司法書士

令和3年度司法書士本試験について

投稿日:2021年7月5日 更新日:

お疲れさまでした!

令和3年度の司法書士試験ですが、今年は従前どおりのスケジュールに戻り7月第1週目の日曜日に試験が実施されました。※昨年は新型コロナウィルスの影響で筆記試験は令和2年9月27日(日)に延期、口述試験は令和3年1月12日(火)、合格発表日は令和3年2月1日と後ろ倒しとなりました。

司法書士受験者はこの日の為に1年間勉強をしていると言っても過言ではありません。みなオジも元受験生として、合格後も、受験環境に影響が起きそうなニュースを聞くと何となく気になって色々調べてしまいます。今回は試験に関わるトピックとして「司法書士試験出願者数の今後の動き」と「司法書士の将来性」について書きたいと思います。

関連過去ブログ:司法書士資格の取得について(難易度や勉強のコツ等)は→コチラ

        司法書士の就職・収入事情は→コチラ

出願者数の今後の動きについて

一つは、出願者(受験者数)です。今年は久しぶりに増加(前年比+557人)に転じました。これは、やはり現在の景況感(コロナショック)の反映なんでしょうかね?

みなオジが受験していた時は、ITバブル崩壊、リーマンショック後の不安定な労働環境を引きずっていた不景気の時代でした。勤め先の会社が倒産したり、会社からリストラされ、しかも正社員の転職先が見つからないことから、一旦就活を諦めて資格取得に走ったり、非正規雇用の不安定さから独立できる資格を取得しようと働きながら試験勉強をしていた人が受験者数を増やしていた、そんな時代でした。

そんな時代だったので、合格率「平均3%」という狭き門の本試験で合格者が出ても、それ以上に滞留するベテラン受験者と新規参入者がその低い合格率をさらに圧迫している状況で、合格が遅れれば遅れるほど更に厳しい状況になっていくという、救いのない時代だったように思います。

潮目が変わった?受験者数減少の流れ

冒頭の受検者数は、法務省が発表する出願者の推移です。ここ10年くらいはずっと減少を続けており、最近ではどこまで下げていくのか、また下げ続けた場合でも合格率は下げないのか(合格者も減っていくのか?)という点に、注目が集まっている中で、ついに令和3年度は上昇となったという事でした。

これは今後志望者数が上昇に転じる転換の年となったという事なのか、たまたま上がっただけだったのか、どちらといえるでしょうか。個人的には景気が回復せず、失業率が悪化し続けるのであれば、過去の不景気の時代をなぞる形でまた増加に転じるのではないかと思います。

司法書士を始め、税理士、弁護士等の難関資格や公務員試験は、民間企業の雇用の受け皿的な役割を果たしているので、基本的に不景気な時には人気が高まる傾向があります。(最近では、就職氷河期世代の救済策として国家公務員の中途採用を行いました(今更感がありますが…)が、その倍率が奇しくも司法書士合格率と同じ3%でしたね)今回の上昇は、その転換期となるかといった興味も併せて湧き起こった内容でした。

氷河期世代199人合格 初の国家公務員共通試験

人事院は25日、バブル崩壊後に就職難となった「就職氷河期世代」を対象に初めて実施した各省庁共通の国家公務員中途採用試験に、199人が合格したと発表した。当初の採用予定数(157人)を上回り、担当者は「優秀な人材がより多く集まった」としている。3月以降、順次勤務を始める。申込者数は計1万943人。このうち1次試験を受験したのは約5600人で、実質的な倍率は約28倍だった。年代別の合格者は40代が113人で最も多く、30代80人、50代6人だった。省庁別では、国土交通省が66人でトップ。法務省41人、厚生労働省34人と続いた。職種別では、一般行政事務132人、技術的業務従事者38人、入国警備官19人、刑務官10人。

引用元:産経新聞(2021/2/25)

個人的には司法書士を目指すのに、会社をリストラされたから(仕方なく)という後ろ向きな理由だったり、現状に不満があり、一発逆転を狙ってという利己的な理由であっても、全く恥ずべき事とは思いません。きっかけがどうあれ、その情熱を維持できる者しか狭き門である難関資格を突破する事は難しいですし、最初の動機がなんであれ、大抵の人は合格水準の知識を備えて、実務を始めて司法書士に与えられた職務の大きさを自覚すると、それにふさわしい職責を意識する(つまり自覚が芽生える)事になるからです。

司法書士「オワコン」説について

みなオジが気になっているポイントはもう一つあります。それは、司法書士の将来性についてです。

今年は司法書士試験の志望者数が上昇しましたが、ここ10年間の志望者数が減少してきた理由は、景気が安定している中、敢えてこれらの難関資格に飛び込もうという人が少なくなっただけと言えないのではないかと思います。皆さんもご承知のとおり、一番の理由は「AIによる業務の代替」にあります。

代替可能性の高低を分ける分水嶺は?

