前回の新築マンションの値引きテクニックを伝授します PartⅠでは、思ったよりネタが多かったので、分冊としました。前回の概要はマンションを値引きしない人は意外と多いという導入とマンション値引きのHow toをお伝えし、無理筋パターンと値引き交渉の期待ができるパターンを7つほど挙げて、そのうちの④までをPartⅠで記載したというところです。
個人的に思うのは、中古マンションはえげつない程の指値が常態化しているのに、新築ではあまりそれが生じていないのは、中古物件はそこに利益相反とは言え、仲介会社が入っているからだと感じます。つまり、買主売主双方の状況を理解している仲介会社が、いい塩梅で価格の中間地点を引き出す役割を果たしているといえるからです。(そもそも、現在の中古物件の売出価格は値上がり基調&在庫不足である不動産市場を反映して、かなり高めで出しているというのも指値が前提となっている原因といえますね。)
少し道からそれましたが、おさらい程度に値引きが難しいケースと期待できるケースを見てみましょう。
目次
値引きが難しいケース
①人気物件(希望住戸を抽選で当てた)のケース ②そもそもパンダ部屋である場合(これ以上、販売坪単価を下げたくない) ③売主が〇〇(個社名)の場合 |
③については、PartⅠではあまり触れませんでしたが、みなオジは、値引き対応しない売主はダメだという評価はしていません。その理由としては第1に、その売主は確かに高いが、それなりに高いクオリティの建物を分譲しているという事実があるからです。品質が良いものは、それなりの価格で提供すべきですので、値引きを(安易に)しないというポリシーは売主の自信の表れだと評価します。第2には、あなたが新築物件の買主(契約済み)の立場になったとして、その物件を購入後にそのマンションがバンバン値下げされて売られていたら、精神的に凹みませんか?
また、価格を崩さないという事は、中古で売る際にもその物件が仮に売れ残っていたとしても高く維持されているという事になりますので、中古価格もその価格を基準に設定できることから、それはそれでありがたい販売方法といえるのです。
値引きが期待できるケース
さて、①~④はおさらいがてら見ていただき、⑤から改めて解説しましょう。
①年度末、決算月の場合 ②販売不振の物件の場合 ③買主の財布事情が厳しい場合 ④売主に販売上のミスがあった場合 ⑤希望住戸の変更提案があった場合 ⑥購入の熱意が高い、信頼できる買主 ⑦個別事例 |
【⑤希望住戸の変更提案があった場合】
これは、【値引きが難しいケース①:人気物件】と類似したケースなので意外と思われるかもしれませんが、人気物件で希望住戸が重なった結果、人気の部屋に偏りが生じてしまうと、売主側は効率的な販売が出来なくなる(抽選の落選者に逃げられる、または購入のモチベーションが下がる)ので、事前に無抽選や低倍率の部屋に登録者を誘導することが考えられます。実際、みなオジも誘導された経験があります(提案は受けませんでしたが)。
具体的には、こんな感じです。「(パンダ部屋である)〇〇号室には倍率数十倍を超す登録の申込が入っています。このままでは〇〇さんの希望は通らないと思いますので、1階上にも同タイプの間取りが売られているので、現状この部屋なら無抽選(もしくは低倍率)ですので、変更しませんか?」という提案を受けるケースです。この様なケースであれば、パンダ部屋価格にプラスαの価格となるような値引き交渉をするのはアリだと思います。この方法であれば、抽選が絡むような人気物件でも実質的な値引きが可能となります。
ちなみに、息詰まるマンション抽選の裏話はマンション抽選会の思い出(当選のコツを教えます)をご覧ください。
ガラポンで、事前に特訓するのも一手か?
