不動産

仲介手数料ゼロ業者は得なのか?

投稿日:2021年5月10日 更新日:

みなオジは、港区にマンションを購入してかれこれ5~6年住んでいます。基本的に住環境には満足しているのですが、他に欲しい物件が出て、新たにローン審査を通す際に現有のローンと切り離しが利かない場合があるので、現居を売って次の購入物件の住宅ローンを通せるようにする必要があるので、状況確認の為、年に1回くらいは売却査定をしています。

このとき望外に高い査定額が出たからと言って、売却査定の価格に一喜一憂してはいけません。結局のところ実際に売れた金額がその物件の実力だからです。会社によっては媒介契約を取るために高めに査定額を提示して、「この会社に依頼すれば、このくらいの高値で決めてくれるんだ!」と、オーナーの期待を煽ってきます。その為、みなオジは同じ会社に査定を出すことはせず、持ち回りで査定を出してもらう事が多いです。

どちらにしても、提示される査定額はみなオジ的にはどうでも良くて、その査定を持ってくるときにやってくる営業マンから最近の居住エリア(できれば、同マンションの条件の近い部屋)の売買実績を教えてもらう事が狙いなのです。レインズを見れば売出価格と成約価格は分かるので、不動産業をしている友人に聞けばいいのですが、借りを作るのも嫌なので、このような方法で定期的に相場のチェックをしているのです。

「あの」チラシの謎

これが、「求むチラシ」(実物)だ!
上記はS不動産販売のチラシ(ポスティング)です。

マンションに住まれている方は分かると思いますが、よくポストに「あなたのマンションを購入検討の方がいらっしゃいます!」といった、チラシが入っていたことはないでしょうか。みなオジも初めて自己所有の物件を購入した時は、なんだかプロポーズされているようで気持ちよかったのですが、以後10年間で1000通のDMが届いていました(決して大袈裟な数ではないです。)中には、成約情報やマーケット動向の資料を同梱してくる不動産業者もいるので、それらは読み物として残していますが、馬鹿の一つ覚えの様な内容の薄いDMはさっさとDMストップの通知を入れています(大手の会社の場合は大体それで止まります)。

・低層階で70㎡以上の部屋をお探しの方がいらっしゃいます。
・近隣マンションからの住み替えで築浅で予算〇千万円(市場相場より1割ほど高い)の方がいらっしゃいます。
・定年退職された夫婦が本マンションでお部屋を探されています。(現金で購入予定です)
「求む広告」内の、釣りコピーいろいろ
ある種の「芸術」を感じます

こんなことを言うと身も蓋も無いですが、基本的にあなたのマンションを購入検討している人なんていません。もちろん、中には特殊な事例(同じマンション内に親族を住まわせたい等)で指名買いもあるでしょうが、滅多に入るものではありません。あくまでも候補の一つに過ぎません。(ちなみに、本当に購入希望が入った場合は、よりダイレクトに電話等が入ってくる(どこで調べた?)か、より具体的な条件が記載されたお便りが入ってくることがあります。)

どっから電話番号聞いたの?

つい最近も聞いたことも無い業者から、みなオジが所有する(賃貸中で売却予定の無い)物件を売る予定有りませんかと電話で問い合わせがありました。番号を調べてまでわざわざコンタクトしてきた経緯はよく分かりませんが、同じマンション内で似たような間取りの住戸が売り出されていたが、売主の仲介会社から囲い込みをされていて買い仲介(客付仲介)が手を出せず仕方なく周辺の部屋の登記を調べて連絡してきているのかも知れません。(電話口で直接に聞いてみたら、(馬鹿正直にも)みなオジの連絡先は名簿屋から手に入れたと言っていました。特定の検討者がいるかはボカシていましたので、本当に売り玉に困って手あたり次第連絡しているのかも知れません。)

