以前も触れた話になりますが、仕事柄なのかタダで教えてくれそうだからかわかりませんが、みなオジに不動産投資の方法、またはやるべきかやらないべきかを尋ねる人が多くいます。
特に最近では手元の資金が溜まってきているので、投資に回したいという人が多い様で、ワンルームマンション(1R)投資についてどう思うかという質問が多いので、このブログの読者の中にも同じような疑問を持つ人がいると思い改めて書いていきたいと思います。
関連過去ブログ:「ワンルームマンション投資を始める前に」は→コチラ
前回と重複する部分もあるので、今回はダイジェスト的に述べていきます。結論から言うと、前回尾発信時からみなオジの意見は変わっていません。他にどうしても投資したい商品が無いのであれば、1R投資もどうぞ、といった感じで、決して「お勧め」はしていません。
こういうと、全国の1R専業者や既に先業者から物件を購入して運用を始めている方から反発を食らいそうですが、あくまでも一個人の意見、という事で大目に見て下さい。
もちろん、みなオジがこの様に考える根拠はいくつかあります。
目次
参入障壁の低さ
一つ目は、(不動産投資に限りませんが)ワンルームマンション投資は、参入障壁が非常に低いという事です。言い換えれば競合が多いという事と、資金力や信用力が低い個人が行う投資スキームであり、旨味が少ないという事です。少し嫌な言い方ですが、ワンルームマンションは「貧者の投資」の代表です。ここでいう「貧者」とは資金面・信用面だけではなく、投資に関するリテラシー(情報収集力)の低い人という意味です。
投資や新規事業開発の定石に「ブルーオーシャンを狙え」という原則がありますが、1R投資は既に多くの参入者の入り込んだ状態、つまり価格競争の激化したレッドオ―シャンの状態です。以前、例えば表面利回り5%程度を確保できていた頃(10年前)に参入した投資家は、まだ出口(物件の売却)が見えますが、想定利回りが4%程度の現在の状態で購入してしまった投資家はかなり厳しい状況にさらされるでしょう。投資というのは多分にババ抜き的要素を持っており、最後にババ(高掴みした物件)を持っている者が負けとなるルールです。
中間業者(利益の中抜き)が多い
もう一つはタダでさえ低い利回りに加えて、やれ、仲介業者の利益や金融機関の金利、管理会社の管理手数料、サブリースの保証額、更新料の折半と、投資家の獲得機会である収入の度に一定額が抜かれるという構造的な問題です。最近の1R業者は、室内設備の交換費用、退去時の原状回復費用は当社持ち、サブリース契約でなくても一定期間を超える空室時の賃料補填は当社が負担しますという、一見、至れり尽くせりの「万事お任せコース」を謳っていますが、その業者の原資は結局オーナーである投資家の利益です。
つまり、オーナが手にする利益は業者が搾り取った後の残りカスなのです。1R業者としては一度販売すれば、月々の管理委託費から契約更新料まで全て手にすることができるという「ノーリスクのストックビジネス」を約束されている様なものです。
減価償却で節税?
1R業者の売り文句に、サラリーマンの所得税をマンション投資の赤字で還付するというものがありますが。まず、あなたの年収はいくらですか?50万円位赤字を垂れ流した結果、還付される税金はいくらですか?と聞きたいですね。医者や弁護士、税理士(あと、司法書士)などの年収ベースで2千万円を超える様な個人事業主であれば、相応のインパクトがあると思いますが、年収600万程度のサラリーマンにとって魅力的な提案とは到底思えません。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
※自分の年収に当てはめて、年50万円赤字を垂れ流したときの還付額を確認してみてください。
むしろ500万円程度の年収なら、もう少し年収を増えたところで、株式投資などの運用益に係る税率約20%(所得税15.315%、住民税5% ※復興特別所得税を含む)と変わりないですし、NISAの非課税枠で運用をした方がよっぽど利益を得られるのではないでしょうか。
勿論、1R業者は融資を得てレバリッジを効かせた運用が不動産投資の旨味だと切り返してくるでしょうが、そもそも年収2000万円を超えるサラリーマンであれば1Rマンション投資に固執する必要は無く、都心の広めの実需マンションや事業用ビル、郊外の一棟アパートといった選択肢も視野に入れて選択する事が出来ます。
みなオジが、冒頭で1R投資は「貧者の投資」と揶揄したのはそういう理由で、与信の低い人間は融資枠の関係上そもそも物件価格の低い1R投資しか選べず、皮肉にもそういう属性の人間にとって節税効果というのは効果が低く赤字を出してまで運用する必要性がないのです。
年収500万円程度のサラリーマンは、日々の生活費から残った額も多くなく、貯蓄額も大したことが無いでしょう。そういう時期に行う投資はキャッシュフローを減らすような、つまり赤字を出すような投資は悪手です。この時期は、いかに手元の現金や与信(年収)を増やして、もっと筋の良い運用商品を選べるようにする事だと考えます。
1R投資は保険商品としても優秀?