【⑥購入の熱意が高い、信頼できる買主】
これ関しては意外に思う方もいるかもしれませんが、販売員も人間ですので、購入検討者の購入意思が高ければ、値引きに前向き(言い換えれば、安心して値引きを提案できる)になるものです。これは、別に浪花節を説いているわけでは無く、現実的な問題であり、仮に割引を提案したは良いが、結局購入しなかった、では販売員自体も徒労に終わりますし、割引を許可してもらった上司にも見込みが甘い!と怒られる羽目になります。
さらに、万が一その検討者から値引きの事実が他の検討者や契約済買主に洩れると、販売上めんどくさい事になるので、値引可能な対象者の条件は、絶対に購入するという意思が確認できる事となるのです。信頼できる検討者であるという事も同じ理由です。そのため、買主側も購入の意思や情熱を持って交渉に臨む、具体的には「現状、予算不足だが〇〇万円まで、譲歩いただければ本日契約します」等と言った覚悟を見せる必要があります(令和の時代に浪花節を?と思われるかもしれませんが、人対人の契約とは、得てしてこの様な感じです)。
「購入の熱意」だけでなく、「購買力」のアピールも重要
また信頼という意味では、既に提携ローンなどの融資の承認が取れているという状況も◎です。結局、ローン融資が下りなければ、いくら値引き提案しても徒労に終わってしまうので、少なくとも値引きの交渉の土俵に乗るためには購入が可能な根拠をアピールしなければいけません。具体的には、先程のローン承認の他に(他物件でも良いので)一定額以上の「融資(仮)承認通知書」か、売却資産の証明として買替えの物件の所有を証する書面(登記事項証明書)等があると、十分な購買力を有しているとみなされて、売主側から「踏み込んだ提案」をしてもらえる可能性が高まります。
【⑦個別事例の場合】
これは個別事情なので、皆にあてはまる一般的なケースとはいえませんが、例えば、複数住戸を購入する場合等(2世帯、自己所有+投資用、等)、通常の購入形態でない場合は値引きを引き出せる可能性が高まります。住戸に限らず「BUY 2 GET 5% OFF!」というのは、どの世界・商品でもある話です。
それでも値引き交渉は…という人へ
皆さんの中には、値引きはセコイと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、みなオジ的には、その値引きが理論的であって、額が一般的に妥当な範囲であればむしろトライすべきだという考え方です。大量生産された規格品ならまだしも、不動産の様な一物一価の商品は値付け自体妥当なものかわからないのですから、値引きを試す価値は高いと思いますし、売主側もある程度は値引きありきの販売を想定しています(実際に相手がそれを受けるかどうかはさておき)。
また、物件金額が金額だけに躊躇するという方もいらっしゃいますが、みなオジから言わせてもらうと、「そんな高額の買い物をするのに、お土産一つ付けへんの?」という感じです。冒頭にも記載しましたが、少なくとも値引き理由にきちんとした理論(ストーリー)があれば、相手方も無視できないはずです。
現実的な値引き幅のラインは?
まず、値引きを狙うなら、まず売主側の新築マンション事業の収益構造を知る必要もあるでしょう。本ブログの過去トピック「残価設定型」住宅ローンは、高騰を続ける不動産市場の起爆剤となり得るかの中で、デベロッパーが新築マンション販売時にどのように値付けをしているのかを記載しています。新築マンションの原価は、基本的に「土地の仕入れ」「建築費(ゼネコンへの支払い)」「(広告費含む)販売費」に利益を10%ほど乗せた額が販売価格の全体となります。
ですので、基本的に損益分岐点を超える値引きは行わないでしょう。また、売主の販売方針も絡んできますので、一概にこのくらいの割引率だとも言い切れません。特に、資金調達絵力に優れる大手のデベロッパーは、それ程売り急ぐことはない事から(エンドユーザー(個人顧客)に対しては特に)大幅な値引きは実施されません。裏を返せば再販業者に対してはバルクセール(まとめ売り)で安く卸すことはあり得るという事です。(最近では海外からの買い付けも多いと聞きます)
具体的例を挙げて、値引きの論理を説明
上記の新築マンションのビジネスモデルを踏まえ、一棟100戸で構成されるマンションを例に具体的に説明しましょう。
売主はまず1棟全体の販売価格を出します。マンションの100戸の中には、方角、階数、角部屋/中住戸、仕様(プレミアム/エグゼクティブ/ノーマル(賃貸))、面積で条件が異なりますので、良い条件の部屋には強気の価格設定をし、悪い条件の部屋はパンダ部屋(客寄せするために、広告用のお手頃価格で販売)として売り出します。つまり、住戸ごとに利益率は異なるのです。
極端な例を言えば、千代田区の皇居が望めるような眺望の部屋や港区の東京タワーが眼前にそびえる眺望の部屋であれば、かなり高い値付けをしても真っ先に売れていきます。(みなオジの経験的には、高額物件程、最上階や眺望の優れる部屋から成約していくイメージがあります。)
下記の「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」は全住戸1億円以上、最多価格帯2億7000万円、最高価格5億4200万円でしたが即日完売でした。(平均倍率5.09倍、最高倍率13倍)
