先日、下記のニュースを目にしました。このニュースを見て、ロレックスもついに投機筋に目を付けられたかと、少し複雑な気持ちとなりました。
韓国でロレックスが300万ウォン値上がり、ブランド品売り場に長蛇の列
4月1日、ある現物小口投資プラットホームが発売した「ロレックス集合1号」という投資商品が、発売開始から30分で完売した。小口投資とは数人が共同投資して後に生じた差益を分け持つもので、同商品の募集総額は1億1800万ウォン(約1150万円)。最小投資額は10万ウォン(約9700円)からだ。投資対象は時計の大手ブランド「ロレックス」の人気商品11モデルだ。6カ月後にこれらの時計を売却した際に得られる収益を投資家たちで分配する仕組みだ。ロレックス・ファンドの期待収益率は25%にも上る。自分で身に付けるためではなく、値上がり後に売却するのを目的にブランド品の時計を購入するのだ。同投資プラットフォームの関係者は「ロレックスは中古でも価格が上昇するケースが多く、投資商品として価値がある」と説明する。
引用元:朝鮮日報2021年5月3日配信
「ロレックスは中古でも価格が上昇するケースが多く、投資商品として価値がある」…まあ、確かにそうなんでしょうけど、こんな投資商品が出ると更におかしな価格変動が起こるんだろうなと予想できます。
目次
行き場のないマネーの捌け口に
韓国にもコロナ関連の給付金があるかわかりませんが、日本と同じように景気を冷やさないようにあらゆる財政出動をしていると思いますので、貨幣価値の下落に伴い、それと連動するかのように不動産や貴金属への関心が高まっているんではないでしょうか。
ロレックスの価値の高さがこの様な投機商品を生み出したと言え嬉しい反面、ただでさえ荒れ気味のロレックス相場がこの流れをきっかけに更に乱高下し、本当に購入したい実需層(一般の消費者)が迷惑を受けるのではないかと懸念します。
元本割れリスクは?
この記事には期待収益率(25%)のことしか書いておらず、元本割れのリスクには触れていませんが、まさか皆さん元本割れリスクは無いとは思っていないですよね?下記の運用期間のところでも触れましたが、「うまい話には罠がある」というのが投資話の原則です。よく仕組みを検討してから出資してください。その上でリスク無さそうなら、教えてください(てへ)。
投資戦略には属性ごとに適した戦略がある?
ロレックスを購入する方法は前回の成金さんとのやり取りでも聞かれましたが、絶対的な購入方法などは存在しないのです。世の中にはお金がある人、その他がある人(人脈・時間・知識/情熱のどれか)、どちらもある人、どちらも無い人に区分されます。すべての人が共通の戦略でロレックスを購入できるわけではないことを知っておいた方が良いでしょう。例えばお金が無い人がお金を持っている人のやり方を使ってもリスキーであるばかりか、お金持ちにはかないません。
ロレックスを購入する方法は前回の成金さんとのやり取りでも聞かれましたが、絶対的な購入方法などは存在しないのです。世の中にはお金がある人、その他がある人(人脈・時間・知識/情熱のどれか)、どちらもある人、どちらも無い人に区分されます。すべての人が共通の戦略でロレックスを購入できるわけではないことを知っておいた方が良いでしょう。例えばお金が無い人がお金を持っている人のやり方を使ってもリスキーであるばかりか、お金持ちにはかないません。
お金がある人の戦略(王道)
ロレックスに限らず、投資の世界における絶対的な強者は資金力が豊富な人です。簡単な例をあげます。勝率1%のルーレットがあったとして、最低掛け金が1万円だとして、財布に1,000万円ある人と10万円ある人が、勝負をしたら勝ち抜ける確率は圧倒的に資力を持った人が上がります。投資の世界も同様で基本的に体力(資力)の無い者から投資の世界から退場する事になり、強者は弱者の資力を養分として更に資力を蓄えるのです。ロレックスを購入したいのであれば、資力を有する者の方が色々な手段を講じて購入(しかも割安に)する事が可能です。例えば今は使えませんが、百貨店の外商を利用できる位、百貨店と懇意の間柄になっていれば商品が向こうから勝手にやってくる、極論を言えばそういうある意味不公平な世界なんです。