上記の表は日本を代表する士業とその業務の「AIによる代替可能性」を表したものです。この表は、英 オックスフォード大と野村総研が2015年に公表した共同研究のもので、これによると司法書士の業務は78%がAI(自動化)に取って代わられるという、非常に厳しい数字が出ています。

特に、2015年の研究結果から、今回のコロナショックを経て、「ニューノーマル」という新たな行動様式となったことで、押印の省略や、書面の電子化の動きが加速したことにより、現時点で同じような研究を行ったならば、更に悲惨な結果になるのではないかと思います。

しかし、一方で同じ士業にも関わらず、弁護士の業務は、その代替可能性は1.4%とかなり低い数字となっています。更に驚くべきは、中小企業診断士は弁護士をさらに下回る0.2%という数字です。0.2%となると、もうこれはAIでは全く対応できない領域と言えます。試験の難易度で言えば、弁護士よりも低い中小企業診断士ですが、替えのきかない最大の理由が、彼らの職域が「コンサルタント業務」だからです。

つまり、中小企業診断士は仕事が定型的ではなくクライアントとのコミュニケーションで作り出していく、例えて言うなら、テイラーがオーダーメイドでスーツを仕立てていくという職人の様な業務をメインとしているから、AIの浸食を許さないと言えます。

司法書士の業務にも光明が

確かに司法書士の主戦場は、登記を中心とした業務で、これらはAIが最も得意とする分野です。しかし、司法書士には登記業務だけでなく、ある大きな生き残りの武器を持っているのです。それが、「成年後見業務」です。高齢化が進む日本では、間違いなく後見制度の利用者数が増えると見込まれています。司法書士は認知能力が減衰した高齢者の財産管理を行う事が出来きます。

これらの業務は弁護士でも行う事が出来ますが、相続登記を始め、相続関連業務をコア領域としてきた司法書士にとっては、後見業務はワンストップでスピーディに行う事ができ委託者のメリットが大きいことから、実際に親族以外の第三者の成年後見人等受託件数も司法書士(37.9%)は、弁護士(26.2%)を抑えてトップとなっています。

もちろん、司法書士の従来の領域である登記業務であっても、付加価値をつける事で顧客の流出を防ぐ事は十分に可能ですし、簡裁代理権とはいえ訴訟代理や裁判所類作成業務も伸びしろのある業務だと考えています。この様に、司法書士のPR不足もあると思いますが、司法書士の知られていない魅力をどんどん発信して地位向上を図れればと考えています。

司法書士試験後の過ごし方

さて、話が逸れましたが、今年受験された皆さん、手応えはいかがでしたか?司法書士試験は試験が7月にあっても、結果が出るのが10月と3か月も待たされることになります。明らかに手ごたえが無かったという人以外は、その3か月間は試験直前期とはまた別の意味の苦しみを味わう期間でもあります。

みなオジの本試験後の過ごし方

①試験終了→②泥の様に眠る(当日の夜)→③一息つく(試験前に禁欲していた色々なことを解禁する)→④何校かの解答速報を見る(自分の点が明らかになり、予想基準点と比較する)→⑤悶々とする→⑥SNSや掲示板を見て、自分に都合のいい解釈をして、心の安寧を得る(以下、10月まで⑤と⑥の繰り返し)。

こんな感じで、およそ生産性の無い3か月を過ごしていました。この3か月間を、もう少し有効かつ前向きに利用できれば、みなオジの合格時期も早まったのではないかと思います。

解答速報会とは?

④の「解答速報会」というのは、司法書士対策講義を扱う資格スクールが実施する、その名の通り解答を速報してくれる講義です。参加は無料(受講生以外にも公開されています)で、当日は各校でオンタイムで受講できるほか、翌日以降はストリーミング(今ではYouTube)で聞くことができます。みなオジは、試験終了後はまっすぐ歩けない位フラフラに燃え尽きるので、試験終了後の速報会に足を運んぶ体力が一度としてあった試しがありません。

しかし、筆記試験のうち記述式解答(登記申請を問題に沿って実際に記載させる午後の部の問題)は、時間が経過するにつれて自分が何を書いたかが曖昧になっている事が多く、模範解答からどのくらいずれているのかが分からなくなってくるので、できるだけ記憶が鮮明なうちに答え合わせをしておくことをおススメします。(特に、自己の得点率がボーダーラインにいる時は、記述式の1~2点が合否の分かれ目となる事も多く、きちんと把握していないと3か月間はモヤモヤがさらに加速する事に…)

成績診断も忘れずに

東京リーガルマインド(LEC)の成績診断

また、「解答速報会」のチェックとセットになる大切な「やるべきこと」があります。それが、自己の答案を資格スクールに送る事(成績診断&記述式再現答案添削)です。そうすることで、その年の受験者の中で自分がどのくらいの成績に位置し、合格ラインに乗っているかどうかが分かるのです。(もちろん、資格スクール側にもメリットがあり、数多くのデータを取得する事で、基準点(足切り点)の根拠となるエビデンスが溜まる事となります。)

