お金・仕事 港区おじさんのつぶやき

所得金額調整控除について

投稿日:2020年10月26日 更新日:

給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」な、なげぇ名前だ…

 消費税、厚生年金負担増(標準報酬月額の上限が上がった)と巷では国民の負担増が叫ばれていますが、一方で所得税の所得金額調整控除が2020年に創出されたのはご存じでしょうか?ある要件をクリアした給与所得者(つまりサラリーマン)の給与収入が850万円を超える場合に所得税が減るという制度です。

実は、みなオジの妻はある会社のOLなのですが、「ねぇ、パパさーん。もしかしたら、私も今年から子供関係で(給与所得)控除受けられるのかもしれなーい(喜)」といわれたので、まだ、結構理解していない人もいるのだと感じ、記載することにしました。

みなオジは司法書士で税関係は専門外ではありますが、サラリーマン時代も10年くらい確定申告等を一人で行っていたこともあり、住民税・所得税関連は多少詳しいのです。→ちなみに結論から言うと、みなオジ妻は、勤務先の給与単体では850万円を超えない事から、所得金額調整控除の対象外なのです。

所得金額調整控除創成の経緯

 もともとこの制度が創出された経緯は、平成30年度の税制改革で給与収入850万円超のサラリーマンに対する給与所得控除が引き下げられた(つまり、増税対象となった)ことから、その調整として創出されたというものです。今回のコロナ騒ぎの影響もあるので、少しは増税延長してもらえませんかね~…

なお、所得金額調整控除には、①子ども・特別障害者等を有する者等に対する控除②給与と年金の双方を有する者(主に年金受給対象の再雇用者を想定)に対する所得金額調整控除がありますが、今回は①について説明します。

対象者は?

 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の対象者は、当該年の給与等の収入金額が850万円を超えるサラリーマンで、ⅰ~ⅲの要件に該当する者です。 

 ①控除対象者本人が特別障害者である

「特別障害者」      国税庁ホームページより           

障害者のうち、次の特に重度の障害のある方

  • 身体障害者手帳に身体上の障害の程度が一級又は二級と記載されている方
  • 精神障害者保健福祉手帳に障害等級が一級と記載されている方
  • 重度の知的障害者と判定された方
  • いつも病床にいて、複雑な介護を受けなければならない方 など

②年齢23歳未満の扶養親族を有する人

扶養親族とは、納税者と生計を一にする親族で年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は、38万円以下でした(給与のみの場合:給与収入103万円以下))である等の基準を満たす者。

③特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する人

勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、生活費などを常に送金している等の一定の条件を満たせば同一生計に該当。

控除額は?

例えば①~③に該当するあなたの給与額が900万円である場合は、その額から850万円を引き、その金額に10%を乗じたものが給与所得控除に加算になります(給与収入1,000万円超から15万円が一律で控除されます)。上記例の900万円の場合は5万円が控除額に加算となりますので、仮にその人が税率33%であれば16,500円が還付される計算になります。特筆すべき点は、当該控除制度は23歳未満の子供がいる夫婦の収入金額がそれぞれ850万円を超えていても、夫婦双方がこの控除を適用することが出来ることです。つまり、妻はこれまで子供を控除対象扶養親族としていなかったとしても、今年から控除対象にして所得税の還付を受けることができるということです。皆さんも会社から通知が来ると思いますので、忘れずに申請しましょう。

さいごに(年金問題もついでに)

いかがでしたか?確かこの制度が成立した時、子供を持つ世帯が恩恵を受けることから、独身や子供のいない夫婦から反発があったことを記憶しています。しかし、色々な立場やそれに追随する意見・価値観があり、全ての人が納得できる制度というのはありません。年々増え続けるのは税金だけではなく、社会保障費(特に年金)の負担増について皆さんも文句があると思います。かくいうみなオジも若いころはロクに調べることもせずに「年金払っても、老後に制度破綻してるんじゃねーの?」といった批判ばかりでした。(実際に大学生の頃なんて、「免除」という制度があったにも関わらず、手続きもしないで「未納」としてしまった…)若いころは、年金を払うお金があるなら高い服を買ったり、デートの軍資金や友達と遊びに行く金に回した方が良かったと本気で思っていたのです。若さ(と無知)とは、なんと恐ろしいものか!ちなみに、年金納付については「2年」の消滅時効がありますが、当時のみなオジは「え?時効成立?逃げ切ったぜ、ヒャッハー」みたいな感じで、全く事の重大性を認識していませんでした。その後、年金の時効に関しては過去2回の「後納制度」の特例がありましたが、学生時代の未納の後納には間に合いませんでした。ちなみに平成24年から3年に渡り実施された後納制度の利用実績は7%弱でしたので、ほとんどの人は知らんぷりという結果だったという事になりますけど…そもそも、年金意識の低い未納者への施策ですので、反応が良い訳がないのですが、現在の未納率を鑑みても妥当な数字でしょうね。

 厚生労働省は29日、自営業者らが支払う国民年金保険料の2019年度の納付率が69・3%だったと発表した。前年度から1・1ポイント改善し、過去最低だった11年度の58・6%から8年連続で上昇した。納付率は若い世代ほど低い傾向があり、25~29歳が最低の57・09%、55~59歳が最高の77・66%だった。都道府県別では、最高が島根県の81・48%、最低は沖縄県の55・41%だった。

引用元:読売新聞オンライン(2020/06/29)

ちなみに、年金の時効制度は、かなり前に現行の2年から伸ばす方向にあったようですが、未払いを助長するとか権利関係が複雑になるなどの弊害もあるようで見送られ(継続審議?)ています。(個人的には昔に遡って払ってしまいたいのですが、何とかならないものですかね?)