また、百貨店の外商を使わなくても、強者の戦略は実行可能です。極論を言えば、毎年、2~4本をその店で購入するくらいの太客になれば、必然的に希少なロレックスに案内してもらえる可能性は高まります。お店側は否定するかもしれませんが、年間に何本も購入していれば店員さんとも必然的に親しくなりますし、(偉そうにしない限り)希望を叶えてあげたい、良い商品を優先的に回して喜んでもらいたいという、意識が働くでしょう。VIPが購入するときは店を貸し切りにしたり、特別商談ルームに通して人の目から遠ざける対応をしますが、そこに当然優先購入権というメリットも付与する事でしょう。仮に、本当にそういうVIP待遇が無いハイブランドがあるとしたら、そのブランドはある意味で「不公平」だと思います。私がVIPだったら、そんな自治体の様な(平等をはき違えた)店には行かないでしょう。
もちろん、これらは一般的には公にされないですし、外相という制度を考えれば違法(ズルい)とは言えない入手手段です。こんな不公平な世界で強者と戦おうとするのですから、当然、お金持ち以外の人はなかなか買えずにマラソンをする羽目になるのです。
お金は無いが、それ以外は持っている人の戦略(一般道)
みなオジはこのカテゴリーです。お金がない事を嘆く暇があったら、人脈・時間・知識・情熱を増やせと言いたいところです。お金が無くても上の4つが揃っていれば、お金持ちに匹敵するのではないでしょうか。ちなみに、ロレックスマラソンを始めるきっかけとなった成金しゃちょ―とのやり取りで、こんな(酷い)ことを言われた記憶が蘇りました。
みなオジ:「成金さんにお勧めのモデルは今言ったロレックスのプロフェッショナルモデルなんですけど、正規店 では全然在庫無いんですって。「デイトナマラソン」という言葉がある程で、皆、モノを手に入れるの に長期間店を回ってるんですよ。」 成金:「マラソンだなんて大げさだなー。みなオジさんなら、200m走位(意味フ…)でしょ? ホントにそこまでしないと買えないの??」 みなオジ:「でもそこにロレックスのロマンがあるんじゃないですか?」 成金:「なら、実際にマラソンしてみてよ。そろそろ、新しいの欲しい頃でしょ?」 みなオジ:「えー、?今付けてるやつだって2年前に買ったばっかりですよ。そもそも、マラソンする程ヒマじゃ ないですよ。」 成金:「いやいや、みなオジさん、独立してから10年位ずっとヒマじゃない?( ´∀` )」 |
だったのかと軽くショックを受けた瞬間でした…
やはり、真っ当なサラリーマンやっている人には平日の日中は厳しいですし、最近では緊急事態宣言下で正規店も19時半~20時位で閉店するので、仕事終わりでは間に合わない人も多いでしょう(そもそも、ロレックスの購入層なんで、それなりに日中はバリバリ働いている人多いですからね)。結果的に休日くらいしか回れないという感じで、時間的拘束があるのは絶対的に不利ですよね。無駄なことはやめようと、心折れる(諦める)割合もヒマ人よりは高いでしょう。上記では、時間を例に挙げましたが、人脈も然り、知識や情熱無くしてこの過酷な荒行には耐えられないでしょう。
ちなみに、資力に加え、上記全てを兼ね備えていたら、普通の人とは勝負になりませんよね。そんな、パーフェクトな人なんて、中々いないと思っているアナタ!残念でした、お金を持っている人は時間や人脈を持っていることが多く、逆もまた然りなんですよね(涙)神様は不公平だ!
だからこそ、強者を抑えてランナーは完走(レアモデルをゲット)した時、至福の想いに耽ることが許されるのです。そして、次の戦いに備えて、知識と人脈等を増やそうと不断の努力を絶やさないのです。(大袈裟ですかね?)
資金も時間も全て持っていない人(邪道)
資力も時間も無い人向けの戦い方、それが今回の「ロレックス集合1号」を始めとする小口投資なのでしょう。確かに小口化する事でリスクを下げて、リターンを平準化することはできるでしょう。しかし、それが本当に魅力あるスキームになるかと言えば疑問です。弱者の戦略の王道としては、とにかく規模を拡大させる事、つまりファンド化する事によってスケールメリットを出すことで資産家の資力と張り合う事ですが、個人的には以下の様なデメリットや弱点が見て取れます。
弱者の集まり=烏合の衆に過ぎない
手厳しい事を言いますが、お金(しかも少額)しか出さずに大きな成果を出すことはできません。もちろん小口投資しているので、出資者も多くの利益を望んではいないでしょうが、募集総額1800ウォン(約1,150万円)を集めて、投資対象である希少なロレックスを購入するというスキームにおいて、まず第一の疑問として、そのファンドで換金率の高いなどを購入できるのでしょうか?この投資口がデイトナなどの高い換金率の商品を購入出来れば良いですが、そもそも品薄だから価格が高騰しているのです。そんな状況の中、現物の調達がかなわなければそのファンドの高配当(記事によれば期待収益率25%)を実現することはできないでしょう。
仕入れルートは?
