先日、来年度の司法書士手帳が事務所に届いたので、司法書士手帳や司法書士登録をしているか等について触れていきたいと思います。実際に使っているかどうかわかりませんが、本職であれば1冊は持っているのではないでしょうか?
そこで今回は、気になる(ならない?)司法書士手帳の中身や、ちょっとした雑学などにも触れながら説明しましょう。ちなみに私は手帳はタカハシ派です。
目次
投資家って自分で名乗りにくくないですか?
ブログタイトルからもご存じの通り、みなオジは現役の司法書士です。ですが、職業としての本業は投資家という方が正しいです。主な収入は株式取引や不動産収入がメインであり、司法書士としての収入は補助的なものに過ぎません。司法書士登録するだけで年20万円ほど掛かることを考えると、わざわざ登録するまでのものではないのですが、みなオジは2つの理由で登録しています。
①登録をしなければ、仕事ができず、仕事をしないと司法書士としての知識がどんどん陳腐化するから |
②適当な肩書が欲しい(社会的な呼称が欲しいから) |
①に関しては、目的と手段が逆になっています(登録したから、業務を行う)が、せっかく苦労して取った難関資格ですし、言い方を変えれば、みなオジが合格したことでその年の合格者枠が一つ消費されたという事ですので、資格を取得したにも関わらず登録しないというのは、不合格者に対し申し訳ない事と考えています(勿論、やむを得ない理由で登録できなケースもありますが)。もちろん登録したからには、業務を行い自身の知識のアップデートを行わなければなりません。また、副次的な効果として同業同士の繋がりもでき、有益な情報交換やビジネスチャンスも広がるというメリットがあります。②については、自分が何者であるかを端的に表すことかできるのが司法書士の資格だからです。上述の通り収入的には投資業なのですが、初めて会う人(特に不動産業者以外の人)に「投資家です」と名乗ると大抵胡散臭い様な目で見られることから、交流会やカジュアルな飲み会等における初見の挨拶では「司法書士事務所を運営しております」と言っています。
会社を離れることは、自分を表す看板が無くなるという事
司法書士も「士業」の端くれですので、みなオジ自身も他人からよく「先生」と呼ばれます。ちなみに、先生と呼ばれたことのない人は、「先生なんて呼ばれて、調子に乗ってるんじゃないのか?」等と思われるかもしれませんが、呼ばれる側としては、自分がどのように呼ばれるかなんて気にも留めていません。もちろん初めて呼ばれたときは、司法書士になったんだという実感が湧いたものでしたが、士業をされている人の多くは、(同業からはともかく)依頼者からは先生付けでは呼んで欲しくないのではとも思っているのではないでしょうか。しかし、資格としての司法書士は意外と使い勝手が良く、みなオジが会社員を辞めた後は便利に利用させていただいています。個人投資家を生業としていると、投資業として法人化させるメリットは節税対策的にそれ程多くありません。そのため、自身の会社などを設立せず個人事業主として活動する事が多いのですが、兼業サラリーマンがいざ会社を退職して組織人では無くなると、途端に自分の名刺のスカスカ感が妙に気になり不安になるものです。個人事業主の立場で名刺を作る場合は、士業の肩書がないと、せいぜい「屋号+代表+氏名」と書くくらい(一人しかいないのに「代表」もおかしいですし、屋号表記もなんかしっくりこない)でしょうから、士業の資格は、その隙間を埋めてくれるちょうどいい(安定感のある)肩書になるのです。(ちなみに名刺に「実業家」とか「投資家」の肩書を書いている人って見たことないですよね?もし見かけたら、新手の詐欺師かと思ってしまうかも。笑)
ちなみに、司法書士の隣接士業である行政書士資格は、国家公務員又は地方公務員の行政職として17年間勤務すれば取得することができます。その為、定年退職した元公務員の中には、いきなり無職となって社会とのつながりが無くなったという感覚に陥る方が一定程度いる様で、そこそこの年会費が掛かるにもかかわらず、行政書士登録して資格入りの名刺を持って(行政書士の業務に従事する予定がないにも関わらず)行政書士を名乗る人がいらっしゃるとお聞きしたことがあります。公務員に限らず定年になった人(特に会社一筋だったサラリーマン)にとっては、結構切実な悩みなのでしょう。
司法書士は、結構いろんな組織に属している
実は司法書士は資格を取得しただけでは、司法書士業務を行う事が出来ず、必ず職能組織(ギルド)である「日本司法書士連合会」に登録し、各地域の「司法書士会」に所属しなければいけません。また、司法書士は活動範囲により、様々な組合組織に加入することがあります。有名なところでは司法書士が後見業務を行う場合は「公益社団法人 成年後見センター リーガルサポート」に、官公署の登記を受託(嘱託と言います)する為には「公共嘱託登記司法書士協会」(司法書士法第68条に定められている法人)いう社団に所属する必要があります。また近年では、企業や官庁等の組織に所属する司法書士有資格者(登録しなくてもOK)が加入する、「日本組織内司法書士協会」という団体もあり、組織内司法書士の地位向上やビジネス実務に関する研究や会社法や関連法規改正の際にパブリックコメントを発出したりしています。
東京司法書士協同組合とは?
