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司法書士+広告=過払い金?

投稿日:2022年3月4日 更新日:

今回は司法書士と言えば広告?という事で広告について書いていきます。広告って業界ごとの特徴がよく表れていて見ていて非常に楽しいものです。みなオジも広告宣伝の法的アドバイザリーを行っていて、多少知見を有している事もあり、身内である司法書士業界の広告事情について取り上げてみようと思った次第です。

司法書士の知名度が低い問題

法律に詳しくない方は司法書士と聞いても、何それ?状態で、行政書士と何が違うのかもよく分からないというのが大半ではないでしょうか。

しかし、そんなマイナー資格である司法書士を一気に注目させたのがあの「過払い金CM」です。専門的に言うと、債務整理の際にグレーゾーン金利(現在は禁止)を設定していた、消費者金融やカード会社に対して債務者つまり利用者が払い過ぎた金利を取り返すことができるというものです。

グレーゾーン金利とは
利息制限法の規定(年15%~20%)を越え、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(いわゆる出資法)の規定する上限金利(年29.2%)を越えない範囲の金利のこと。

以前から債務者保護の要請で関連法の改正が叫ばれていましたが、みなし弁済に関する平成18年1月13日の最高裁判所の判決が契機となり、そこから過払い金返還が広く認知されることになったのです。

最判平成18年1月13日
期限の利益喪失特約の下で、「債務者が、利息として、利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には、上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である」と判示して、グレーゾーン金利での貸し出しは実質的に無効となった。

一方、司法書士は元々裁判業務は行う事ができませんでしたが、改正司法書士法が平成15年4月1日に施行されたことにより、法務大臣の認定得た上で簡裁訴訟代理権を有する事ができるようになったのです。

ここに、歴史的な過払い金返還業務と(認定)司法書士の邂逅が生じたのであります!

これにより司法書士業界はちょっとしたバブル景気が到来し、皆さんの記憶にもある通り、(しつこい程の)過払いCMが各媒体で始まったのです。

最初は司法書士の認知を高めるだろうと「もっとやれやれ」と思っていましたが、かなりの頻度で集中的に流されたという事もあり、だんだん耳障りになりました。しかもあの独特なトーンで「払い金の返金期限が近づいています!ジューニジューサンジュー!!」

うぉー!!!!!夜うなされるわ!

私の知り合いからも「なんか品が無いですねぇ、あのCM」「ナレーションが頭に響く!」なんて言われたこともあります。「なんか、ごめんよ…」と、関係ないのに謝った記憶もあります。

司法書士の広告も規制されている

こんな意見が多かったからかどうかわかりませんが、単位会の一つである東京司法書士会でも平成19年5月19日に「東京司法書士会会員の広告に関する規範規則」が制定されています。

この規則の中でいくつか気になる条文をピックアップしてコメントを付けていきたいと思います。

(目 的)
第1条 この規範規則は、東京司法書士会会則(以下「会則」という。)第101条及び司法書士倫理第16条に基づき、東京司法書士会会員(以下「会員」という。)の業務広告(以下「広告」という。)に関する品位の保持に必要な事項を定めることを目的とする。

司法書士が行う広告についてはこの第1条の文言に尽きると言ってよいでしょう。要するに、国から登記などの独占業務を付与され、国民の権利擁護を期待されている事を鑑みれば、営利以上に本職としての「品位保持」に努めなければいけないと釘を刺されている訳です。

また第2条では広告手段は紙媒体の他、WEBも該当しますし、事務所が行う無料法律相談会という名目でも、顧客誘引の意図が認められる場合は広告に該当し、この規範規則の規制を受ける事になります。

(禁止される広告)
第3条 会員は、次の広告をすることができない。
(1) 事実に合致していない広告
(2) 誤導又は誤認のおそれのある広告
(3) 誇大な又は過度な期待を抱かせ、あるいは過度な不安をあおる広告
(4) 他の特定の司法書士又は司法書士法人の事務所と比較した広告
(5) 法令、司法書士倫理又は会則等に違反する広告
(6) 司法書士の品位又は信用を損なうおそれのある広告

第3条は司法書士に関わらず、JAROで言われている事ですね。「嘘・大袈裟・分かりにくい」広告はアウトです。これに加えて(5)(6)で司法書士倫理・品位という1段高いハードルでジャッジされるという事を覚悟しなければいけません。

先程の「ジューニジューサンジュー!!!!」は、「電話番号覚えやすいだろ!」と広告主から言われそうですが、品位や依頼者に過度な期待を抱かせていないかという観点で議論になりそうです。

(1)については、広告を出す側と依頼者(一般人)の知識の差も把握しなければいけないでしょうね。たとえば、司法書士補助者や未登録者(いわゆる試験合格者)をあたかも資格者の様に示す事は、仮に事務所側に悪気(騙す気)が無かったとしても一般人はこれらの違いが分からない為、誤認を招きトラブルになりやすいという事を認識しておくべきです。

