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マンションカーストは都市伝説か?~格差社会を考える

投稿日:2020年10月29日 更新日:

格差社会

マンションカーストとは、湾岸マンションブームを皮切りに色々なブログで取り上げられ、ドラマも放映されたことからも、トレンドワードになりました。様々な体験談がニュースやブログでも掲載されていますね。(噂のレベルは玉石混合ですが…)真偽のほどはともかくとして、今回はマンション(タワマン)カーストについて、記載していきたいと思います。

タワマンの特徴と格差との関連性

タワマンカーストの内容としては、タワーマンションは階数が多い分、通常のマンションより高層階と低層階では物件の売り出し価格が大きく広がる傾向にあります。その結果、同一マンションの住人でも収入・生活のレベルに大きな隔たりが生じやすいことから、それぞれの生活様式の違いを発端として住人間のマウンティングやセレブ層派と庶民層派の対立関係が生じるというものです。また、住人が乗るエレベータが高層階用と低層階用エレベーターに分かれることも、カーストの様相を表していることも原因の一つかもしれません。その格差がまさにカースト制度のごとくマンション内の人々を階層に区切り、「内在的に」分断していくというものです。また、タワマン格差の舞台は主に湾岸エリア(東京で言えば「豊洲・芝浦」などが代表的)を舞台にすることが多いのも特徴です。これは、湾岸エリアは住宅地としての歴史が浅いことから、新居を必要とする新婚・子育て世代が同時期に流入しやすい環境にあったことが理由として挙げられます(ちなみに湾岸エリアの特徴は、東京出身以外つまり「田舎者」が多い事)。年代や家族構成などが似通っていると、単純比較のしやすさ(格差が分かりやすい)という統計上の理由もあるでしょう。また、湾岸エリアという特性上、大規模物件やタワーマンションという上下の物理的距離を広げた結果、普通の新興住宅地以上に「格差社会のピラミッド」を想起しやすくなり、それによって本来タブー視されていた格差に触れるハードルが下がったというのも理由の一つではないかと思います。

中央区人口推移byRESAS
 東京都中央区の人口推移(1980~2020年は実績値、以降は予想値) 出典元:RESASにより抽出

ちなみに湾岸エリアにタワマンが多い理由は、行政(バブル期の地価高騰を受け郊外に人口流出し、(いわゆる「ドーナツ化現象」)人口減となった中央区などが、流出した人口を再び増加させるため居住誘導政策を推進したこと等が挙げられます。上記のグラフでもわかるように、全盛期の昭和28年には17万人いた中央区の人口流出は地価高騰を受け1995年には7万人まで減少しました。そこから区が音頭をとり子育て世代を中心に都心回帰に導いたことで、現在は全盛期の人口に戻りつつあります。中央区は限られた土地(特に湾岸エリアは川や海など水辺に面した土地が多く、それほど多く住宅地を確保できない)で住居を効率的に増やす手法として、「容積率の緩和」等マンション建設に際して建設に係る許認可申請に柔軟に対応する政策をとり、結果として建物の高層化が進んだと言えます。またタワマンカーストが面白おかしく取り上げられる理由の一つに「子育て」が絡んでくる事も絶妙なスパイスとなって、感情に波風を立てる要素に一役買っているでしょう。その子供(保育園)を介して、個人ではなく世帯単位での接触頻度・接触深度が増加しマウンティングを加熱させるのは容易に想像できますね。自分自身にはそれほど興味が無くても、子供のことになると周囲と比較したくなるのが親の性というものです。例えば、自分より低層に住んでいて下だと思っていた家族の子女が有名私立の受験に成功した一方で、自分の子供が受験に失敗してしまった時の、その両親に湧き上がるどす黒い感情は想像に難くありません。従来、マンションを住居に選ぶ人は、隣人や町内会といった近所付き合いを好まない傾向があります。若者・地方からの流入者などは特にそうでしょう。マンション内は回覧板を回すという事はないですし、住人同士がエレベーターに乗り合わせても会釈くらいしかしません(中にはめっちゃ話しかけてくるおばちゃんもいます 笑)。こういった関係性の良し悪しは別として、マンションが選ばれる理由の一つには、このドライな関係性がありますが、子供がいる事で完全に接触を断つ事はできないのです。

格差とは何か?

そもそも、格差とは何でしょう?昭和の時代(みなオジの子供時代)でも貧富の差はあったと思うのですが、正直言ってみなオジ自身それをあまり気にしたことがありません。その理由は、みなオジ一家が格差社会の上位に位置していた…からではなく、住んでいたところが田舎過ぎて格差の無いフラットな環境だったからだと思っています。当時の子供に大人が感じるほどの格差なんて分かる訳ないだろうという意見もあるかもしれませんが、子供であっても他の家との違いは結構敏感に感じるものです。例えば、自分の服はおさがりばっかりだとか、友達は最新のおもちゃをいっぱい買ってもらえて羨ましいとか、友達の住んでいる家・庭がデカい、授業参観で友達のオカンが綺麗な身なりをしている、友達の家にはおしゃれなチワワがいるのに何でウチのペットはオタマジャクシなのか…とか、余計な知識とか偏見がない分、子供は子供なりの格差を感じて生活しているんです。大人になると相当親しくならない限りお互いプライベートを見せる事は無くなりますが、子供というのは悪気なく全てをさらけ出してくるので嫌でも格差を見せつけられ、むしろタチが悪い…