この様に、司法書士とはいっても一匹狼で仕事が出来るわけではなく(これは、司法書士だけでなく弁護士や税理士も同じです)、色々な組織やしがらみに縛られながら生きなくてはならないのです。もちろん、我々が強制又は任意加入する組織は司法書士を縛るだけでなく、当然守ってもくれるわけで、円滑に仕事をする上での欠かせない組織といえます。みなオジは司法書士業を今後も拡げる予定はないので、強制加入団体以外はほとんど入っていませんが、任意団体としては唯一、東京司法書士協同組合に加入しています。これは、他の団体と違い、加入することで会務が発生したり、仕事をあっせんしてもらうために加入が必要なものではありませんが、個人経営が多い士業のいわば総務部の様な組織となります(大学生における「大学生協」といった感じか?)。組合事業は、有料無償様々なサービスがありますが、福利厚生(健康診断の紹介及び費用補助、保養施設との提携)、印紙・切手販売窓口、小規模企業共済(個人事業主の退職金)・中小企業退職金共済制度(従業員向けの退職金)の紹介、書籍の割引販売、セミナーの実施、労働保険(雇用・労災の複合保険)加入の事務処理、司法書士総合補償等の団体保険の取次ぎ、弔慰金の支払い等、様々なサービスを提供してくれます。面白いところでは、年に1回、地方の特産物を小包で送ってくれたり(今年は長野、昨年は北海道だったかな?)マンションデベロッパーと提携して、マンション価格の提携割引(といっても0.5%ですが…)が利用できたりします。
組合に加入すると毎年無料で司法書士手帳が配布
この様に、司法書士業務を行う者であれば、入っていて損はない組織といえますが、仕事をさぼり気味のみなオジが加入した理由の一つに、司法書士手帳(冒頭の画像)が1冊無料でもらえるからです。買うと、1冊1,700円。有償なら買うかどうか悩むレベルですが、タダならいるでしょ!という訳で、司法書士登録年度の翌年くらいから加入してもらうようになりました。(ヤフオクに出すなよ!)
手帳の気になる中身は?
せっかくなので、中身も見てみましょうか。まず見開きをめくると、2021年を中心に前年と翌年の年間カレンダーがならび、国民の祝日も載っています。(毎月末と、2月、3月の繁忙期の祝日は、売れっ子の先生は勤務だと思いますが、まあ、かき入れ時だと思って気にしない、気にしない。)次のページを開くと、「司法書士倫理」の第1章の規定が。司法書士の規範ともいえる重要なお言葉です。真面目な司法書士先生は、これをそらで読める人がいるとかいないとか…
(使命の自覚)
引用元:日本司法書士連合会HP
第1条 司法書士は、その使命が、国民の権利の擁護と公正な社会の実現にあることを自覚し、その達成に努める。
(信義誠実)
第2条 司法書士は、信義に基づき、公正かつ誠実に職務を行う。
(品位の保持)
第3条 司法書士は、常に人格の陶冶を図り、教養を高め品位の保持に努める。
(法令等の精通)
第4条 司法書士は、法令及び実務に精通する。
(自由独立)
第5条 司法書士は、職務を行うにあたっては、職責を自覚し、自由かつ独立の立場を保持する。
(司法制度への寄与)
第6条 司法書士は、国民に信頼され、国民が利用しやすい司法制度の発展に寄与する。
(公益的活動)
第7条 司法書士は、公益的な活動に努め、公共の利益の実現、社会秩序の維持及び法制度の改善に貢献する。
司法書士倫理規定に気が引き締められる?!