物件売却の際に思う事

上記の様に色々と業界の内幕を話していますが、購入経験は豊富にあるみなオジではありますが、売却については「寸止めボーイ」です。理由としては、単純に賃貸時の利回りが十分に取れているからという事と、所有物件が築浅ばっかりなので、単純に売却適齢期の物件が無いからです。ですので、いずれ売却を本腰入れて検討する事になるのですが、その時2つの問題が悩みの種となりそうです。一つは税金ですが、まあこれは、国民の義務なので仕方ありません。もう一つは、仲介手数料の問題です。

物件売買代金媒介報酬(仲介手数料)上限
200万円以下の部分取引物件価格(税抜)×5%+消費税
200万円を超え400万円以下の部分取引物件価格(税抜)×4%+消費税
400万円を超える部分取引物件価格(税抜)×3%+消費税
ちなみに、速算式を使うと下記の通りとなります。
・売買価格×3%+6万円+消費税(売買金額が400万円超の場合)
・売買価格×4%+2万円+消費税(売買金額が200万円超400万円以下の場合)

通常、物件を売却する際は、仲介会社と媒介契約を行います。上記の表は、仲介会社が買主を連れてきて無事、物件の売買が成立した時の成功報酬となります。ですので、もちろん媒介契約まで締結しても、買主が現れずに(通常3か月の)媒介期間が満了しても、売主側は仲介会社が負担した広告費や人件費などの費用や諸経費等を負う事はありません。しかし、上の表を見て気づく方もいるかと思いますが、この報酬額、実は上限額なので1,000万円のマンションの売買を成立させても、当事者としては3%以下の報酬額でも良いですし、自由に割引をしても問題ないわけですが、実際のところ事業者側が3%以下の報酬で行う事は原則なく、せいぜい報酬額を10%割引します等のサービスに留まります。売主もそれ程疑問を持たずに3%という数字を受けれているように感じます。

仲介手数料の妥当性について

しかし、みなオジ的にはこの3%+6万円が定率化している事については、非常に疑問を持っています。なぜなら、売却活動については1000万円の物件だろうが、1億円の物件でも行う事は基本的に同じだからです。もちろん、仲介会社の責任も価格に応じて増えるというのも理解しますが、それでもそれが3%という定率で増えるというのは納得できない所があります。というのも、みなオジの物件は1億を超える価格もあり、仮に1億円で売れた場合の仲介手数料は100,000,000×3%+6万円+10(消費税)で、336万6千円(税込)となるのです。この価格が妥当かどうかは主観やそれぞれの立場もあるので多くは語りませんが、そろそろ別の報酬額算定の方法があっても良いと思います。

ただでさえ不動産の仲介については、囲い込みや、双方代理の問題も内包しているので、これらの問題と一緒に報酬額の見直しについても議論してほしいと思う訳です。まず、考えて欲しいのは買主と売主の利益(安く買いたい/高く売りたい)を最大化するのに、その間を取り持つ仲介者が同一人というのはおかしいでしょ?!

これはみなオジが、なまじっか司法書士なんて仕事を生業にしているから、特に疑問に感じるのかも知れませんが、例えるなら、裁判で原告・被告が同じ訴訟代理人で戦うのと同じです。原告・被告共に代理人への信頼を抱くことは物理的に無理です。

仲介手数料0業者について

ゼロほど怖いものは無い?

そんな売主の不満を救い上げたのか、最近では売主仲介手数料を無料(もしくは半額)という業者も出てきています。今回は、この手数料0業者についての是非を検討したいと思います。

囲い込みと両手取引

まず、不動産取引に詳しくない方に説明すると、中古物件の取引は、法人でない限り所有者(売主)が直接売買を行う事はありません。通常は仲介会社と媒介契約を結んで、物件の売却活動を進めてもらいます。媒介契約には一般・専任・専属専任と3種類あり、基本的に後者に行くにしたがってより密接な仲介の関係性となります。それぞれの媒介様式には長所と短所がありますが、不動産取引の不透明さが生じてしまう原因として専任媒介以上の契約における「囲い込み」の問題が生じます。