新品の商品を確保できなければ必然的に並行店や中古店に流れる商品を仕込むことになるのでしょうが、それだと仕入れ値がそもそもプレミアムが乗った価格になるので、上記の期待収益率を維持するのも大変そうですし、暴落が起きた場合は元本割れは必至な気もします。そうすると考えられるのは、そのファンドは特別な仕入れルートを持っているというでしょうが、そんなルートを持っているんだったら、たかだか1,000万円ちょっとのファンドを組成するよりも、その胴元(ファンドマネージャー)が小口に割らないで直接買い付けた方が早いし、利益も独り占めできるような気がします。要するに何が言いたいかというと、この商品は「胡散臭い」という事です。
なぜに6か月後?
また、みなオジは冒頭でそんな投資プラットフォームを組成しても、所詮は烏合の衆と言いましたが、その理由としては集めた1,000万円ちょっとの資金で購入した現物(ロレックス)を「6か月」という確定期限で売却するという事です。つまり、6か月後ロレックスの相場が上がろうが下がろうが現金化するというのは、現在、異常な高騰をしているロレックスの市場において値下がりリスクも相応にあるのではないかと考えます。
値下がりのリスクの根拠としては、同じ記事内に『中古時計を扱っている専門店「ヨンジョン・コレクション」のキム・ムンジョン代表は「昨年以降、時計の売買を目的に訪れる顧客が一昨年に比べて2倍以上に増えた」とし「5年前に900万ウォン(約87万円)台で購入したサブマリーナーモデルは現在1200万ウォン(約116万円)程度で売れている」という。』と記載されているので、30%の粗利を出すのに5年掛かっているのに、なぜ、6か月度に25%の「運用益」(←「粗利」じゃないですからね。25%の運用益を出すには、運用手数料を考えても30%以上の粗利が必要と思います。)を出せるのかな?というのも単純に謎です。
不動産のファンドに比べて動産ファンドの危うさ
不動産を引き合いに出して恐縮ですが、不動産の場合、売却のタイミングでないと判断すれば、保有しつつ運用益(賃料収入)を得ながら、売り時が来るまで我慢という戦略も取れますが、動産である時計の場合は保有していても1円も生み出しません(むしろ保管コスト(場所や保険)が掛かる)し、貸そうにも貸した瞬間にその時計は未使用商品ではなくなり価格が2~3割は低下します。ですので動産を対象としたファンドが安定して収益出すというのは、かなりハードルが高いと言わざるを得ません。そもそも、日本ですと購入してから6か月も経過すると未使用状態ではあるものの、新品扱いはされないので期間を設置するならもう少し短い期間(せいぜい2~3か月)の方がまだマシなのではないかと思ってしまいます。
この辺り、みなオジは韓国の買取り制度・慣習を知らないので何とも言えませんが、このスキームの手口を知っている人がいたら教えて欲しいものです。(あと、どうでもいいですけど、韓国って、夏場過ぎても腕時計って高値で売れるんですかね?※4月に組成したファンドをか6か月後(10月)に売却するという時点で少し不安です。南半球の国で売るのかな?知らんけど…)
無責任な投資商品
このファンドのスキームを改めてみると「募集総額は1億1800万ウォン(約1150万円)。最小投資額は10万ウォン(約9700円)からだ。」とある様に、最小の掛け金は1万円を切っているので、購入者は過熱報道に乗せられて、ロレックスが何かもろくに知らずに集まってきた人々が出資しているのが容易に想像できます。そんな(胴元を含め)素人集団が、百戦錬磨の転売ヤーにやりあう事が出来るのかなというのが、この報道を見て感じた印象です。詐欺とまでは言わないですが、一体どんな運用ができるんだろう)
ファンドマネージャーの力量って?
