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特定商取引法とは?

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特定商取引法(略称:特商法、正式名称:特定商取引に関する法律)が今年6月に改正されたので簡単に説明していきます。司法書士の守備範囲ではないと思われるかもしれませんが、司法書士として成年後見人を受任していると、悪徳業者に騙されて購入した商品の解約を代理する場面に出くわす事が多いため、知識として必要なのです。

関連過去ブログ:社会貢献型後見人制度と司法書士は→コチラ

特商法はこんな法律

まず、法律の目的を見てみましょう。

第一条 この法律は、特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引をいう。以下同じ。)を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

つまり、世の中にある訪問販売や連鎖販売(いわゆるマルチ商法)のルールを定め、取引を公正にすることで消費者の保護を図るという法律です。あまり法律が詳しくない人でも、「クーリングオフ(解約)」という言葉は耳にしたことがあるでしょう。この規則を定めているのが特商法です。

保護法益は消費者(個人)の利益保護なので、営業のため、又は営業として締結する法人契約等は適用除外です(第26条1項各号)。

また、規制対象の取引は以下の通りです。

①訪問販売(第3~10条)

役務提供事業者が、消費者の自宅など営業所等以外の場所で契約を締結するものです。自宅に来るのはリフォーム業者や新聞勧誘などが有名ですが、自宅近くの喫茶店や田舎では公民館を借りて人を集めて行うものも含みます。最近は全然ありません(逆に寂しい…)が、昔はキャッチセールスでよく声を掛けられた記憶もあります。その際、近くの営業所に連れていかれて契約を締結した場合でも訪問販売に含まれます。

②通信販売(第11~15条)

新聞(チラシ)やインターネット等で広告し、郵便、電話等により申込みを受ける取引。最近インターネット経由での販売に押されている感もありますが、テレビショッピング(ジャ〇ネット、夢グ〇ープ)がイメージしやすいでしょう。

インターネットオークションサイト(〇フオクなど)についても、法人が出品するものは特商法の適用を受けるので、法律に定められている表示事項(対価、送料(の目安)、商品の引渡時期、支払方法等)の記載義務を負います。

なお、特商法と言えばクーリングオフと言うイメージですが、通信販売については、その性質上クーリングオフの適用がありません。

③電話勧誘販売(第16~25条)

有名な所では学習教材や化粧品・食品などの送り付け商法や抽選に当選した等を告げ特別価格で販売すると虚偽告知により販売するケースでしょう。また、独居老人に毎月消費しきれない商品を販売する過量販売(「次々商法」等と呼ばれます)も第24条の2で規定されています。訪問販売や電話勧誘販売で過量販売・虚偽告知があった場合は、解約(クーリングオフ)が可能です。

昼夜を問わず掛かってくる迷惑電話ですが、今度電話が来た際にはこんなところをチェックして聞いていると面白いかもしれません。例えば、事業者名、営業マンの氏名、販売する商品、契約の締結について勧誘する目的である旨の4点は、言い方の違いはあれ伝えてくるはずです。この手のセールスを行う事業者は基本的に真っ当ではない所がほとんどでしょうが、電話勧誘の際は上記の「導入定型文」くらいは研修で学んでいると思われます。

ちなみに、よくある投資用不動産のセールスも電話での勧誘が多いですが、不動産は送りつけができない(登記や宅建業法上の重説や契約書面締結が必要)ので、問題となるケースとしては①の訪問販売(契機は電話勧誘)に分類されます。

④連鎖販売取引(法第33~40条)

いわゆるマルチ商法に関する販売方法です。勘違いされている人も多いかもしれませんがマルチ=違法ではありません。マルチ販売の性質上、他人を連鎖的に誘って、継続的な販売チャネルを拡大しなければならない為に、強引で反復的な誘致をしてしまい、一般的に怪しいイメージが認知されてしまっている為で、本来は法で認められている販売方法なのです。これは法の知識のない末端会員が自身の売上やノルマ達成の為に、目的を隠して知人を勧誘する事からいわば宿命的に発生する問題なのです。

なお、マルチ商法において組織入会契約及びその会員が当該組織の商品を購入をして、その商品を他人に売ることでマージンが得られる契約は連鎖販売業に対してクーリングオフ(違約金や商品引き取り費用等を払わずに行使できる契約解除)ができると規定されています。