ちなみに午前の部の解答速報は、試験終了後の駅までの帰り道で、資格スクールのスタッフの人から大量に渡されることになります。状況としては市民マラソン大会の給水ポイントで沿道に並ぶ運営スタッフから水のボトルを渡されるような感覚で午前の部の解答を渡される感じですかね。(ちなみに、この光景は試験前の最寄り駅から会場に向かう経路にもあり、直前のチェックポイントの配布やボールペンや、汗拭きシートなどを手渡してくれる所もあります。色々なスクールのスタッフがムチャクチャ立ってます。)

没問や複数解に一喜一憂

試験当日の段階では、解答の肢が切れきっていないないケース(例えば、正解肢:2or4)や、「没問」(設問に不備があり、物理的に問題が成立しない)等があります。これも、足切り点のライン上にいる等、試験の出来が微妙だったりすると不安をブーストさせる原因になります。

また、時間不足で検討しきれていないのか、スクールによって回答が割れるというケースもあります。没問の場合は多くは、全員正解とするケースがあるのですが、複数正解肢の場合は、そのどちらかにマークした人が加点される運用が通常です。「試験あるある」とは少し違いますが、複数正解のラッキー問題に限って、自分はどちらでもない肢をマークしているという、何とも切ない状況も多々ありました(とにかく精神的にダメージがデカい)。

とくに記述式問題のミスは毎年色々な論争を巻き起こす原因となっており、択一問題で高得点(9割以上)を叩き出す人も記述で地雷を踏んで即死(足切り)という悲劇を毎年生み出しています…

今となっては良い思い出ですが、受験生にとってはそんなゆとりは正直無いでしょう。しかし、試験終了後の3か月をうまく使えるかどうかが、短期で合格できるかどうかの大きな別れ道となることは間違いないでしょう。

合格レベル(基準点越え、総合点落ち)にある人

その3か月のうちの1か月を勉強しない期間(絶対充電期間)にするとか、別の資格試験の勉強に充ててリフレッシュ期間にするとか、もしくはその3か月間猛烈に働いて財政面の憂いを絶ち、来年の試験に専念できる環境を整える準備期間とするとか、人それぞれに適した戦略があるでしょうが、試験前にどのように過ごすかをきちんと決めておいた方が良いでしょう。

基準点に届かなかった人

まだまだ実力不足ですので、一息つく暇はありません。1週間程度のリフレッシュを終えたら、すぐさま来年の情報集を行いましょう。司法書士予備校の大手であるLECの司法書士講座では、「中上級バックアップ試験」という無料のテストがあり、成績に応じて最大100%の割引(つまりタダ)があるというチャンスもありますので、お金にゆとりのない受験生は、試験が終わって腑抜けになっている暇はないのです。人がやっていない時期にスタートダッシュを決められるかどうかが、勝負の分かれ目だと思います。

試験後は自分を見つめなおす期間に

何事も「心技体」のバランスが必要です。いくら優れた頭脳があっても、根幹の心が弱くてはその頭脳は発揮できません。1年間という長丁場を乗り切るために、1年間ずっと張り詰めた状況を維持するのはかなり難しいのではないでしょうか。そういう事から、試験終了後の3か月は、是非自分を見つめなおす期間に充てて欲しいと思います。

ちなみに「自分を見つめなおす」という意味の究極形は、司法書士試験の撤退も含みます。長年司法書士試験に時間とお金を費やしてきた人には酷な選択かも知れませんが、3%という確率は1度しかない人生を掛けるにはあまりにも不確実な数字ではないかと思います。よく、3年間試験勉強をして結果が出なかったらすっぱりと諦めるという人もいますが、ある意味非常に合理的な考え方だと思います。これから、司法書士試験の世界に飛び込もうと考えている人は、勉強を頑張ることはもちろん、こういった出口戦略についても、きちんと計画を立てておく必要があるでしょう。

(あまりお勧めはしませんが、)司法書士試験の学習を趣味(もしくはライフワーク)の様に取り組むことも人によっては可能かも知れません。しかし、そのことによって、何か他の大きな物(や機会)を失う可能性や、自分以外の人に影響を及ぼす可能性が少しでもあるなら、何が一番幸せなのか考えてみるのも良いかもしれません。

というのも、過去に自分自身あれだけ切望していた「司法書士」という資格にも関わらず、資格を取得した今、その資格にそこまで依存しているか(必要か)と言われれば、案外とそうでもないという経験談がその様に思わせるからです。(もちろん、司法書士の資格は、持っているに越したことはありませんよ!あくまでも、それが無いことで人生が成り立たなくなるかどうかの話です。)

なんだかんだ言って、資格は「手段」に過ぎません。受験生時代は、兎角、いろいろなモノに追い詰められて視野が狭くなりがちです。その為、目的と手段が往々にして逆になってしまいがちですが、何十年という人間の人生のスパンで見ると、案外、一番重要なモノは別な所にあるのでは?という事が見えて来るようになりました。(アラフィフに到達して、みなオジもようやくその境地に至ってきました)

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港区オジさん(みなオジ)です。
長い極貧オジさん生活を経て、いつの間にか小金持ちのアーリーリタイアオジさんにクラスチェンジしました!
投資家と司法書士の肩書を有する一方、妻の尻に敷かれるちょい駄目オジさんの異名も持つ。