香ばしい団地時代

ちなみに、みなオジの例を挙げますと、小学生までは公営団地に住んでいていたので正直裕福とはいえず、団地に住んでいる友達も大体同じような生活水準だったと思います。団地は間取りもほぼ同じですし、基本賃貸なので住宅設備を含む室内の仕様も統一されていますから、家賃もほぼ同じ。

ちなみに、みなオジが住んでいた団地は5階建てにもかかわらずエレベーターがなかったことから、家賃は最上階が一番安かったと記憶しています。(タワマンとは真逆です!)。この様に「団地」という特性上、団地内の格差というのはありえなかったのです。ちなみに、団地に住んでいた時代は、お祭りの行事とかみんなで集まって遊んだ思い出があります。鍵も掛かっていなかったので、学校終わりの放課後は同じ棟の友達のうちにノックもせずに入って、テレビゲームとか、空き地でサッカー(とは呼べない球蹴り遊び)をしていました。子だくさんな家族が多く、トイレが間に合わない(?!)ので、1階の共同玄関で小便をするというまさに「香ばしい」昭和の日常が団地にはありました。自分の部屋とは別の棟の話だったので、笑い話として聞いていましたが、その玄関を使う他の住人は笑えない話です…

上階ほど格が上?

タワマンカーストの根拠の一つに挙げられる点は物件の価格差です。高額な部屋に住んでいる人が金持ちであろうという単純な理屈です。実際に分譲時にはタワマンは、一般的に高層階程価格が高く設定されています(部屋の広さにもよりますが、同タイプの部屋で1階上がるごとに50万~10万円ずつ高くなる感じで、隣のビルの高さを超えて、眺望の抜けがあると急に上がったりもします。例外的に直下の部屋の方が高かった例がありましたが、これは低層階用と高層階用の両方のエレベータが利用できる等のメリットがある等の特殊な例です)。ただ、マンションの価格はあくまでも「坪(㎡)単価×部屋の広さ×修正要因(方角、角部屋等のプレミアム要素)+部屋の内装や追加オプション」で決まります。つまり、A:30階(坪単価300万円)にある20坪の部屋とB:5階(坪単価270万円)の30坪の部屋では、合計額ではAが6,000万円、Bが8,100万円となり、低層階のBの住戸の方が高いのです。この様にタワーマンションへの憧れで高層階を狙っていたが、予算上の問題で狭い部屋しか選べず結果20坪の住戸しか選べなかったという事もある訳で、一概に高層階=お金持ちという事は言えないのです。また、同タイプで同じ広さの部屋を選んだCさんとDさんがいたとして、高層階を選んだCさんよりも、室内のグレードアップにお金をかけたDさんの方が結果的に物件価格全体では1,000万円以上も高かったということも普通にあります(下記表を参照のこと)ちなみに、マンションのモデルルームも通常2,000万円くらいのオプションゴテゴテ状態です。これでも、高層階マウンティングできますか?

追加オプション価格(概算)
オーダー家具(食器棚・上下)40万円
 →天然石へ変更20万円
 →家電収納を追加5万円
玄関ミラー(シューズインクローゼット貼り)15万円
ガラスフィルム(遮熱・UVカット)3LDK10万円
フロアコーティング(リビング、ベッドルーム、台所)35万円
エコカラット(3LDK全室貼り)170万円
バルコニータイル20万円
壁面収納家具(書棚・小物置き)120万円
ダウンライト×4基10万円
 →調光スイッチ5万円
浴室テレビ20万円
ミストサウナ40万円
ビルトインコンベック(ガスオーブン)20万円
食洗器アップグレード(ミーレ社)20万円
(参考)システムキッチンアップグレード
         (ジーマティック社等)
500万円~
(参考にならない)
合計1,550万円~
実際のオプションカタログから抜粋だ!  参考:みなオジがもらったマンションのOPカタログ
ジーマティック社のキッチン
引用元:ジーマティック社ホームぺ時より

このように高層階に住んでいることが必ずしも金持ちの証ではないというのが、ご理解いただけたのではないでしょうか?勿論、高層階の住人が額面通り格差社会の頂点にいる可能性は高いですよ。ただ、それを見極める方法が階数だけでは難しいという事を実例を挙げて説明した訳です。更に言えば、マンションは購入者のみならず、賃貸で住んでいる方もいらっしゃいます。私が住んでいるマンションも「賃貸 ○○(マンション名)」で検索すればネットに表示されますが、同じ広さの住戸ですと私がローンで支払っている金額の15万円以上高い賃料でないと住むことができません。一般的には賃貸<分譲とイメージがありますが、経費を自由に使いこなせる様な個人経営者や会社のオーナーなどは賃貸で住むことが多いです。また、「事業協力者」として建て替え前の建物の所有者が住んでいる可能性もあり、マンションには色々な経緯で住んでいる人がいる為、その住人の収入や経済状況は一見して評価できるものでは無いのです。もちろん、マンションの購入者はこのような経緯を知っているので、単純な上下階マウンティング等生じる筈がないのです。

実際にタワマン住人になって格差を感じることはあるか?