通常クーリングオフ期間は起算日から8日(法第9条、15条の3、他)ですが、連鎖販売業者に対するクーリングオフは第37条2項書面を交付、もしくは商品を交付した日から20日と手厚く規定されています(法第40条)。ちなみに、解約期間の計算に際して起算日は初日算入されるので、4月1日に契約書面を交付された場合は4月8日までに郵送すれば(発信主義を採用)クーリングオフが適用されます。

⑤特定継続的役務提供(法第41~50条)

引用元:東京都HP東京都くらしWEB

「特定継続的役務」は法第41条第2項により政令で定められており、特商法施行令第12条(別表第四の第一欄)の通り「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと」(回りくどい言い方ですけど、いわゆるエステ)等の7業種で構成されます。

また、継続要件は1~2か月(役務により異なる)で、かつ5万円を超える契約(法第41条第1項1号、特商法施行令第12条)が当該役務の対象となります。

以前、駅前留学でおなじみの英会話学校NOVAが「受講料前払い」でサービスを提供していましたが、巨額の負債により運営が立ち行かず教室を一時閉鎖しました。当然受講生は解約に殺到したのですが、その際に前払い分の受講ポイント(ポイントを使って授業を受ける形式)の返金に消費者の不利益となる計算方式で対応したとしてトラブルになりました。

ちなみに消費者に不利益となる返金方法とは、中途解約時に、既に受講分の単価を契約時の単価で清算してというものです。つまり「一括払いによる割引単価×未受講分」ではなく「通常単価×未受講分」とし、3分の1以上の未消化チケットが残っていた場合でもケースによっては返金額がほとんど無い等と解約希望者に回答しましたが、裁判所はこれを法49条に定める消費者側の中途解約権を侵害するものとして、返金額の無効を言い渡したものです。

⑥業務提供誘引販売取引

有名なのは内職商法「当社から紹介する仕事で高収入が得られます!」という誘い文句で呼び込み、仕事に必要であるとして、消費者に対しパソコンなどの商品を売って金銭負担を負わせる取引です。

マルチ商法と同様、内職商法自体が違法な取引ではありませんが、パソコンを購入したのにもかかわらず、紹介される仕事が無い、もしくは払った対価に比べて極めて少ない報酬であるというクレームが後を絶たず、社会問題化しています。

その為、業務提供誘引販売取引に限らず特定商取引にかかる契約を締結する際は書面を交付する必要があります。また、業務提供誘引販売業を行う者についてはこれに加え、契約締結前に「概要書面」を交付する必要があります(法55条第1項)。

業務提供誘引販売取引においてもクーリングオフ(20日間)の他、クーリングオフ期間経過後の解約もみとめられます(法第58条の2)。また、この際、違約金と称して多額の金銭を消費者に要求する悪徳業者も多い事から損害賠償額の上限が定められています(法第58条の3)。

パソコンの例を挙げるとパソコンを返還した場合は、使用した後であっても通常の使用料の額を超える事は出来ません。

⑦訪問購入

訪問販売とは逆のケースで、主には訪問買取業者を想定しています。訪問買取業者の中には電話などで「不要なモノ買取ります」と言って訪問したものの、用意した不要品には興味を示さず、宝石やブランド品などを安く買い叩いて強引に買取るといった事案が多発したことから、それを防止するために規定されています。

訪問購入事業者は、訪問購入をしようとするときは、勧誘に先立って、相手方に対して①事業者の氏名(名称)、②契約の締結について勧誘をする目的であること、③購入しようとする物品の種類、を告げなければなりません(法第58条の5)。

その為、事前に古着を買取ると伝えていたにも関わらず、宝飾品などの高額商品を購入する事は違法となります。また、いわゆる飛込勧誘を行ったり査定訪問と言う名目で訪問したにもかかわらず買取を無理強いする等の行為も法第58条の5に反し違法となります。

訪問購入もクーリングオフの対象であり、事業者はクーリングオフ期間内に第三者に当該物品を引き渡すときは、「元所有者がクーリングオフする可能性がある事」「そのクーリングオフ期間」等を、施行規則の様式第5又は様式第5の2による書面にて、第三者に通知する義務を負わせることで、クーリングオフをしたにもかかわらず、その商品が返ってこないという被害を防ぐ事ができるのです。

2022年施行の法改正のどのような内容?

