「フランチャイズ経営者は経営者にあらず、本部の看板を持たされた請負人である」というのが、みなオジが思うFC経営者の偽らざる姿である。みなオジ自身は脱サラ自体は肯定的ですが、せっかく主体的な人生を送る為に脱サラしたのに、どうして他者に依拠したビジネスを行うのだろうというのが正直な意見です。
これはフランチャイズ全てを否定しているのではなく、安定が嫌でわざわざサラリーマンを辞めたのに、フランチャイズという「サラリーマン的な働き方」を続ける人に対する疑問です。
ちなみにフランチャイズ(FC)は、以下の様に定義されています。
一方が自己の商号・商標などを使用する権利、自己の開発した商品(サービスを含む)を提供する権利、営業上のノウハウなど(これらを総称してフランチャイズパッケージと呼ぶ)を提供し、これにより自己と同一のイメージ(ブランド)で営業を行わせ、他方が、これに対して対価(ロイヤルティー)を支払う約束によって成り立つ事業契約である。 通常、権利や商標、ノウハウなどを提供する側をフランチャイザー(本部)と呼び、受ける側をフランチャイジー(加盟者・加盟店)と呼ぶ。外部資本を利用し、短期間で多くのチェーンストア店舗展開を進めることを目的とするため、フランチャイズチェーンと呼ばれることが多い。法的には中小小売商業振興法(の第11条「特定連鎖化事業の運営の適正化」)などによって規制される。 |
中小小売商業振興法 第十一条 連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの(以下「特定連鎖化事業」という。)を行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。 一 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項 二 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項 三 経営の指導に関する事項 四 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項 五 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項 六 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項 |
確かにFC契約を締結する事により、本部のブランドやノウハウを活用して事業を行う事が出来るのですが、結局それってサラリーマン時代に会社の看板で仕事をしていたのと本質は変わらないと言えます。むしろ会社との雇用関係がない事から福利厚生や安定した給与の支払いも見込めないという、自身の創意工夫を発揮する事が許されず、制約が多いサラリーマンの様な働き方でありながらサラリーマンであれば享受できる保障も無く、一個人としてまさにハードモードで乗り越えていかなければならないのです。
みなオジが思うFCの利点は、既に事業を行っている法人や個人が多角化を目指し、新規分野へ進出する場合に手っ取り早くノウハウを取り込んで収益の柱に育てられる点です。既に相応の事業規模で行っているのであれば、自社の労働力を配置するなどして、まさに「経営者」として自己の事業に組み込むことが可能です。この様な理由でもない限り、脱サラ後すぐにFCに飛びつくというのは、雇われ店長(しかも自腹を切らさせる立場)と何ら変わりなく、お気楽と言わざるを得ません。
目次
FCを規制する法律は?
この様に経験の少ない脱サラ直後の人にとって「いばらの道」と言えるFCですが、更に法律面から考えると、現時点で(「独占禁止法」や上述の「中小小売商業振興法」の様な概括的な法律で、不当な拘束の禁止や重要事項の説明義務の規定はあるものの)FC加盟店を保護する特別法がなく、当事者同士の契約に基づき条件が定められてしまう為に加盟店側に極めて不利な条項が付されてしまいがちです。また、通常、加盟店側は業界への新規参入である為、両者の情報格差も相まって契約交渉段階で押し切られてしまう事が多く、詐欺まがいの契約が横行しているのです。
全てのFC本部が詐欺まがいの契約をするとは思いませんが、上記の様にトラブルが起こる要素が多いので、今回FC契約における注意点や良いFCの見極め方等を記載していきたいと思います。
開業費用は妥当か
まず、開業に当たり必要な費用としてイニシャル費用とランニング費用(主にロイヤリティやシステム利用料)があり、イニシャル費用については保証金の様に戻ってくるものと各種工事費やライセンス費用(加盟金)の様に戻ってこないものがある事を理解しましょう。ランニング費用については売上の定率を支払う形態と、固定で支払う形態があります。
