。時計はヴィンテージになるくらい長い年数熟成しなければ、基本的に最新モデルには機能性で劣るという避けられない宿命を負う事から、中途半端に手元に置いたからと言って期待したリセールを得る可能性は低いのです。現状、ロレックスの価値が陳腐化による価値下落よりも高い水準で資産評価を上げていることから、ここ1年ほどロレックスマラソンが各メディアなどで取り上げられ、更に高騰へのスパイラルが続いている状態ですが、本来はそんな異常な状況下でなければ時計の価値は緩やかに落ちていくのが通常です。
目利きが大切
また、ロレックスだからと言って押しなべて全てのモデルの価値が上がっているかと言うとそうでもありません。当然ロレックスにも「デイトナ」の様な人気モデルがありますし、一方で素材などによっては、元の定価が高いことから転売時に利幅が取れない(要するに伸びしろが無い)というモデルもあり、資産性が上がる時計のターゲットを絞るのもそれなりの目利きが求められます。
高級時計の資産性とは
さらに時計の価格推移は消費者のニーズ(と、メーカーの気まぐれ←意外とこれが重要)による所が大きいので、考え様によっては株の銘柄よりも売り時の見極めが難しいかもしれません。
特に先般のコロナ禍では、実勢価格も大きく乱高下をしていたのが記憶に新しいところですが、これは工場の生産能力低下や不安売りによる中古市場への供給過多、余剰資産の流れ込み等複数の上げ下げ要因が絡み合ったものと思われます。実際に、銀座のホステスさんは緊急事態宣言下でクラブが休業したので、生活費の補填に質屋や買取店に買い取ってもらったという話を聞きました。
やっぱり、ロレックスはガンガン使いたい
何より時計は自分が気に入ったモデルを付けることが一番です。自分の好きでもない時計を「なんとなく値上がりしそうだから」と、購入しても保管の費用やストレスばかり掛かってしまいます。ロレックスを「一在庫」として見れる人にとっては良いですがなまじ時計好きだと、精神衛生上よろしくない事が多いのではないかと思います。
やはり、時計は「自分が使ってナンボの世界」です。特にロレックスは実用時計の最高峰ブランドであり、ガンガン使い倒してこそ、その価値を発揮するのです。
法律コラム:古物商の許可って必要?
ロレックス投資には必ず出口として「転売」、つまり「古物」の「売却」が生じるので、法律に詳しい方だと何らかの免許や許可が必要になるのではないか?と思われるかもしれません。
古物営業法に定められている
そもそも転売行為には色々な形態があり、一概に許可が必要であるとはいえません。少なくとも、新品をマラソンして購入し、その日のうちに買取店に売却する行為は、通常の消費者としてはモラル上問題があるといえるものの、特段法に反した行為ではありません。また、古物営業法との関係でも「古物営業」(古物営業法第2条第2項①~③)には該当しない為、古物商の許可(古物営業法第3条)を得る必要はありません。
ちなみに転売ヤーとは関係ないですが、部屋の片づけをしていたら、不要な時計がたくさん出てきたので、近所のフリーマーケットやフリマサイトで販売したとしても、古物商許可は不要です。(営利性も無く、売却に先立つ古物の仕入れも無いので)
ただし、中古品(古物)のロレックスを大量に仕入れ、それを営利目的で繰り返し販売すれば、それは古物営業に該当し、許可が無ければ無許可営業として処罰(三年以下の懲役又は百万円以下の罰金:古物営業法第31条第1項)を受けます。
古物営業法は比較的短い条文で読みやすい法律ですが、その分一般の方が変な解釈をして間違った運用しているケースも多いので、判断に迷ったときは、司法書士などに相談したほうが良いでしょう。