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裁判外紛争解決手続(ADR)について現役司法書士が詳しく解説

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引用元:東京司法書士会HPより

裁判外紛争解決手続※とは、「裁判所を解せずに」民事(債務不履行)・家事(相続や離婚)の紛争を解決する手段です。仲裁、調停、あっせんなどに分かれ、法律の専門家である司法書士も認証機関※※としてこれらに関与することが可能です。

なんか手続きがめんどくさそうだし、効果の程も微妙なんじゃないか?と思われる方もいらっしゃいますが、日本の裁判はとにかく費用と時間が掛かるんです。また、家族間のいざこざや個人事業主等のちょっとした紛争(の種)が生じそうな場合は、和解手続きであっても裁判所を通すと対立が決定的になってしまうことから、個人的にはADRは選択肢の一つとして有効な手続きだと評価しています。

※「ADR促進法」第1条の目的では「訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続」と定義されています。

※※民間紛争解決手続を業として行う場合は「ADR促進法」第5条に基づき法務大臣の認証を受ける必要があります。

司法書士が関わることができる分野という事で、今回はADR手続(主に調停)について説明していきたいと思います。ちなみに裁判外紛争解決手続という名称は長いので、ここではADR(Alternative Dispute Resolution」)と記載していきます。

【仲裁】
仲裁とは、仲裁法に定められたルールに基づき、当事者の合意により選ばれた1名から3名の第三者(仲裁人)が下す判断(裁判所の判決に代わるもの)によって解決するものです。
裁判では裁判官を選ぶことはできませんが、仲裁では仲裁人の選定に当事者が関与することができます。ここが裁判とは大きく違うところです。
また、裁判では判決に対して不服がある場合、上級の裁判所に対して新たな判決を求めて不服申立て(上訴)をすることができますが、仲裁では仲裁人の判断に不服があっても申し立てることはできません
【調停】
裁判や仲裁のように、第三者の判断で紛争を解決するのではなく、当事者の話し合いと合意により、紛争を解決するのが調停です。当事者主体の紛争解決手続きといってもいいでしょう。
調停は裁判所内の手続としても存在しますが、平成19年4月1日に「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR促進法)が施行され、民間の紛争解決機関に法務大臣による「認証」制度が導入されました。
引用: 日本司法書士会連合会HPより
引用元:法務省HPより「ADRの認証制度について」

民間機関が各自で独自のADR運営を行うとなると、公平性業務の適正性が担保できず、ADR制度そのものの信頼性が損なわれることになります。その為これらを担保するため一定の要件の下、国が認証して監督する仕組みとしたのです。

サービス提供主体による分類特徴
民間型ADR“ すてっき” のような司法書士会、弁護士会、各業界団体などが行う
司法型ADR裁判所内で行う(民事調停、家事調停など)
行政型ADR独立した行政機関が行う(国民生活センター、紛争調整委員会のあっせんなど)
主体による分類

認証ADR機関の特長

民間紛争解決手続を業として行う者は、上記認証を受けていなくてもADRを行う事は可能ですが、司法書士や弁護士などの法律資格者が設置している認証機関が実施する調停手続きと異なり以下の様な効力が生じないという制限があり、紛争解決ができるかどうかはさておき、本制度を使う事によるメリットはあまりないかも知れません。

認証機関が実施する調停手続により生じる効力
・時効の中断効がある。
・認証業務であることを独占して表示することができる
・弁護士以外でも、報酬を得て和解の仲介の業務を行うことができる。
・訴訟が並行している場合に、裁判所の判断で訴訟中止が可能。
・調停前置主義が適用される事件(裁判所における調停などを経なければ訴えの提起ができない原則)について、当該原則を適用除外とすることが可能。

調停と裁判の違い

下に、調停と裁判の違いを並べてみました。「話し合い」「合意」等当事者の意思が重視されているのが分かるかと思います。逆に言えば、当事者の解決意識が薄らげば、つまり話し合いが平行線になればこの枠組みの解決は脆くも崩れる(不調となる)という事です。ここが調停の難しいところで、調停人の腕の見せ所という訳です。

       司法書士会調停センター裁 判       
当事者当事者双方が話し合いによる解決の意思を持ち、手続に関与することが必要。訴えを起こした方(原告)の関与だけでも手続が進む。
終結当事者が合意により解決をする。裁判官が判断し、一方的に問題の解決をする。
証拠収集手続証拠調べの手続はないが、客観的な資料等の提出・交換により、事実や事情に対する当事者の相互理解を促す。厳格な証拠調べの手続がある。裁判官が事実認定をする。
主張手段情報はなるべく双方で共有化するように協力しあい、公正な解決を目指す。原則的に、自分の言い分は自らが主張立証する。(弁論主義)
執行力合意内容に執行力はない。判決に従って強制執行できる。
引用元:日本司法書士会連合会HPより

あくまでも、当事者(私人間)の話し合いの場に中立な第3者(調停人)としてサポートするだけなので、結果の既判力(その場で決定したことが法的効力をもつ効果)や国家の保全効や執行力は期待できませんが、紛争の早期解決や当事者間の遺恨を残さずソフトランディングできるという点ではメリットも多い手続です。