読み込むと結構奥の深い特定商取引法ではありますが、取引を7つの類型に分けてできるだけダイジェストして説明しました。これを踏まえて2021年公布(2022年施行)の改正ポイントを記載しましょう。

Ⅰ.これまではクーリングオフの通知は書面による必要がありました。しかし改正によりメールによる通知でも可能となりました。なお、施行時期は未定ですが契約書面の電子化も予定されています。

また、法69条の3で外国執行当局への情報提供が認められましたが、上記のようにインターネットによる商取引が盛んになった事から、海外事業者に関する捜査についてもボーダレスに対応しようという趣旨の改正となります。

Ⅱ.販売業者は、売買契約の成立を偽つてその売買契約に係る商品を送付した場合には、その送付した商品の返還を請求することができない(法第59条の2)として、送り付け商法対策が強化されました。改正前は送りつけられた消費者側に14日間の保管義務がありましたが、事業者への無用な保護であるとして削除されました。

Ⅲ.役務提供事業者だけでなくその委託業者への立入検査を認める等行政の検査権の拡充(法第66条第3項)と、処分を受けた法人の役員が実質支配する同種の業務を行う法人(いわゆる関連法人)についても業務停止命令等の行政処分を科すことができる様にすることで、実効的な処分が可能となりました。

更に業務禁止命令の対象者の範囲が、当該処分命令の日の前1年(以前は60日)以内に役員等であった者とされ、役員・使用人の処分逃れを封じる事となりました(法8条の2ほか)。

Ⅳ.最後に、詐欺的な定期購入商法が近年社会問題となっていたことから、詐欺的な定期購入商法を封じる為の対抗策が講じられました。

具体的には「初回無料」をデカデカとうたいながら、その実、定期購入契約をすることがその条件とし、更にその表記を分かりにくい場所や小さな文字で記載する等して購入者を誤認させる事を企図した申込フォームが横行しています。

更に悪質なケースとして、定期購入の解約が容易に出来ない仕組み、例えば、解約先を電話窓口のみとして回線が中々繋がらないようにするという手の込んだはめ込みを行う業者も存在する様です。

今回の改正では上記の対抗策として、法第12条の6で申込み段階における「自社申込フォーム」で表示すべき事項を定める事を新たに義務化し(なお、インターネット通販の場合は最終確認画面に当該事項を記載する必要があります。)、併せて特定申込みを受けるに際して不実の表示等があった場合の取消権についても第15条の4で定めました。

さらに、売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除を妨げるために、事業者が事実と異なることを告げる行為は罰則(個人:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人:1億円以下の罰金)の対象となります(法第13条の2、70条①、74条)。

また、上記の特定申込に係る違法行為についても、適格消費者団体の差止請求の対象とされています(法第58条の19)。

適格消費者団体とは

不特定かつ多数の消費者の利益を擁護するために差止請求権を行使するために必要な適格性を有する消費者団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人を「適格消費者団体」といいます。全国に22団体あります。なお、これまで適格消費者団体による差止請求訴訟は、81事業者に対して提起されています。
引用元:消費者庁HP 適格消費者団体・特定適格消費者団体とは

さいごに

特定商取引法の改正を眺めると、悪徳業者と行政の古来から続くイタチごっこ(他に良い表現が見つからない…語彙力が無くてスミマセン。)を見ているようです。インターネットとE-コマースの普及もあるのでしょうが、悪徳業者も色々な知恵を振り絞っていると感じますし、それを撲滅したいという行政の強い意思も伝わってきます。

法律に携わる人以外にも、特定商取引法は日ごろの生活に直結する身近な法律と言えます。自分は騙されないと思っている人であっても、家族がいつ何時巻き込まれても不思議ではないと思いますので、本改正を機に一度概要を把握してみるのが良いでしょう。

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港区オジさん(みなオジ)です。
長い極貧オジさん生活を経て、いつの間にか小金持ちのアーリーリタイアオジさんにクラスチェンジしました!
投資家と司法書士の肩書を有する一方、妻の尻に敷かれるちょい駄目オジさんの異名も持つ。