とにもかくにも、みなオジは年金は絶対に払っておいた方が良い派です。年金制度に文句を言う人は大抵「払い損」といいますが、本当に損なのでしょうか?確かに団塊世代がもらえた額からみれば、年金支給額が減っていることは否定できません。しかし、これは世代別の人口分布的に仕方がないものといえます(就職氷河期と同様に、文句言っても仕方がいないのと同じ)。給付条件の改悪や給付開始年齢の繰り下げもあるでしょうから、もう年金は見切って年金はガン無視(サラリーマンは支払いから逃げられませんが)して、いざとなったら生活保護にしますか?しかし、生活保護についてもいつ制度が変わって、減額などの改悪があるかもしれませんよ?

下表はシンクタンクが試算した「世代ごとの給付負担倍率」のデータです。年代ごとに数字が並んでいますが、平たく言えば各年代毎の支払った年金額に対する、支給される年金額というものです。少なくとも平均年齢まで生きるという前提ですが、「経済前提ケースG」という日本の想定経済成長が一番悪いシミュレーションであっても、払った金額よりも年金支給が少なくなるというシナリオはないという事です。まあ、こんなシミュレーションを鵜呑みにするなと言われればそれまでですが、そこまで国を信じられないのであれば、日本の年金制度を非難する前に、日本を脱出したほうが良いのかもしれません。具体的に言えば、金額的に不十分といわれる国民年金ですら払い損にはなりません。これは、国民年金だけで生きていけるかどうかとは別の話ですが、少なくとも存するから払わないという理由にはならないという事です。また、悲しい事に「俺はすぐ死ぬから、年金なんて払わないんだ~」という人ほど、結構長生きするものなのです…

また、みなオジの様に若い頃イキがって年金を払ってないような場合でも、人は年齢を重ねるごとに、色々と不安になるものです。でも、時は戻すことができなーんだよ!と嘆く必要はありません。国民年金保険料の納め忘れなどにより、保険料の納付済期間が40年間に満たない場合でも、時効消滅前に「後納制度」を利用したり、それでも満たない場合は、60歳を超えても引き続き年金を払い続ける「任意加入制度」を利用する等の救済手段もあります。

財政検証による世代ごとの給付負担倍率
出典元:みずほ総研「年金の世代間の給付と負上の図は担の差」

また、みなオジが年金制度をべた褒めするのは、サラリーマンの年金である厚生年金(サラリーマンの年金制度)です。受給額はサラリーマンの収入が算定基準となりますので個々人でばらつきはありますが、平均的な給与だったサラリーマンであれば、月15万円くらいは見込めます。また、上の図はサラリーマンが生涯に払う年金と受給額の倍率を試算した表になりますが、国民年金の倍率を大きく上回る倍率となっており、全世代で2倍以上の給付が見込まれています。なぜなら、支払い時の厚生年金の半額は企業側が負担してくれるからです。こんな素晴らしい制度は活用しない手はありません。サラリーマンは税制面で個人事業主よりも不利(税回避できない)だといわれますが、個人事業主が受ける恩恵よりもはるかに恵まれたメリットも多く、年金の恩恵はその最たるものでしょう。これについては、サラリーマンと個人事業主の両方を経験したみなオジだからこそ、自信を持ってお伝えすることができます。

今回はたまたま同じタイミングで厚生年金の上限額改正(改悪?)があり、標準報酬月額の上限が上がったことから、高給取りのサラリーマンにとっては給与所得控除額の引き下げも相まって、非常に不満感が強い事でしょう。ただ、厚生年金の上限額が上がったことはマイナスではなくて、支給時にその高い標準報酬月額で計算される事から、年金支給額は増えるという事を忘れてはいけません。この様にサラリーマンの人は今回の件で「税負担が増えたー、やってられねぇ!」と嘆き、不満をこぼすのではなく、「どのような制度趣旨で何が変わったか、何が節税に繋がるのか」という視点で分析し、それに対する情報収集をしっかり行ったうえで、国民の義務を果たして欲しいなと思いました。老後のライフプランについては、年金受給額は日本年金機構の「ねんきんネット」で将来の受給見込額を確認できますし、ファイナンシャルプランナーの無料相談会でどのように資産形成を行うべきかなどのアドバイスを受けることができますので、それらをフル活用して、豊かな老後を実現して欲しいと思います。

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港区オジさん(みなオジ)です。
長い極貧オジさん生活を経て、いつの間にか小金持ちのアーリーリタイアオジさんにクラスチェンジしました!
投資家と司法書士の肩書を有する一方、妻の尻に敷かれるちょい駄目オジさんの異名も持つ。