司法書士はいつもこの倫理規定を心に秘め、日夜業務にあたっているのです。どれも重要な条項ですが、みなオジ的には第1条の「使命の自覚」と第3条の「品位の保持」を強く心がけたいと思います。品位があるからこそ、自分を律し、常に自己研鑽に努めなければいけませんし、資格にあぐらをかいて怠惰でいることが許されないとするある意味厳しい規定なのです。みなオジが「投資家」ではなく「司法書士」と名乗るのは、お金の為に生きるのではなく、使命や品位を重んじる者として生きていたいという想いの表れですが、司法書士を名乗るという事は、他人からもそのように期待されるという事です。資格が入った名刺を渡すときは、司法書士の名を汚さないように、その資格にふさわしい自分であらねばという気持ちにさせられます。
カレンダー(六曜入り)
この、司法書士倫理のページの後は、やっと手帳らしくカレンダーが始まります。ちなみにカレンダーは「大安」「仏滅」等の六曜が表記されたものです。業界により、仏滅等に重要事を避ける慣習がありますが、不動産取引においては仏滅に決済(住宅ローンの融資実行の手続きの場)を避ける傾向があることから六曜の記載はありがたいと言えます。また手帳には緑・紺・茶の紐しおりが3本入っていますが、みなオジはその3本が別々のページに挟まれたことはありません(笑)そして、カレンダーのページ数は手帳全体の半分で終わります。では、その後のページはどのようになっているのでしょうか。
司法書士会の意気込みが現れた「民事事件表」
まずは、MEMOと書かれたフリーページが20ページにわたり続きます。そして、その次は「民事事件表」と題された民事裁判に関する期日のメモのページとなります。裁判所名と事件名、受託日、裁判所書記官名、期日とその法廷の部屋番号などが記載されています。これは、司法書士が今後更に民事事件に進出するという意気込みを司法書士手帳に込めたのでしょうか。たまたまだろうと思われる同業の先生もいらっしゃるかもしれませんが、みなオジ的にはこの配置の意図は本気の表れと考えています。
司法書士業関連資料
その後は、130ページに渡る「司法書士業務関連資料」が続くことになります。その目次に目を移すと、登録免許税表(売買に基づく所有権移転の登記の税率は不動産の価額の20/1000)という登記申請の際に使う税率の表が載っています。みなオジも合格直後は免許税関連は大体記憶していましたが、悲しいかな、時が経つにつれ、マイナーな登記原因の税率は忘れてしまっていたりします。ちなみに改正で追加された「配偶者居住権」の設定登記の税率は2/1000なんだ(知らなかった…)。【ブログ】~お役立ち法律コラム~配偶者居住権、はこちら
司法書士が良く足を運ぶ場所も網羅
その他には、文書(契約書・訴状)に貼る印紙の額の一覧や成年後見の申し立て手続きや公証人の手数料の表、方向音痴な司法書士の為に法務局・裁判所の所在連絡先一覧などが記載されています。まあ、最近はオンライン申請が多いので、法務局もだいぶ人が少なくなりました。渋いところでは、度量衡の換算表(1坪≒3.31㎡)などがあります。ちなみに、「オンライン申請運用開始日チェック表」はどのようなときに使うんだろうか?(登記識別情報に切り替わったタイミングを知りたいという事だろうか??誰か教えてください。)
おまけ(司法書士の日)
手帳を画像を撮影しようとカレンダーをペラペラとめくっていたら、「司法書士の日」なる日がありました!大抵の歴史ある国家資格には記念日があることは知っていたが、司法書士の記念日は初めて知りました。
8月3日です。皆さん覚えてください(休日でも何でもありませんが)。えーっと覚え方は、、「破産(8ハ3サン)したら司法書士に相談だ!」とか?(ゴロが悪い、しかも司法書士は書面作成しか破産手続きに関われない…)お後がよろしいようで。
[…] 他にも司法書士手帳が毎年1冊もらえたり、TDLの補助券をもらえたり、書籍や印紙をお得に購入出来たりと司法書士協働組合は司法書士の活動に必須の組織と言えます。皆さんも登録後 […]