上記の通り、単純に住んでいる階数では格差は分からないと記載しましたが、現在港区(湾岸エリアではありませんが)のタワマンに住んでいるみなオジはどう感じているかを実体験を踏まえつつありのまま書きましょう。まず、みなオジは低層階住人です。専有面積もそれほど大きくない為、おそらく物件価格としては安い部類でしょう。更に言えば購入時に「有償オプション」もほぼ付けていません(5万円程度)。つまり、みなオジは(「マンションカースト」という制度が物件価格という差で生じるならば)最底辺の住人になる訳です。そして、ドラマ的には上階の住人とエレベータに乗り合わせたときに、申し訳なさそうに行先ボタンを押さなければならないのです。…ですが、生々しいエピソードを期待されていた方には申し訳ありませんが、正直その様な事は「ありません!」(残念ながら)。もちろん格差は、タワマン内に限らず現実としてあるものですし、人間社会で生きる以上、マウンティングもあるのは否定ませんが、殊更タワマンだから…という事はないと断言します。ただ、うちの子供がエレベータに乗り合わせた同年代の友達に「ねぇ、○○ちゃんは何階なのー?」等と無邪気に言ってしまった時はさすがに(いろいろな意味で)冷や汗をかきました。そういう悪気の無いやり取りで傷つく(傷つかせる)ことはあるのかもしれませんが、むしろ、ある一定程度の購入者層のマンション程、挨拶をしっかりされるような礼儀正しい方が多いと感じました。そもそもその様な些末なことに拘らないゆとりのある方が多い様に感じますし、人の噂話をする程ヒマでもないのではないでしょうか。(…と、ここまで書いて、こういう勝手な先入観が逆にありもしない格差を幻想のごとく作り出しているのかも知れないと、途中でハッとなりました。反省です。)

最後に(マンションの管理と格差について)

これは、マンション管理士としての私の私見ですが、マンション(特に住人間の属性が多様な大規模マンション)においては、マンション管理組合の運営方針すなわち、そのマンションの維持管理の方向性にブレというか対立が生じやすいと考えます。これは、タワマンカースト社会的な問題というよりは、単純に自己資産の管理についての考え方の相違かと思います。

マンションの管理組合の総会で意見が分かれる状況の代表例としては、大規模修繕に対する意見の相違(修繕費の支払いの方法、どの部分を修繕するかという範囲)と、分譲からある程度時間が経って使われなくなったつまり陳腐化した共用部分やコンシェルジュサービスの見直しに関する意見の相違、数十年経って建て替えが視野に入った頃にこのマンションの行く末を決める時の意見の相違などがある。お金が絡むところでは、低層階の資金にゆとりがない住人は最低限の修理に抑えてできるだけ、一時金の出費を軽減させたいでしょうし、お金に余力のある高層階の住人はマンションの価格維持を目指して、機能に影響のないような美観にも力を入れた修繕を行いたいと感じるだろう。また、維持費にお金のかかるスパ(温泉施設)や高層階のバーやコンシェルジュサービスは無くすか規模を縮減したいと思う人もいれば、ステータス感を無くしたくないと何とか維持したいと考える人もいるだろう。もはや、生活レベルが違いすぎて、何が快適であるかの基準がバラバラになってしまったのだろう。この様な考えの違いが表面化すると、徐々に現実の格差社会の様な対立構造を生むようになります。マンションという「共有資産」を有したことによって、富裕層と庶民層の利益が相反し、お互いが足を引っ張る存在になるのです。これは、どちらの考えが良いという問題ではありませんが、この様にこじれると、両者はもはや相容れない関係となることから、マンション内のコミュニティは崩壊に向かい管理組合による自治も機能不全に陥ります。運営の足並みがそろわないことで、マンションの価値はどんどん失われることになり、嫌気がさした住人はどんどん退去し一気にスラム化に向かうのではないかと危惧します。

この様に、私個人的には格差のあるコミュニティは、現代において成立しないとは思っていませんが、こと、マンションという不可分の財産を共有する関係においては格差は間違いなく、負の影響を生じると考えます。最後は問題提起だけして無責任にも解決方法を提示することなく終えますが、将来自分にも関係する問題ですので、法制度の手当も含めてどうすれば、円滑な管理組合の運営ができるかをじっくりと考えていきたいと考えています。(早めに売るという荒技ではなく、です)

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港区オジさん(みなオジ)です。
長い極貧オジさん生活を経て、いつの間にか小金持ちのアーリーリタイアオジさんにクラスチェンジしました!
投資家と司法書士の肩書を有する一方、妻の尻に敷かれるちょい駄目オジさんの異名も持つ。