
皆さんはコロナワクチンの接種はしましたか?国内ではコロナワクチン接種率(2回目まで)は80%を超えており、議論は色々あったものの、接種できない理由が無い人を除き、ほとんどの人が打っている様な感じです。
医者ではないみなオジには、ワクチンの有効性と危険性については判断が付きませんが、ここ近時の死亡者数の減少という客観的なエビデンスを見るに、何となく国民全体がウイルスに対する免疫を付けてきたのではないかと思います。
予防接種禍とは
さて、こんな国内の世論を分断したコロナワクチン接種ですが、法律を勉強している人間は、「予防接種禍 と国の補 償」と言う問題を頭に浮かべるのではないでしょうか。そもそもコロナワクチンに限らず、全ての予防接種は「悪魔の籤引き」と言われ、確率は低いながらも必ず一定数のアタリ(被接種者の死亡または重篤な後遺症)が発生してしまいます。
予防接種の被害者による裁判も多く起こされてきましたが、被害者救済と賠償責任の狭間で裁判官がいかに理論構成に苦慮して、納得感のある判決を導くかが理解できる良い教材の様に思えます。みなオジブログは法律解説のサイトではないので、詳細が気になる人は判例解説を見ていただくとして、ここでは概要にサラッと触れる程度でお伝えします。
簡単に言えば、最高裁判決が「厚生大臣の禁忌者への接種回避措置懈怠につき過失があった」として国家賠償責任を認め、損失補償責任を認めた地裁の第一審判決を覆しているのですが、被害者の救済を「する・しない」という結論の修正ではなく、接種者(国もしくは医療者)の過失の有無や接種自体の意味合い(公共目的に基づく行為正当性)、保護すべき権利(身体生命と財産権)の違いで、どのような論理で被害者の救済を行うかが専ら論点となっています。
国民に対する補償
救済と言っても、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条)、国家賠償責任(憲法第17条)、損失補償請求権(憲法第29条3項)があり、どれを当てはめるかにより必要な要件が変わる事から安易に適用するとバランスが崩れてしまうのです。
【column】 国が費⽤を負担して予防接種を受け、それにより疾病等が⽣じた場合は、予防接種法第15〜17条に定める健康被害救済制度に基づき、医療費の⾃⼰負担分の他、医療⼿当などの給付がされますが、上記で挙げる救済はそれを超える請求をする際に持ち出される根拠です。 |
予防接種法第15条 市町村長は、当該市町村の区域内に居住する間に定期の予防接種等を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡が当該定期の予防接種等を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、次条及び第十七条に定めるところにより、給付を行う。 |
特に憲法第29条において「特別の犠牲」の中に「生命・健康」を含めることによって、国による生命侵害を認めるとことが前提となってしまうというジレンマが生じてしまいます。「被害者の救済」だけを目的にするのであれば事は単純ですが、取るべき根拠により他の事案等あらゆるところに影響(例:人権侵害を誘発する恐れ、例えば公共の目的があれば、補償をすることで人を殺しても良いとする法理論等)を及ぼしかねない為、法の当てはめが難しいというか慎重にせざるを得ない事案なのです。判例の他に様々な学説があるのもその様な理由です。
上記の様な理屈を学問的に考えるとややこしいですが、押さえるべきは、なぜ、このような議論がされているかを意識し、興味を持つ事です。法学者は別に「討論ごっこ」をしたくて、学説論争をしている訳ではありません。補償の根拠が変わってしまうと極端な話、補償の道筋は残されていても、裁判でそれを勝ち取るのに非常に困難になる可能性も起こり得るのです。
ワクチン接種の善し悪しの議論は、以前より下火になってきましたが、コロナワクチンの接種に限らず、たとえ十分な体制が整備されても事故が起こる可能性は否定できないという事を認識したうえで行動すべきではないかと思います。また、人の情報に流されるのではなく、自分の頭で考え、行動する事が必要でしょう。
個人的にはワクチン信者でも陰謀論者でもありませんが、とりあえずコロナ収まってきたんだからハワイ行きたいわー。