また裁判は一般的に裁判所の公開法廷で審理されるので、プライベートな問題が含まれる事件についてはADRの非公開手続で行う方が良いかもしれませんし、裁判所だと緊張して上手く話せない、証拠調べ等に耐えられないという人も多く、(良い意味での)敷居の低さというのも魅力ではないでしょうか。

司法書士会のADR機関は単位会毎に存在

なお、司法書士が運営するADR機関(調停センター)は、単位会(東京・神奈川等の各司法書士会)ごとに個別に運営されており、2020年時点で31の地域にあります。大阪などの主要地域でも調停センターがないところがありますし、単位会毎に性質が異なることもあります。

具体的には、東京司法書士会調停センターは民事に関する紛争全般を取り扱う事ができるのに対し、札幌や神奈川司法書士会が運営する調停センターは「紛争の価額が140万円以下の」民事に関する紛争のみを扱うものとされています。また大分の調停センターでは司法書士らしく「登記手続への協力を求めることを目的とする」民事紛争を扱うとしています。ちなみに、東京司法書士会調停センターは「すてっき」の愛称で呼ばれています。

法律専門職以外のADR機関とその取扱い紛争は?

司法書士や弁護士以外のADR機関を例に挙げると、「公益財団法人 日本スポーツ仲裁機構(JSAA)」が運営する機関があります。例えばとある競技団体を除名処分になったが納得がいかないとか、オリンピックや世界大会の選考で不公平な取扱いを受けた、身に覚えがないのにドーピング検査に引っかかって成績無効となってしまった等の多岐に渡る紛争があります。

世界的にはスイス・ローザンヌにあるCAS(スポーツ仲裁裁判所)が有名ですが、費用が高額で使用言語も英語となり敷居が高いです。プロスポーツ選手の給与未払い選手移籍に伴うチーム間の移籍金のトラブルがニュースに取り上げられますが、このような特殊な業界では、裁判所(裁判官)の知見では対応できないこともあり、JSAAの仲裁・調停の存在意義は高いのではないでしょうか。

身近なところでは隣接士業の行政書士もADR機関を有していますが、そこでは民事の中の一部の分野に限り取り扱っています。具体的には外国人の労働問題や自転車の事故(クルマとの接触は除く)、ペット問題、賃貸物件の敷金・原状回復に関する紛争が対象です。

東京司法書士会(調停センター:すてっき)が提供する調停手続とは

東京司法書士会調停センターポスター

これまでは、調停と言えば裁判所でしたが、平成19年4月1日に「ADR促進法」が施行され、民間の紛争解決機関に法務大臣による「認証」制度が導入されました。司法書士会にも調停センターや紛争解決センターが設置され、東京司法書士会では、平成20年12月10日法務大臣の認証を得て、調停センターを設置しています。

現役の司法書士が「手続実施者」つまり調停人となって当事者の会話をサポートするのが特長です。法律専門家たる司法書士が調停人となりますが、難しい法律理論を振りかざすのではなく、あくまでも当事者間の納得感や調停後の関係維持も視野に入れた柔軟な対応を重視した、いわゆる「会話促進型ADR」を目指しています。

申立て手続き及び費用

気になる利用費用ですが、手続の段階に応じて以下の通りに設定されています。

(1)調停依頼手数料 :金10,000円(消費税に相当する額を含まない。)

(2)調停実施手数料 :各当事者金5,000円(消費税に相当する額を含まない。) 

(3)合意成立手数料 以下の表のとおり

合意成立の価額手数料額
140万円以下金3万円
140万円を超え300万円以下   金3万円+(合意金額-140万円)×5%
300万円を超え1000万円以下  金11万円+(合意金額-300万円)×3%
1,000万円超金32万円+(合意金額-1000万円)×1%

争いのある事件における双方合意の価格が140万円以下ならば申込から合意まで5万円程度で済むという事ですね。通常、裁判で弁護士に訴訟代理人を委任した場合は着手金から成功報酬を含めると50~70万円は覚悟すべきところですので、この価格は非常に魅力的です。

基本的にADRに携わる司法書士はこれで儲けようという意思は無く(多分)、ほぼボランティア精神、法律家としての社会貢献の一環という意味合いで取り組んでいる先生が多いので実現可能な価格設定と言えます。

ADRの利用状況は?

他の認証機関の利用状況は調べていませんが、司法書士が手続実施者として実施するADR手続については、以下の様な統計が出ています。令和1年度で全国で75件の受付、東京会だけだと11件ですか…う~ん、上記にお手軽な価格というメリットを打ち出した割にはあまり利用されていないというのが実情でしょうか。

確かに裁判と違って当事者を拘束する効果はない(相手方は応諾しなくても良い、応諾しても自分の意思で手続きから離脱できる)ので、紛争の初期段階しか使えないという理由があるのかも知れませんが、もう少し利用者が増えても良いのかも知れませんね。

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港区オジさん(みなオジ)です。
長い極貧オジさん生活を経て、いつの間にか小金持ちのアーリーリタイアオジさんにクラスチェンジしました!
投資家と司法書士の肩書を有する一方、妻の尻に敷かれるちょい駄目オジさんの異名も持つ。