最近は各社コンプライアンス(法令遵守)が浸透してきたので、あからさまな囲い込みは減少しました。みなオジは先ほども言ったように、購入経験は多くありますが、購入時も基本的には中古取引には積極的ではありません。というのも、購入時に囲い込みにあったからです。囲い込みをしていたのは大手べロッパーの子会社の仲介T社ですが、みなオジが気に入った物件について客付け仲介から何回も問い合わせたにも拘らず、T社からの返答は商談中との一点張り、試しにみなオジがT社に電話したところ、「内覧可能ですのでいつでもいらっしゃってください」と回答があったのです。基本的に仲介会社は上記の仲介手数料を買主と売主双方から得る事が出来ます(これを「両手取引」と言います)が、客付けの仲介経由ですと、買主の報酬は客付け業者に入ってしまうので、元付業者的にはおいしくありません。ですので、元付業者は買主も自社で捕まえようとするのです。

専属専任専任一般
契約できる不動産会社の数1社のみ1社のみ何社でも(他社に対して、どこに
依頼しているか明示しなくてもOK)
契約期間3ヶ月以内3ヶ月以内上限なし
レインズへの登録義務契約後5日以内契約後7日以内なし
売主への報告義務1週間に1回以上2週間に1回以上なし
自己発見取引不可
媒介契約の違い

その為、その前に客付け業者から問い合わせが入っても、基本的にブロック(囲い込み)する事となってしまうのです。結局、こういう事が起こると依頼主である売主にとっては「売却機会の喪失」という点で不利益になってしまうのです(売却期限が決まっている様な取引では、特に)。はっきり言って、売主的には「両手なんか狙ってないで、さっさと売ってこんかい!」という話なのです。ちなみに、売主が両手取引を許容できるとしたら、仲介会社が両手仲介できた場合は、売主からの仲介手数料を半額にするなどのルールにすれば、まだ囲い込みをして売却時期が伸びたとしても多少は溜飲が下がります。1000万円程度の不動産ならまだしも、1億円の物件の仲介を任せているのに、それはないんじゃないの?!というのが正直なところです。

仲介手数料0ならば、問題解決するのか?

冒頭の通り、どうせ両手取引を狙われるのならということで、前段のようなルールを半ば自主的に行う業者が「仲介手数料0業者」です。つまり、「基本的に両手しか狙わないので、売主さんからは実費くらいしかもらいませんよ」という、「ハナから両手狙います」を宣言している仲介会社です。これであれば、多少売却が遅くなってもその恩恵は仲介手数料のほぼ無料というメリットで相殺(もしくはそれ以上)になりますので、売却期間に囚われない様な一定の売主には非常にハマる売却方法となります。

むろん、この手数料0スキームはデメリットもありますので、その点をよく理解した上で依頼をすることをおススメします。具体的なデメリットは以下の通りです。

「両手取引」を目指した売却活動による不利益
不利益① 早く売れにくくなるため、売却期限のある物件(例:売却条件を付けられた買替え)の場合は危険。

不利益② 高く売れにくい。場合によっては売出価格に口出しされる恐れがある。(反響が落ちるので)
また、両手取引が基本なので、基本的に買主有利な交渉(例:えげつない指し値)を持ちかけられる可能性あり。
※このような手数料0業者は、レインズには掲載しません。客付けから無駄に問い合わせが入るだけで意味ないので。
(基本的に自社のネットワークを使って販売を行います。これにより販売力の低下が生じます。)

まとめ

どのような仲介方法も万能ではありません。大切なのは、自分(の物件)に合った売却方法とデメリットを理解した上で選択することです。少なくともこの点だけ理解しておけば「こんなはずではなかった!」といった後悔は減るでしょう。皆さんもリスクコントロールした上で、納得の取引を目指して下さい。

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港区オジさん(みなオジ)です。
長い極貧オジさん生活を経て、いつの間にか小金持ちのアーリーリタイアオジさんにクラスチェンジしました!
投資家と司法書士の肩書を有する一方、妻の尻に敷かれるちょい駄目オジさんの異名も持つ。