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司法書士合格への道のり その②

投稿日:2021年12月14日 更新日:

早いものでもう年の瀬です。司法書士受験者にとっては正月はありません。年が明けると答練やら模試が始まるのでみなオジも受験生時代は正直憂鬱な時期でした。来年が初受験という司法書士試験受験者にちょっとしたアドバイスが出来ればと思い記載しています。

前回のおさらい

「司法書士合格への道のり その①」では難関試験である司法書士試験について現役司法書士がむかしむかしの記憶を掘り返して、勉強方法や取り組み方について語っていきました。①では資格の難易度や学習を始めるに当たっての心構えをお伝えしましたが、その②では受験初期の学習方法初学者に陥りがちな罠を中心に書いていきます。

関連過去ブログ:司法書士合格への道のり その①は→コチラ

関連過去ブログ:司法書士合格への道のり その③は→コチラ

1年目の学習スタイル

受験1年目:みなオジは予備校の講座申込をし、司法書士試験の学習を始めたのが1月頃でした。通常の司法書士講座は合格結果が出た10月に始まっており、まずは既に開講している講義に追いつく為にビデオクラスでハイペースで学習しました。初学者は「憲法」「民法」と学習を進めますが、民法が配点の多くを占めるメジャー科目ですので最初から気が抜けません。

特に初学者は法律用語に躓く事が多いので、用語の理解(例:昔は「時効の中断・停止」など直感的に分かりにくい用語もありました。)が最初の関門です。また、実体法である民法があやふやなままだと、その後に続く借地借家法の特別法や不動産登記法等の手続法の理解が進まないので、民法で苦手意識を持たないように学習を進める必要があります。

参考:LEC「新15ヵ月合格コース」の年間スケジュール

時間的な制約もある中で効率的な学習法としては、「予習は不要、復習が命」という感じで進めましょう。所詮素人なのですから、予習をしてもろくな理解に繋がりません。そもそも初学者講座は、基礎から丁寧に教えてくれますので予習はしなくても問題ないです。むしろ復習は必須で、前回の理解が曖昧なまま次の講義に入ると、その講義で分からない所が雪だるま式に増えてきて、だんだん苦しくなってきます。

また、最初に学習する憲法や民法は、法律に直接に定められていない判例や先例等の問題や学説の対立に絡めた問題もあり、基本の法律にして初学者泣かせの法律でもあります。法律系資格における司法書士試験の特徴は午後試験に行われる「不動産登記法・商業登記法」等の手続法にあるのですが、どちらかと言えば単純記憶の部分が多く、付け焼刃で何とかなるのがこれらの科目なのです。午後科目の多くは、マイナー故に法律のクセは強い(読みにくさがある)のですが短期間で力を付けられるのも特徴と言えます。逆に民法・会社法は学習者の法的思考力がベースに無いと理解が浅くなってしまいます。長年にわたり「合格にあと一歩」という人の中には、民法の学説をきちんと理解できていない人が多い印象です。

受験予備校はペースメーカとして活用

良い伴奏者と出会えればいいですね!

私の経験上、スクールに通う限りにおいて学習のペースは維持しやすかった。そういう意味では、自分に甘いタイプやペースをつかむまでに時間がかかる(いわゆる、エンジンの掛かりの遅い)にとっては予備校は必要不可欠な存在です。

受験仲間の是非

一緒に学ぶ仲間は孤独になりがちな受験生にとって非常に貴重な存在で、同じ目標を持つ仲間として共通の話題も多いので、通学しているうちに自然と気の合う仲間もできると思います。仲間ができるとその日の講義で学んだ内容を確認し合ったり、法律知識をネタに日常の出来事やニュースに当てはめて語るなど、いっぱしの法律家になった気分で話が弾むと思います。みなオジも予備校に通っていた最初の頃は、見知った顔もいたので(当時は結構時間を掛けて通っていた)通学も苦にならず、勉強も楽しかった(今思うと無邪気だな!)です。

一方で人によっては、自分を孤独の環境に置いて楽しさとか誘惑や余計な感情を排除した方がやりやすいといったストイックな人もいるでしょう。これについてはどちらが正しいとは限らないので、自分に合った環境づくりをすれば良いでしょう。

