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みなオジの若かりし貴重な時間を奪った、憎いアイツ
みなオジは氷河期世代の先駆けだったので、新卒で入った会社では全く後輩が入ってこなかったという憂き目を見ており、ずっと雑用ばかり押し付けられていました。ちなみに一番つまらないと感じた雑用は、取引先の会社に朝一で行って、受付の新聞を取り換える(!?)というものでした。「新聞配達屋じゃあるめーし…」と、ブー垂れながらやっていた記憶が蘇りました。
雑用に掛かっている間、結局自分の仕事はお預けなわけで、毎晩のように残業を行っていました。しかも、当時の会社は一定上限を超えると残業代は付けられないというブラック…もといセコイ企業(とはいえ、当時は結構どこもそんな感じだったので、ピュアなみなオジは特に疑問も持たずに馬車馬のように働いていたわけですが…)
昔はみんな無茶してた?
まあ、言っても当時の残業時間なんて、せいぜい100時間いってなかった(と思う)し、ペーペーの頃の給与も大した額ではないので残業代もたかが知れており、損した気にもなっていませんでしたね。もちろん働き方改革が騒がれているのは金銭面(残業代不支給)の問題というよりむしろメンタルヘルスや過労死の危険性があるからな訳ですが、いわゆる「過労死ライン」は、発症2~6か月前を平均して「80時間以上」もしくは「1か月100時間以上」と言われていたのを数年前に知って、結構楽に基準クリアしていたんだなァ、俺…と、少しぞっとしましたね。
当時それほどしんどいと感じなかったのは私が鈍かったからでしょうか…(栄養ドリンクの)リゲインのCMでも「24時間働けますか?」とか言ってたし、1日くらい徹夜するのも特に違和感なかったんですよね、実際。とにかく、お母さん、丈夫に産んでくれてありがとう!
さて、今回のテーマは「働き方改革」についてです。長時間労働が元で自ら命を落とした社員のニュースが報道されるにつれ、残業に対する社会の目が厳しくなった様な気がします。
ちなみにみなオジ的、「世間が許さなくなったベスト3」は①タバコ、②サービス残業強制含むパワハラ、③不倫(
当事者同士は今も昔も修羅場)です。職場では①~③オールコンプリートの上司がゴロゴロいました、育ちが悪い会社ですが、そんな会社に世話になったみなオジも結局のところ「同じ穴の狢」という事でしょう。
働き方改革関連法(時間外労働に関するルール)の施行は大企業では2019年からスタートしていますが、2020年4月からは中小企業にも適用拡大されています。中小と言っても幅は広いので、きちんとしているところはそれなりに対応しているのかもしれませんが、ブラック企業は「知らんぷり」を決め込んでいるのでしょうね。
時間外労働の理解に関するポイント
まず、働き方改革を知るには押さえておかなければいけないポイントがあります。それが労働基準法の第36条です。まずは条文を見てみましょうか。
(時間外及び休日の労働) 第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。 |
労働者の範囲、延長可能時間、協定の有効期間など
要約すると、従業員を残業させるには労基署に届け出をしろよ、という事です。これがいわゆる「36(サブロク)協定」と言われるものですが、36協定には「特別条項」を定めることができ、上限を定めることで、その範囲内で時間外労働をさせることができるという建付けになっています。各例外の上限は以下の通りです。
・1年間の時間外労働は720時間以内(労働基準法36条5項括弧書) ・時間外労働と法定休日労働の合計は1か月100時間※未満 ※ちなみに「月平均」でみる場合は2~6か月で月あたり80時間以内に抑える必要あり。 |
また、原則、1か月当たり45時間を超えられるのは1年のうち6ヶ月以内(労働基準法第36条4項)となります。
36協定対象期間の時間外労働(休日労働含まず)は、原則1か月45時間以内かつ年間360時間(540時間ではない事に注意)以内という事を覚えておきましょう。完全週休2日制の会社だとすると、一日当たりの残業時間は2~3時間に抑えないとアウトという事になります(惰性で毎日1時間くらい残業している人がいると、遵守させるのは結構厳しいです。)。
会社の慣習上、始業時間の1時間くらい前には仕事を始めている真面目な社員が多い職場も、会社としては「なるべく時間通り来てください」とアナウンスする必要があるでしょう。以前はタイムカードを押すのは始業時間とする運用をしていれば、問題が表面化する事はありませんでしたが、今は会社のPCのログが残ってしまうので、労基署が入ったらすぐにばれてしまいます。
ちなみに、条文を素直に読むと、例外規定の上限(「1年間の時間外労働は720時間以内」というのは、「休日労働を含まず」という文言が入っていないので、休日労働をさせることにより年720時間を超えることもできるように読めてしまうのですが…ルールは往々にしてわざと、こんな感じで微妙に穴を開けておくんですよね(立法者側も無理だと思っているという証拠か?)。
上の左図からも分かる様に、改正前は残業時間の上限はありませんでしたが、改正後は残業時間の上限が法律で定められて罰則の対象になるというわけです(罰金または懲役刑)。
ちなみに、この上限規制は業界ごとに適応時期をずらしており、長時間労働が常態化している業界「自動車運転業務(物流業)、建設業、医師」は2024年度から適用されます。(つまり、先送り)
シフトしても、日本の技術力低下を招かない範囲で法制度を整えなくてはならず、文面から非常に苦慮した様子が窺えますね。
一律のルールに何の意味がある?