また、所員の経歴・キャリアの詐称も注意です(特に代表社員や所長)。確かに司法書士は大学を卒業しなくても、試験にさえ受かれば登録できますが、ホームページに載せる時はどうしても学歴などを盛りたくなってしまうというのは分からなくもないですが、絶対やってはいけません。司法書士ならずとも痛い目に遭った人がいたかと思います。

また、女性からの相談を増やしたいからと、女性の司法書士がいないのに、「女性の資格者が貴方の悩みに丁寧に対応します。」といったキャッチコピーで誘客することもNGです。

このほかに注意すべきものとしては、他業種では慣習になっているようなプロモーション活動が禁じられている点です。具体的には、家電量販店が行っているような「他店より安い商品(司法書士報酬)があれば、その金額より安くします。」というもの。

また不動産業者や各種スクールが行っているような紹介キャンペーン「知人を紹介いただければ、紹介料を紹介者に差し上げます」という誘客も第3条5号違反となります。

これを見ると厳しいなぁ…と思われる人が多いかもしれませんが、個人的にも司法書士は他士業も含めて国内で最高クラスに厳しい倫理規定を持っていると考えています。規範では品位信用を損なう様な広告を禁じておりますが、その判断主体はあくまで見る側の感覚としていいますが、一応、東京司法書士会は具体的に以下の様な指針を示していました。(興味深かったので、そのまま転載しておきますね。)

・他人に不快感を与える拡声器で連呼する広告
サンドイッチマン、プラカード等による司法書士に対する国民の信頼を損なう広告
・違法・脱法行為を助長したり、もみ消しを示唆する広告(「中間省略登記が可能です。」等のその他脱法行為)
ことさら残酷または悲惨な場面を利用した広告
↑ これがサンドイッチマン

拡声器で連呼?そんな広告、今はパチンコ屋でもやって無いですし、唐突に拡声器というのも違和感を感じます。(何か裏に意図があるのか?)サンドイッチマンなんてお笑い芸人以外の意味で知ってる人いるんでしょうか?

ことさら残酷または悲惨な場面というのも、どういう場面だか抽象的でよく分からないですね。とにかく品の無い広告は全てNG!という事なのででしょう。

ちなみに司法書士として気になったのが、中間省略登記のくだり。これ「新・中間省略登記」はOKだけど「中間省略登記」はダメってことだと思うけど、両者の違いがどこまで世間に浸透しているか疑問ですし、一般人は「三為契約」と言われても?でしょう。(おそらく不動産業者向けに発信しているという事なんでしょうが、意味が分からない人は気にしないでください。)

その他の注意点として「最上級表示(例:日本一実績のある司法書士」は優良誤認表示としてNGとなります。このほかド派手な点灯式ネオンサイン等の設置も禁止されており、景品表示法(第5条1号:優良誤認表示、2号:有利誤認表示)や屋外広告物法(←初めて聞いた)や各自治体の屋外広告物条例の規制に準じた取扱いとなっている事が分かります。

カニの看板がOKなら、何でもアリな気が…

あと、効果は抜群だと思いますが、風俗雑誌消費者金融の店内に広告物を掲示するのもダメとの事。(過去、これにトライした司法書士事務所あるのかなぁ?)

(ウェブサイトを利用した広告)
第3条の2 会員は、ホームページ、ブログ等の情報通信回線を利用したウェブサイト(以下「ホームページ等」という。)の開設者(以下「開設者」という。)に広告を依頼する場合、次に該当するときは広告を行ってはならない。
(1) 会員が開設者又は開設者が指定する第三者(以下、併せて「開設者等」という。)に対し、正当な広告掲載料金以外の金銭その他の対価(以下「金銭等」という。)を支払うものであるとき。
(2) ホームページ等を閲覧した者(以下「閲覧者」という。)が開設者等に対し、開設者等が司法書士を紹介することに関し、金銭等を支払うものであるとき。
(3) 開設者等が閲覧者と司法書士との間における正常な報酬の決定・事件の処理等、司法書士の業務及びその付随業務に関与できるものであるとき。
(4) その他ホームページ等に広告を行うことにより、法令、司法書士倫理又は会則に違反するおそれがあるものであるとき。

第3条の2の1~2号はまさに司法書士倫理が問われるところで、いわゆる「専門家紹介サイト」に関する取扱いを含んでいます。司法書士会的には、大きな括りで言えば広告業者に対するキックバックの温床だろうという事の様ですが、成果報酬型課金制の広告料かどうかは巧妙にカモフラージュされているので外からは分かりにくいので摘発はされにくいとは思います。

しかしながら、一般的にこの様なサイトから誘引できる様な「一見客」から受任したいと思うものでしょうか??