いずれにしても、だんだんと学習内容が難しくなり、消化不良の箇所が増えるにつれて講義の速度についてこれなくなり、トドメに模試を受けた際には、これまで受講して得た知識だけでは対応が出来ないというリアルに多くの人が直面し、打ちひしがれる事でしょう。さらに、親しかった仲間が一人・二人と来なくなると、だんだんと不安になり、みなオジも机に向かうのが億劫になり、更に学習が遅れるという悪循環に陥ります。(゚Д゚;)ヒャァ

みなオジの個人的な見解えでは、結局のところ勉強というのは孤独なものという割り切っておく方が、精神衛生上にもよろしかったと(今振り返ると)思います。もしかすると過酷で長期間にわたる受験期間で人格が変わってしまっていたのかも知れませんが、以前のチャラついた楽観主義な性格が少し抑えられたような気もするので法律家としてはいい方向に適合できたのかも知れません。

継続する事

簡単そうなことですが、一番重要な事、それが継続する事です。長時間机に向かう事ではありません。いや、勿論、長い時間学習できる集中力があれば更に良いのですが、初学者の時期で大切なのは学習の習慣化をすることです。

「昨日は10時間も勉強したから、明日は休んでも良いかな」とか考えるのは1番ダメなパターンです。その為にも自分が勉強できる場所を早めに確保して下さい。みなオジは集中力に欠けるタイプだったので、自宅では勉強がはかどりませんでした。なので、図書館や予備校の自習室、カフェ等、自分がサボらずに勉強できるスペースを見つけましょう。

専業受験生にとっては時間の確保は比較的ハードルが低いですが、社会人の兼業受験生は自分の仕事と向き合いながら、どのように時間を確保するかが肝になってきます。仕事に穴をあける事は当然すべきではないですが、アフター5の付き合いが悪くなったり、趣味や妻や子供といった家族との会話を犠牲にして学習時間を取る必要があり、非常に精神的にきついと思います。

勉強する為の環境づくりに尽力せよ

私たちは受験生ですが、それぞれに人生があり、ただ勉強だけすれば良いという訳ではありません。生活はもちろん仕事、家族と程度の差こそあれ、関わらなくてはなりません。そこで、どれか優先順位を付けて取り組み必要があると思いますが、敢えて順位を落とすなら「仕事」だと思います。

これは、仕事の手を抜いたり、成果を落としてもやむを得ないという事ではなく、いかに効率的に仕事を進めるかとか、周囲に対して上手に「仕事やってますオーラ」や「忙しいアピール」をしながら、できるだけ余計な業務が振ってこないように回避するという処世術が必要です。

意外と大切?兼業生の職場選び

受け取り方によっては「ずる賢い」イメージ持たれるかもしれませんが、長時間労働が評価されないご時世ですので、社会人にとっては資格試験チャレンジの追い風が吹いていると言っても良いでしょう。とはいえ、中小零細企業は人手不足から物理的にそんな余裕はないので、現在その様なブラッ人的余裕のない中小企業に勤めている兼業受験生にとっては、まずは職場環境が整っている会社探しをすることが重要です。人的余裕がある会社というのは必然的に大企業という事になりますが、大企業に簡単に採用さられれば苦労はないよ(というか、司法書士なんか目指さないよ)という事であれば、受験期間くらいは派遣社員(非規則な勤務シフトではない事務職がベスト)などの有期社員として働くのも良いでしょう。

分からない所はすぐに質問する

先に挙げた復習の重要性に通じるものですが、初学者時代で大切なことはとにかく分からない所をそのままにしない事です。ライブ講義のクラスでは恥ずかしがらず講師に聞く。ビデオクラスやオンデマンド講義であれば、講座スタッフにメールで問い合わせをするなどしましょう。逆に言うと、アフターフォローが無い講座は受講する価値が無いという事です。

大枠を理解するに留め、深追いをしない

レベルが上がってから入りましょう!

初学者にありがちな罠として、枝葉の細かい論点まで追ってしまうという事があります。ある程度地力が付いてから深堀りしてみるのは頭の体操になって良いかもしれませんが、実務書に載っている様な細かい論点を掘るとキリがないという状況になりかねません。

司法書士試験数十年の出題傾向から、出題される設問の傾向はある程度決まっています。また、新たな傾向の問題が出た時は、どの受験生も解けないので、そこが出来なくても差が付きません。むしろ頻出論点を落とさないことが合格の定石ですので、基本論点を繰り返しできるまで続ける事が合格への近道です。

諦めないという愚直さは必要である一方、完璧主義は捨てて、効率的な学習を心掛けるべきでしょう。細かい論点は合格後か法学者になってから取り組めば良いでしょう。

初学者こそ過去問を解け!