一般的なFC加盟にかかる初期費用は、200万円~多い所でも400万円程度です。それ以上に高いフランチャイズやブランドやノウハウの知名度に比べて割高感のあるFCは注意を払う必要があるでしょう。具体例として、いきなりステーキでおなじみのペッパーフードサービスの加盟店募集要項を挙げてみました。
全体的に初期費用が非常に高い(4,185万円???)です。無計画な直営店の出店計画で物議を醸した「いきなりステーキ」の様に、市場調査も行わず社長がグーグルマップを見て出店を決めるというノープラン出店方法を行っていたにも関わらず、立地調査費として500万円も計上されているというのは、どう見てもサービス内容が払う金額に釣り合っていないと考えざるを得ません。そもそも開業費に4,000万円以上かけられるなら、FCに頼らず1,000万円位で自分自身で立ち上げた方がよっぽどいいのではと思います。
ちなみに、いきなりステーキの訳アリ店舗(なんじゃそりゃ?)を、300万円払って経営しよう(いきなり社長システム)という、ふざけたポスターが世間を賑わせましたが、そういえばその後FCに転換した訳アリ店舗はどうなったのでしょう(お察し…)。まあ、直営で赤字なんですから、そこにロイヤリティやシステム使用料がのしかかるFC店舗で黒字化するのは
「社長になれる」という甘言で引き寄せて、「訳アリ」という言葉でカモフラージュした不採算店舗を300万円で引き取ってもらおうという図々しさが、この会社の迷走っぷりを端的に示していると感じました(そもそも最低保証30万円って、何が30万円なんだろう…給与?それとも月の売上額か?)。こういうポスターの誘い文句は独占禁止法で定める「不公正な取引方法」のぎまん的顧客誘引に該当しますが、社長がドヤ顔でポスターで笑顔を浮かべている辺り、おそらく企業内にチェック機能が無いのでしょうし、外部にチェックさせようという意識すら働かないのでしょう。私なら準備資金もらっても引き受けたく無いですね。
全く参考になりませんが、折角なのでこの会社のFC開業の初期費用を記載しておきます。
立地調査費 | 500,000円 | — |
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加盟金 | 4,000,000円 | ノウハウ開示料 |
設計監理料 | 2,000,000円 | 設計・竣工管理 面積・遠隔地などにより加算があります |
保証金 | 5,000,000円 | 食材保証金 |
内装設備工事 | 15,000,000円 | 注:工事区分・引き渡し状況・基準外の規格の場合などにより加算があります |
厨房設備工事 | 4,800,000円 | 基準外の規格の場合加算があります |
看板デザイン 製作費用 | 3,500,000円 | 基準外の規格の場合加算があります |
ライスロボット | 1,052,000円 | 本部指定機器 |
レジ関係 | 2,000,000円 | ハンディターミナル、キッチンプリンタ1台含む、計量器 |
開業費 | 3,000,000円 | TV-CM費別途 |
教育研修費 | 1,000,000円 | 3名様分 |
合 計 | 41,852,000円 | ロイヤリティは売上の3%、販促費1%です。 |
◆いきなりステーキ標準店舗・開設投資資金概算(フードコート店15坪の場合)◆(平成27年3月現在 )
制約や裁量権はどの程度か
上記の様なFC募集要項で契約内容の全てを網羅している訳ではないので、その他、違約金やその他の制約条項が無いかを確認する必要があります。特に契約期間内の脱退については、厳しいペナルティが定められている事が多いので、契約期間が不当に長くないか(また契約更新料がかかるのかどうか)、こちらからの契約解除は制限されるのにも関わらず、本部からの解除はペナルティがない、もしくは解除のハードルが低いなど片面的な条件になっていないかどうか確認する必要があるでしょう。
本部の支援能力や他のFC店舗とのトラブル事例が無いか
フランチャイザー(本部)の能力を見極めるという意味で支援能力の水準は契約の際の重要なポイントでしょう。フランチャイジー(加盟店)は、安くない開業資金を払って、リスクも取って事業を開始する訳です。FCの良い点は経験の少ない加盟店オーナーへのノウハウ提供、支援制度にあるわけですから、サポートどころか足を引っ張るようなポンコツな本部だったり、その機能があるとしても非常に高い追加費用が掛かる仕組みだと意味が無いと言えます。
直営店舗を持つフランチャイザーであれば、その直営店の売り上げや利益等を確認する必要があります。また、売上予想の提示は当然の事、その数字が根拠のあるものであるかどうかも一つ一つ納得できるまで確認する必要があります。直営店が赤字なのに、どうしてFCの経営をサポートできるのでしょうか。
また、某コンビニエンスストアでも問題になったように、賞味期限が迫った弁当の割引を認めないといった重要な営業方針に対する干渉が起こり得るのかどうか、また、売り上げに影響を及ぼすような近隣エリアに新規店舗を出店される事が無い様に、本部の出店計画も事前に確認して、将来のトラブルの種が生じないかを確認する必要があります。