みなオジは常日頃から国の労働法には不満があり、「四角四面的なルール作りではなく、働き方全般の多様性を尊重する柔軟な規制を作ってくれよ」と思っています。人生には体力に満ち溢れ働ける時期と子育てや介護で仕事だけに時間をさけない時期もある訳です。
一方、世の中には働きたくて仕方ない人も沢山いるのです。自分が得意でかつ望む仕事の場合はストレスも少ない訳で、そういう場合はむしろ一律に残業時間を上限規制されると不完全燃焼感が半端じゃない訳です。これはそれ程仕事好きではないみなオジですらそうでしたので、仕事が大好きという人は特にそのように思っているのではないでしょうか。私も(そうそうありませんでしたが)面白いプロジェクトに参加した時は、時間を忘れて自分のライフワークの様にその仕事に没頭していました(上司からは他人に任せて程々にと言われていましたが、休日出勤すらワクワクしながらやってましたね)。その一方、退屈なルーチン業務をしていた頃は死んだ魚の様な目をして、1分たりとも残業したくありませんでしたので最低限の仕事だけこなして毎日定時で帰宅してました。
つまり、一律に残業を悪とするのではなく、働き方の多様性を認める方向で法整備して欲しいのです。また、会社側も残業を前提とした給与水準も見直すべきでしょう。世の中には40時間くらいの残業をしてやっと、国民平均の年収を保つことができる会社も多く(残業代を出してくれるだけまだマシですが)、その段階で残業が削減されると結局、仕事を終えた後に居酒屋バイトや土日も副業に充てざるをえないという状況になりかねず、トータルとして残業時間が変わらないという事になるでしょう。
時代遅れの法律に問題あり
ちなみに、この副業・兼業に関する法律は同じく労働基準法第38条第1条に規定があり、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」とあり、厳密に言うと副業をして別の雇用主だったとしても、法定労働時間の原則(週40時間を超えて労働させてはならない)は変わりません。つまり、こういう規定が見直されておらず企業側で勤怠管理が難しいので、日本では副業・兼業が認められないという理由の一つとなっているのです。現在の副業を想定していない時代遅れの法規なので、近々見直されると思います。
さいごに
サラリーマンが面倒くさいと独立したみなオジですが、こうやって見るとやはり、サラリーマンは守られていていいよなぁ、と感じてしまいます。長時間残業(「3ヶ月以上において、月45時間以上」等の労働基準法第36条違反に該当)すれば退職時も「会社都合」で辞める事が出来ますし、大企業なら産業医の面談などのフォローを受ける事が出来ます(まぁ、面談されたから疲れが取れるという訳ではないですが…)。
ちなみに、産業医の超過勤務者への面接指導が実施される残業時間の基準は、「月100時間超」から「月80時間超」に改正されました。(零細企業で産業医面談やってるの聞いたこと無いですが)
自分のペースでできる、口うるさい上司はいないと独立起業は良い事尽くしのイメージが先行しますが、起業やフリーランスの様な働き方をすると、時間管理を始め全て自分で勤怠管理しなければならない訳です。だらしない人や計画性が無い人は、とてもじゃないですが独立は向きません。サラリーマンの場合は長時間労働が元で体調を崩した場合でも休業手当は出ますが、フリーランスではその辺り自己責任で、まさに生活に直結する問題です。24時間仕事のことを考えなくてはいけないのは、いくら仕事好きと言っても結構ツライものがあります。とりあえず寝坊せずに会社に出社すればOKなサラリーマンとは雲泥の差と言えます。
副業を経験するとその辺りの心構えも身につくので、独立起業を検討している人は一度、副業や兼業で軽くその辺りのストレス耐性を付けてみるのも良いのではないでしょうか?