周辺相場から見てもこの物件は飛びぬけて高額でしたが、この様な唯一無二の武器を持ったマンションは絶対に値引販売することはないでしょう。
結局のところ、売主は住戸単位ではなく、一棟のマンションプロジェクト全体で利益を判断するので、条件の良い部屋が販売期間前半で捌けた場合、その時点での利益率は15%以上あるかもしれませんので、最後に条件の悪い部屋が1割ほど残っていたとしても、前半戦に稼いだ利益率は多少吐き出しても良いという判断になり、場合によっては10%を超える値引きというのもあり得るのです。(あくまでも理論値です。みなオジが過去最高に頑張った最高値引き率は8%が限界でした。)
値引き時に注意する事
高額物件で、望外の割引(例えば10%以上の割引)を引き出せると、人間は高揚して、ついついその物件を購入してしまいがちですが、あえてそういう時こそ一回踏みとどまって考えて欲しいと、みなオジは考えます。
つまり、値引き後の価格は相場と比較して適正な価格といえるのかということです。結局、値引きが提示されるという事は、値引き前の価格では需要が無かったという事の裏返しですので、値引きしたからといってもそれが適正価格だといえるかは保証されていないのです。ですから、大幅値引きがあった時こそ、その価格が妥当なのかを再度周辺と比較してみる心のゆとりが必要といえるのです。
みなオジの経験でいうと、過去に引き渡しが翌月に迫っている新築マンションを8%引きで購入したことがあるのですが、それでも、今所有している物件の中では利回りが一番低い物件であり、値引きをせずに購入したほうがよっぽど収益性が高いというケースも良くあることなのです。逆に、この物件を値引きせずに購入した契約者は、値上がりの恩恵もそれ程(とはいえ、購入時より高い価格で売れている様ですが)無かったと思われます。
何をもって「値引き」というか
値引きそのものではなくても、売主側から提示されるものにはいくつかの類型に分けることができます。中には「値引き」と言ってしまうと、既に購入した買主からの反発を招くので、表現を変えて提案されることも多いです。みなオジが実際に見たもの、提示されたものについては以下の通りです。
①諸費用(登記費用、ローンに係る費用、管理費準備金など)カット ②(モデルルームとして利用していた部屋の場合)その部屋に備え付けられていた家具や建具の無償譲渡 ③商品券、引越費用プレゼント(新生活応援キャンペーン等と銘打って) ④オプションポイント贈呈(買主がポイントの範囲で希望のオプション購入費用に充てられる) ⑤提携企業割引 |
買主側として一番形として分かりやすいのは「現金値引」そのものですが、そのほかにも実質値引きに近いものとして次の①~④まであります。
基本的に、お金に色はありませんので、経済的利益が同じであれば値引きであろうと①~④のサービスも同じではあるのですが、その住宅がどのような目的で購入するものか、また、一部税金の計算などで費用の計上が影響することがあるので、値引きの提案をいくつか選ぶことができる場合は、多少検討をした方が良いかもしれません。
みなオジの様に、投資物件として購入したり、永住を前提としていない場合は、そのマンションに投資する(付加価値を上げる)様な④のオプションサービスは優先順位が低くなりますし、数年内に売却予定であれば、①の諸費用カットよりも物件価格そのものからの直接値引きの方が有利なケースもあります。②についても、モデルルームの家具はプロのインテリアコーディネータがチョイスしたセンスの良い家具や建具が付いてきますので、コーディネート費も考慮すればおすすめですが、そもそも自分のセンスと合っていなければ意味がありませんし、既に立派な家具を持っていればムダ(むしろ、粗大ごみの処理費用がかさむ)になってしまうかもしれません。
提携企業割引とは?
提携企業割引とは、売主に何らかの関連がある企業に勤めている従業員向けの割引制度です。提携企業割引も値引きには違いないので一応類型に含めましたが、物件価格の0.5~1%(数十万程度)と少額な事と特にテクニック的なものは必要ない(申請手続だけ行えばOK)という意味で、特にこれには触れません。逆に言うと、この程度の割引は売主にとっても許容範囲(誤差程度)なので、皆さんの勤め先がこの提携企業に含まれない場合等は、納得いかないと粘って(駄々をこねて)、その分の値引きを売主から引き出すというのはありかも知れません。(ややセコイですが…)
値引きは戦略だ
単に値引きといっても、八百屋さんで行う様な単純なものではなく、【④売主に販売上のミスがあった場合】に挙げた様に、トラブルが起きやすい不動産取引において、多少のことはお金で解決という、戦略的なツールとしての性質もありますので、使いどころをよく考えて使いこなしていきましょう。ここでは記載していませんが、いつ値引きを切り出すかというのも結構重要だったりしますので、融資審査が通過した後や、抽選に落選した後、契約の意思表示直前等の重要ポイント毎にチャンスを狙っていきましょう。
ライバル物件を念頭に置きながら交渉すべし
また、商談時には仮想ライバル物件(特に、近隣の新築マンション)などを想定しながら話をすると具体性を持って(比較しながら)物件価格の話題ができますのでお勧めです。まさに3月末引渡の契約の駆け込みが多くなっていると思いますので、これらを参考に良い条件を引き出してください。