3号については、広告会社が法律事務所を実質支配した事件として「東京ミネルヴァ法律事務所」の破産について当ブログで触れていますので、興味があればご覧下さい。司法書士についても起こり得る話です。

関連過去ブログ:謎な問合せいろいろ その①(事務所乗っ取り問題)は→コチラ

(訪問等による広告の禁止)
第7条 会員は、面識のない者に対し、訪問又は電話による広告をしてはならない。ただし、次に掲げる場
合は、この限りでない。
(1) 業務の依頼を希望する者から請求があった場合
(2) 事業所内においてその事業に従事する者に対して行う場合
2 会員は、面識のない者に対し、電子メールによる広告をしてはならない。ただし、その者の承諾を得、
かつ、その者が受領を拒むことができる仕組みを有する場合は、この限りでない。

司法書士は個人宅への押売り…じゃなかった飛び込み営業は出来ないという事ですね。士業たる者、どっしりと事務所で構えとけと。

また、メールによる新規開拓やメルマガ配信等は「オプトイン方式」で送っており、かつオプトアウトの仕組みを有していればOKという事になります。当然、事務所内のプライバシポリシーも整備しておく必要があります。

実情を言えば、司法書士の場合は迷惑メールを送るというよりも、迷惑メールを受ける被害の方が多いかと思います。(みなオジも有象無象の営業メールに辟易しています。)

関連過去ブログ:個人情報保護(オプトイン/プライバシーポリシー)は→コチラ

(特定の事件の勧誘広告の禁止)
第8条 会員は、特定の事件の当事者及び利害関係者で面識のない者を名宛人として、郵便又はその他直接到達する方法で、当該事件の依頼を勧誘する広告をしてはならない。ただし、公益上の必要があるとして本会の承認を得た場合は、この限りでない。

この8条、一瞬どういうシチュエーションか分からなかったのですが、想定している場面としては以下のケースの様です。

区画整理の実施が告示された直後、その該当地域の居住者等に限定して変更登記の必要性を通知する等のダイレクトメール(または郵便)を送る事。』

上記のケースでは、ダイレクトメール(または郵便)の内容は特定の事件を対象にしているとは言えないが、特定地域の関係者全員に送られており、かつ、広告内容とその事件の時期的な近接性が認められると判断されれば、第8条違反(特定事件の勧誘)となるようです。

みなオジはそこまで頭が回らないというか、気が付いたとしてもそこまで広告を打つ気概は無いです。他の先生方は商魂たくましいですね。

また震災の被害に遭った人に対して、震災被害に関する法律相談会の案内を記したDMを送ることも特定事件の勧誘となるようですが、当該エリアの新聞や折り込みチラシであれば「限定」されているとは言えずセーフという事になるようです。

(有価物等供与の禁止)
第9条 会員は、広告の対象者に対し、社会的儀礼の範囲を超えた有価物等の利益を供与して、又はこれを約して広告をしてはならない。

広告云々というよりコンプライアンスの問題に足を突っ込んでますが、(違反例にあった様な)バラマキでクオカードを配布している羽振りの良い事務所なんて今時無いでしょうね。個人的には上述のお友達キャンペーン位は大目に見て欲しい気もしますが、ルールだから仕方ないですね。

(第三者の抵触行為に対する協力禁止)
第10条 会員は、第三者が会員の業務に関して行う情報の伝達又は表示行為でこの規則に抵触するものに対
し、金銭その他の利益を供与し、又はこれに協力してはならない。

若干分かりにくい記載かも知れませんが、例を挙げるならば、法的グレーゾーンを潜り抜ける様な脱法指南本やインターネットの記事に法律専門家として寄稿したり、「司法書士○○が絶賛」という様なメッセージを送ったりすることが該当します。

(本会の対応)
第11条 広告が第3条第1号に該当する疑いがあるときは、会長及び綱紀調査委員会は、広告をした会員に
対して、広告内容が事実に合致していることを証明するよう求めることができる。この場合において、
告をした会員が広告内容につき事実に合致していることを証明できなかったとき
は、本会は、当該広告が
第3条第1号に該当するものとみなすことができる。
(以下略)

事実に合致しているかどうかの証明責任は司法書士本人に課せられているという事で、第6条で広告物の3年間の保管義務を定めたのも本条に関連するものでしょう。この条項からも、広告規制について書士会の強い意志が見て取れます。とはいえ最近は、奇抜な広告は自身が保管しなくても、インターネット上で魚拓にされていますね。そういう意味でも、広告など広く世間に発信するものは最新の注意を払いたいものです。

あ、個人的には司法書士事務所の求人広告の方がワナだらけという噂も(笑)

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