法律

下請法とコンプライアンス

投稿日:2022年7月10日 更新日:

ファイナンシャルプランナー

企業法務のメインテーマとして下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)があります。今回は下請法について簡単に解説します。

下請法の目的

下請法に限らず法律のアウトラインを把握するには、まず第1条(目的)に目を通しましょう。

第1条 この法律は、下請代金の支払遅延等を防止することによつて、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護し、もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。
下請代金支払遅延等防止法

優越的権利の濫用と言う言葉がありますが、いわゆる発注者の立場を利用して、下請会社に無理な要求をするなという事です。なお下請法を語るには独禁法(独占禁止法)抜きには語ることができません。

対象となる事業者

引用元:公正取引委員会HPより抜粋

この法律の登場人物は親事業者と下請事業者の2つですが、この法律を理解するポイントとして、どの様な取引で、どのくらいの規模の親事業者を規制して、どのような下請業者の保護を目的としているかを押さえる必要があります。取引内容については全ての取引を対象とはしておらず、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4種類となります。

親事業者と定義づけされる事業者が超大企業であっても、下請業者がそれなりの規模の会社の場合は該当しませんが、9項で「資本金の額又は出資の総額が千万円を超える法人たる事業者から役員の任免、…(中略)について再委託をする場合」と言うのはいわゆるトンネル会社規制で、超大企業がその子会社に業務を委託し、その子会社が委託業務のほとんどについて更に下請け会社に対して再委託を行う事で下請法の規制を免れる事は潜脱行為であることから、その子会社を親事業者とみなすと定められています。

なお、上の図の(1)の「政令で定める情報成果物・役務提供委託と言うのは「プログラム作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理」となります。

書面交付義務発注後直ちに書面を交付する事。
②支払期日を定める義務代金の支払期日は給付の受領後60日以内とする事。
書類作成・保存義務取引内容を記載した書類の作成・保存(2年間)する事。
遅延利息の支払義務支払遅延時の遅延利息(年率14.6%であり、これは約定利率に優先する)を支払う事。
親事業者の義務

なお、①の書面は「3条書面:発注書/注文書」と言われており、12項目の記載内容(代金、支払期日、支払方法等)が公正取引委員会が定める規則(下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則 第1条)で定められています。

3条文書の性質(発注書)上、成立に相手方の承諾(の意思表示)は不要です。つまり、契約成立を証明する文書とは言えない為に課税文書(2号又は7号)の扱いとはならず、印紙の貼付は不要です。

例外的に注文請書(応諾書面)があったり、当事者双方の押印が書面上にあれば別です。なお、注文請書があったとしても、そこに契約金額が記載されていなければ、印紙額は200円です。

同じく③の書面(「5条書面」)についても公正取引委員会が定める「下請代金支払遅延等防止法第5条の書類又は電磁的記録の作成及び保存に関する規則」で定められています。一応2年間の保存義務がありますが、税務署に対する提出書面にもなりますので、最低7年間は保管するされるものとなります。

5条書面としては、業務委託契約書(繰り返し発注するような業務については取引基本契約書が該当しますが、当該契約締結時には通常5条書面で記載が求められている記載内容が明白でない部分がある為、「補充書面」に記載する必要があります。

具体的には、ある会計ソフトをベンダーに開発委託する際に詳細な仕様が未定である事が多い(開発段階で詰めていくことがほとんど)ので、とりあえずの発注書(当初書面)に「内容が定められない理由」及び「内容を定めることとなる予定期日」を記載し、詳細が固まり次第その補充書面を作成して交付する必要があります。

親事業者の禁止事項

下請法第4条には、親事業者への禁止事項を定めています。

なお、4条違反については行政措置(勧告・公表)の対象とされていますが、罰則の対象とはなっていません。個人的にはこの辺りの規制の強化が必要かと思いますね。

①受領拒否(1項第1号)              注文した物品の受領を拒む事。
②下請代金の支払遅延(1項第2号)下請代金を支払期日(受領後60日以内)までに支払わない事。
③下請代金の減額(1項第3号)理由のない下請代金の減額。
④返品(1項第4号)理由なく受け取った物を返品する事。
⑤買いたたき(1項第5号)通常価格に比べ、著しく低い下請代金を不当に定める事。
⑥購入・利用強制(1項第6号)親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させる事。
⑦報復措置(1項第7号)下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会への通報を端緒とし、その業者に取引停止等の不利益取扱をする事。
⑧有償支給原材料等の対価の早期決済(2項第1号)有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に支払わせる行為。
⑨割引困難な手形の交付(2項第2号)一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付する事。
⑩不当な経済上の利益の提供要請(2項第3号)下請事業者から金銭、労務の提供等をさせる事。
⑪不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(2項第4号)費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせる事。

さいごに

下請法は本則で12条しかない法律ですが、その背後には独禁法が控えているので、全てを理解しようとするのは骨が折れる作業です。また、条文で明記されている以外にも、禁止行為に該当するか否かの当てはめが難しいケースも多いです。

例えば、外観上無理な値下げ要請に見えるものであっても、親事業者が下請業者と「十分な協議」が行われたか否か、通常支払われる対価のほか、他の下請業者の下請代金との比較といった全般的な事情を鑑み違法ではないと判断される可能性(その逆も然り)もあり現場担当者レベルでは判断が付かないケースもあります。

上記の事例のように知らず知らずのうちに下請イジメに加担していたという事が無い様に、参考事例(関連判例)を多く触れて知識を深め、日ごろからコンプライアンス意識を高めていきましょう。企業の経営状況が悪化すると、外注費の値下げ圧力が強まります。コロナ禍や情勢不安により、今後違法行為が多発するのではないかと思いますので気を付けてください。

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