記事の中では「投資対象は時計の大手ブランド「ロレックス」の人気商品11モデルだ。」とありますが、具体的には殿モデルが対象何でしょうか?日本だと、鉄板のデイトナ、夏場であればサブマリーナ(特にグリーンサブ)となるのでしょうが、韓国だと換金率は日本と違いがあるんでしょうか??
そもそも、相場に慣れた人であっても、相場に振り回されて価値が上がるだろうと思って長期保有していても、予想と逆の動きをして損をすることも多々あるので、転売ヤ―は基本的に購入の瞬間に利益が確定するモデルしか手を出さないのですが、記事で挙げる「11モデル」というのは、いささか手を広げすぎの様な気もしますが、どうなのでしょう?(そもそも、11モデルまで広げないと商品を確保できないのだとしたら、その時点で「負け」なんですが…)
そもそも、お金だけ出して儲けようとする時点で、出資者のレベルは転売ヤと同じでしょう。むしろ、汗水たらして毎日店舗を回っている転売ヤーより怠惰な印象を持ってしまいます。楽して稼ぐ方法等は無いのだと言いたいですし、転売ヤーはリスクと時間と労力をかけてその成果を得ているという意味では、事業として体をなしていると思います。(別に、転売ヤーを賛美する意図はないですが… )
転売時の税金問題
ところで、記事にある「25%の期待収益率」っていうのは、売却時の税金とか入れているんでしょうかね?25%から、運用手数料や税金が引かれての25%だったら、夢のある金融商品(むしろ、夢がありすぎて怪しいですが)ですね。
日本でのケースを前提にしているので韓国には当てはまらないかもしれませんが、いい機会なので、時計の取引と税金について、話していきたいと思います。
無申告だらけの「転売ヤー」、国税庁調査の9割で発覚…なぜバレてしまう?
国税庁が11月27日に発表した所得税などの調査結果で、「転売ヤー」と呼ばれる個人による転売行為の無申告の実態が明らかになり、ネットで話題になった。 国税庁が、インターネット取引を行っている個人について、2019年事務年度の1877件を調査したところ、89.5%にあたる1680件で無申告が明らかになった。追徴課税は65億円で、前年度よりも12.1%増えた。 1件あたりの申告漏れ所得金額は1264万円、追徴税額は349万円ということで、個人としては、かなり高額な取引が行われていることが見えてくる。
税理士ドットコム 2020.12.10配信
みなオジは、税については専門外なので上の記事を参考にしてもらえればと思いますが、転売益への課税については原則と例外、例外の例外とあり、それぞれに分けて検証する必要があります。
まず、原則的には、腕時計は「生活用動産」に該当し譲渡益(つまり転売益)は課税の対象にはなりません。しかし、アンティークとして骨董品のとして価値のあるものや、金無垢素材や全面にダイヤモンドなどの宝石が散りばめられているモデルは、「贅沢品」と見なされ、その場合は、「1個または1組の価格が30万円を超えるもの」は譲渡課税の対象となるのです。(もちろん、ここから控除がありますので、無税という可能性もあります)
冒頭の記事の例は「例外の例外」であり、転売で生計を立てている専業転売ヤーや本業の傍ら転売を行う副業転売ヤーの場合は、継続的な取引から生じる所得であるとみなされて、それぞれ事業所得や雑所得として課税されてしまいます。(ちなみに、年末調整が済んでいる給与所得の方が副業として得た所得が20万円以下であれば確定申告の必要はありませんし、転売以外に収入がない専業主婦などは、令和2年税制改正を踏まえると所得金額が48万円以下でも同様となります。)
冒頭の現物小口投資プラットホームは韓国の投資会社が運営しているファンドなので、韓国の税制に従う必要があります。このファンドは、日本でいうところの事業的な転売を(ファンドの運用の一環とは言え)行っているので、転売益が出た場合は、おそらく税を支払った後に残る利益を分配することになるので、思ったほどリターンがとれないという可能性もありそうですが、韓国の課税制度に二重課税回避等の措置があれば要らぬ心配でしょう。(そもそも利益が見込めないなら、杞憂ですが。)
さいごに
散々こき下ろさせていただきました。自分は見向きもしない投資商品ですが、私自身、動産運用の経験が無いので、こういう転売商品を使った運用方法が成立するというのであれば、ぜひその手法を教えていただきたいものです。いずれにしても、この「ロレックス集合1号」は4月1日の売出から30分で完売したという事ですから、10月の配当結果が出たら、またお知らせしたいと思います。