これも、上記と同じ理由で、年収500~1000万円クラスの中流世帯では効率が悪いと考えます。マンションのローンを組む際は必ず、団体信用保険(団信)に加入する必要があります。団信とは、借主が死亡または高度障害を負ったり、ガン等の特定の病気に罹患した場合に、融資残債を免除するという保険です。
一見リスク回避に効果的と思えますが、よく考えてください。その保険の掛け金は投資用ローンの金利に乗っています。もし自分が死亡するリスクがあると考えるならば、そもそも団信ではなく普通の死亡保険やがん保険に入れば良いでしょう。(保険金が同じであれば、団信であれ、一般の保険であれ、掛け金はほぼ同じなので。)
そして、年収500万程度でこれから資産額を増やしていこうという目的で投資を始めているならば、保険の意味は少ないでしょう(なぜなら、保険が発動するときは、自分がほぼ死んでいる時なので)。つまり、保険はリスク回避となるだけで、目先の資産を直接的に増やす手段にはなり得ないのです。むしろ資産額を最大限に増やしたいときは保険は利回りを落とすものにしかなりません。
ガン特約つければウハウハ?
また、ガン等の診断を受ければ保険が発動する高度障害特約(ローンの利率に+0.1~0.2%上乗せ)を付ければ、自分が死なずともローン残債は無くなるという甘言に乗せられる人もいますが、これも理論的ではありません。日本では「ガンは二人に一人が罹る病気」と言われていますが、それは人生を通じて出会って、若年でガンに罹る人はごく少数です。繰り返しですが、ガンや病気に対する備え(付保)を行うこと自体を否定するわけではありませんが、それを敢えて利回りを下げてまで1R投資のスキームに組み込んで行う必要性はないと考えます。
自分の資産が貧弱な段階で手元の資金を効率的に増やしたいというステージにある者ほど、団信のコストはむしろ足を引っ張るものになる可能性があります。そもそも単体で利益の出る投資であれば、そのまま所有しておけば良いのですし、まとまったお金が必要であれば即時に売却して売却益を出せるでしょうが、先述の通り、利益の中抜きが多く購入後の物件価格の減少が確実な1R投資だからこそ、団信付保が必須となるという事を理解すべきでしょう。
さいごに
以上の様な理由で、個人的には1R投資には手を出しません(少なくとも今の投資環境では)。
勿論、みなオジ自身現役の不動産投資家ですので、不動産投資のパワーは誰よりも理解しているつもりです。しかし、だからこそハズレを引いた時のダメージが大きい事も知っています。
そもそも、現在の都内の1R投資の表面利回りは4%、下手すると4%を割り込む可能性もあり、投資としての損益分岐点は限界値と言ってもいいでしょう。先ほどいった様に投資用マンションの価値は「収益還元法」でのみで測られます。月10万円の家賃が見込める物件は10年ほど前であれば、5%の表面利回りで計算されていたので2,400万円の価値がありましたが、4%の表面利回りが普通となった現在では3,000万円となります。
つまり10年前に2,400万円で購入した場合は、出口(売却時)で3,000万円で売却が見込めるのでまだ良いですが、今の相場で購入して10年後に表面利回りで3%、つまり4000万円で購入しようとする人間が果たしてどれだけいるでしょうか。いくらレバレッジを活かせると言っても、表面3%(実質利回りで2%)となる投資商品では、他の投資に切り替えた方が良いと考える人が大半でしょう。つまり、投資物件である以上この物件が3,000万円から上がる事は、(インフレが加速しない限りは)ありえないのです。
つまり、今1Rを購入する人は、極めてババを引いている可能性が高いと考えているのです。「残り物には福がある」等といわれていますが、これだけは誓って言えます。「投資の残り物を喰うと、ずっと腹を壊す」
最後に誤解がない様に言っておきますが、1R投資が問答無用でダメというつもりはありません。1R投資に限らず業者に依存した投資形態が失敗の元だという事です。例えば、物件管理を自分でやる気概があれば、更新手続きや退去手続きも意外と自分で可能です。また、物件選定についても同様で、実需用マンション(特に大規模タワマン)にもワンルームの住戸が設定されていますが、投資物件相場に比べ割安な部屋があります。これは大手デベロッパーが積算法もしくは取引事例比較法で値付けをしているからです。(これは大手デベが提携する金融機関が住宅ローンしか扱わないメガバンク等が多く、投資用ローン専門の金融機関を入れていない、もしくは1Rの販売ノウハウが不足しているからだと思いますが。)
そういう住戸は投資家勢も参加して高倍率になることが多く、運よく購入できた人(法人)が新築1Rを購入してすぐに転売・賃貸出しするというケースがあります。これは、1R業者が扱う物件では絶対にありえないケースです。
要するに、リターンを得ようと思ったら、自分で汗をかいて物件を選んで、自分でローンをアレンジして、購入後の管理も自身で行わなければいけないという事です。そういう事が手間だと感じる人は、業者を使って楽してくださいという事です(もちろん、楽をするためには利益を削るほかないのですが)。そういう意味で、不動産投資は不労所得ではないのです。