過去問が需要なのは司法書士試験だけでは無い!

合格までにいくらでも時間を掛けても良いのであれば、自分のペースで自由に進めて良いと思いますが、趣味ではなく仕事(というか生業)として取得する資格なわけですから、寄り道はせずに最短距離で合格を目指すべきです。時間を掛ける事で費用的にも無駄になってしまいますし、仕事を辞めて専業受験生となった者は「自分のキャリア」「生涯賃金」を削りながら学習をしているので、精神的に切羽詰まった状況になってしまうと思います。

短期合格を目指せば必然的に時間は限られてきますし、そういう状況に自分を追い込むことで自分がやらねばならない事や捨てるべきものが自ずと炙り出されてくるでしょう。その際に、受験予備校の受験テクニックは非常に役に立ちます。これまで大学受験で勝ち組であった人は独学で進めがちですが、現役の司法書士が講師が勧める学習テクニックは多少自分のスタイルと異なっていても、柔軟に取り入れた方が良いと思います。

その際に最も効率的な学習は?と考えると、それは過去問を繰り返し解く事です。過去問を解いていくとわかると思いますが、似たような問題が複数年に渡って出題されている事に気づくはずです。丸一問が同じという事は無くても、選択肢の2~3肢が解いたことのあるものであれば、他の肢が分からなくてもほぼ正解に導くことができる筈です。

過去問も横断的に取り組むこと

ただし、漠然と過去問を解くのではなく、関連論点に広げて考察したり、民法⇔会社法における対比や、択一論点から記述論点に繋がりを持たせて理解を深める等、考えながら解いていく必要があります。単に、前回よりも正答率が〇〇%上がったという様な表面的な成長を確認する場にするのではなく、設問同士を蜘蛛の巣の様に張り巡らし、知識がそこから零れ落ちないように何重にも網をかけて知識を定着させるイメージで取り組む必要があるのです。

移動時間やバスタイムも有効活用する事

学習時間はまとまって確保できれば一番理想的ですが、必ずともそうとは限りません。むしろ10分から20分くらいの切れ端の時間を有効利用できるかどうかが合格の分かれ道と言えます。特に会社勤めしている人は毎日の通勤時間がありますし、昼休憩の時間も15分くらいは勉強に充てられると思います。また、いつも30分くらい早めに出社できれば、始業のベルが鳴るまでに勉強時間を確保できるでしょうし、外回り営業の人も意外と外で手持ち無沙汰な時間があると思います。ですので、その様なすき間時間を意識して作る事といつでもテキストを広げられるように、テキストかタブレット等をカバンに入れておく習慣をつけておきましょう。

また帰宅後の入浴時間も貴重な勉強時間です。最近では携帯の防水ケーススマホのクリップホルダー等お風呂グッズも充実しているのでこれらを活用して無駄のない生活を送りましょう。
ちなみに便秘気味の人は、トイレに書式の雛形でも張っておくというのも良いでしょう。(ちなみにみなオジは快便だったので、トイレには特に張り紙などはしていません…)

夜型はダメ?

これも良く聞かれるのですが、個人的には夜に集中できる人は夜やればいいと思います。ただし、若い頃はそういうスタイルでも全然できたのですが、歳をとるとやはり体調のバランスが崩れたりしますし、直前期は模試や答練が朝の10時からスタートするので、夜型だと寝不足になって実力を発揮できない結果となってしまうので注意が必要です。

さいごに

初学者のうちに学習スタイルを確立できないと、その後の学習効率に影響を与え、合格までの期間が大幅に遅れてしまうでしょう。時間を掛けても正しい方法でなければ、無駄になってしまうので、勉強方法に自信が無い方や迷われている方は早めに予備校などで講師やメンターの人に相談するのが良いかもしれません。

また、2年目くらいに択一問題で24~26問をコンスタントに取れていないと、勉強時間が絶対的に足りないか、勉強方法が間違っているかもと疑う必要があるでしょう。

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港区オジさん(みなオジ)です。
長い極貧オジさん生活を経て、いつの間にか小金持ちのアーリーリタイアオジさんにクラスチェンジしました!
投資家と司法書士の肩書を有する一方、妻の尻に敷かれるちょい駄目オジさんの異名も持つ。