勘違いしやすいのは、加盟店がFCブランドを使っているからと言って、本部が必ずしも加盟店の最大利益を尊重してくれるとは限らないのです(所詮、他人資本だから)。そのエリアに直営店舗を出した方が収益が上がると判断すれば、みずから出店しないとも限らないので、契約上その様な出店を行わない様、テリトリー権が保証されているか等のチェックも行わなくてはいけません。
本部が提示する運営店舗のモデルケースを鵜呑みにしない
FC説明会等で提示される開業後の想定収入や拘束時間はあくまでもモデルであって、想定の収益シミュレーションを実現するには、365日24時間オーナーがぶっ続けで働かないといけないという前提かも知れませんし、見込み集客数が全く現実に即していない場合もあります。また、モデルケースで示される想定収入も手取りなのか額面なのか詳細に確認する必要があるでしょう。
企業の歯車になるのが嫌で脱サラして独立を目指したにも関わらず、いざ事業主としてビジネスを始めようとすると他者に依存するというサラリーマン時代の脇の甘さをFC本部は虎視眈々と狙っている様に思えてなりません。もちろん甘い言葉を並べて相手を騙す様な本部が悪いのですが、一方で加盟検討者側もこれまでの無責任体質から脱却して慎重に判断しましょう。
本部側から見たFCの利点
ドミナント戦略(その地域を集中的に埋め尽くす出店スタイル)が有効なコンビニ業界等において、ある程度の規模感を持って行うには自己資本(直営店)だけでは限界があります。
その場合、本部は本部機能(宣伝・広告、企画・商品開発、人材育成)に集中し、店舗運営は外部に任せるというのが効率的です。また、直営で行った場合は人件費も膨らみますし、撤退時のコストも掛かる事からリスク分散の手法としてFCを活用するのです。
経営者とサラリーマンのコスト感覚はまったく異なるものであり、人件費一つとっても多くのサラリーマンは月の給与額面でしか自分の人件費コストを認識できないですが、経営者は人権費のコストをその様には認識しません。社員一人を雇うのにその基本給以外にも社会保険負担や賞与(退職金制度がある企業ではその配賦)を想定しながら、事業計画を立てているのです。その他、支給するパソコン費用や教育・研修費用などを合わせ、年収500万円の従業員を雇用するのに必要な費用は年収の倍程度かかるのです。この様にシビアに人件費などの費用を見なければならない経営者が、それを抑えるべく苦心して編み出した事業展開の一つががFC(外部化)なのです。
このコスト意識の差がサラリーマン上がりの個人が安易にFC募集に飛びついて、本部が提示する表面上の事業計画に騙されてしまう要因ともいえるのです。加盟店側は、FC契約を締結する前に、一度なぜ本部は直営ではなくFC展開をするのかを考えてみると良いでしょう。その結果、FC契約にメリットがあると思えばその先に進めば良いと思います。
また、なんといってもFCの最大のメリットは、本来出店すると費用が掛かるのに対し、FCで出店した場合は、加盟金等の一時金が入り、利益率は下がるもののロイヤリティも継続的に入ってくるのです。ノウハウの流出などのデメリットはあるものの、この錬金術の様な仕組みは本部側から見れば非常に魅力的と言えるでしょう。
FCの形態は千差万別
2018年のセブンイレブンの総店舗数は2万700店で、うち2万309店(98.1%)がフランチャイズであり、直営店は391店(1.9%)である。セブンイレブンはそもそもFCで規模を拡大する戦略で、ごく少数の直営店は社員達の教育の場として活用したり、営業時間短縮営業など、FCでは実施しにくい実験用の店舗として活用しているものと思われます。
もう一つFCを活用する有名処の代表格として、外食のマクドナルドを例に挙げると、2017年は全店舗数2,896店のうち、直営店舗数が933店(32.2%)、フランチャイズ店舗数が1,963店(67.8%)となっています。
ちなみに、FCを使わない形態のチェーン店もあります。その代表例としてはコーヒー店のスターバックスコーヒーであり、そこではレギュラー・チェーン(全て直営店)で店舗展開を行っています(ちなみにタリーズはFC展開)。この辺りは、提供サービスや人材に対する考え方や企業理念にも関わる所で、どちらが良いという訳ではありませんが、今後この2社の成長曲線がどのようになるかが楽しみです。
まとめ
最初みなオジはFCを情報弱者ビジネス、サラリーマン精神の抜けない脱サラ組をはめ込むシステムと言いました。しかし、裏を返せばフランチャイズの創意工夫を活かせる契約内容であれば、FCでも活路を見出す余地が十分あると言えます。
また、途中で記載した様な人件費を代表とするコストに対する意識等と言った、サラリーマン時代には中々身につかない「経営者の自覚」を持つことが成功の秘訣と思います。