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マンション管理士の資格について(勉強方法、資格の概要、生産緑地法等と絡めて)

投稿日:2020年10月31日 更新日:

家と勉強

マンション管理士の受験日が1か月に迫りました。みなオジも司法書士の周辺資格という事と何よりマンション大好き(実需と投資用の物件で理事も何期か務めていました)という事もあり、マンション管理士の資格を有して実際に登録までしています。今回はこのマンション管理士の資格について語っていきましょう。

 

資格の概要

マンション管理士とは?合格率、難易度は?

  • 今年度の試験日:令和 2 年 11 月 29 日(日) 毎年年1回の実施 ※願書受付は既に終わっています。
  • 申込者:14484人(前年比 103.8%増 コロナの影響で今後人気の資格になる可能性も?)
  • カテゴリー:国家資格・名称独占資格
  • 受験資格は特にないが、管理業務主任者という別資格を有していると、試験の一部(マンション管理適正化法:5問)免除がある。
  • 難易度:中~やや難(不動産管理系業務従事者であれば中程度の難易度)
  • 問題形式:4肢択一形式 50問 2時間
  • 全50問中35問~38問(7割程度)以上正解で合格(年度により変動)。
  • 合格率は7~8%

マンション管理士の業務内容は?

業務内容:マンション管理に関するアドバイザリー業務(弁護士、司法書士、税理士のような独占業務はなく、「名称独占資格」である)

※名称独占資格とは…試験合格後登録した者のみが当該資格名を名乗ることができる資格です。一方で、資格を所有していない者が資格名称を名乗ると罰則が適用されます。業務を行う場合は、その資格がなくてもその業務に従事する事はできますが、看板・HP・名刺に資格名を入れたり、名乗ることはできません。

マンション管理に関するアドバイザリー業務の具体例を挙げると下記の表の様な感じです。ちなみに、マンション管理人と混同しそうな名称ですが、どちらかというとコンサタントに近く、「マンション専門の中小企業診断士」といった方が適切といえます。

・管理組合の収支改善(管理会社の変更など)に資する助言、実施案の提案
・長期修繕計画の策定、改定
・管理規約作成をはじめとする管理組合支援
・大規模修繕工事の関係業務(監査、立ち合い、修繕箇所及び見積もりの妥当性チェック)
・理事会運営支援(外部監事として参画も含む)
マンション管理士が行うアドバイスの一部

特にマンションの大規模修繕は10年に1回の一大イベントで、工事金額も億円単位(マンション規模により異なる)なので、アドバイザーを付けて対応する管理組合も多いです。マンションの管理は住人による自治が原則ですが、マンションに住んでいるからと言って、住人皆がマンションの知識を有しているわけではありません。また、組合運営には通常管理会社が入りサポートを行いますが、ごく一部ですが恣意的なコントロールされる恐れもあるため、第三者的な視点を持つ独立系のマンション管理士を入れる需要は高いと言えます。(管理会社はウザがるかもしれませんし、住民側にも何処の馬の骨かわからないような管理士に(報酬に相応しい働きをするかどうか疑って)拒否感を持つ人もいるかもしれません。

マンション管理士の成長性(食える資格か?)

結論から言うと、これからマンション管理士の需要は増えるとは思いますが、この資格を有しているから安泰とは思いません。どちらかというと、後述するように補助的な資格だと考えています。どの資格にも言える事ですが、座学で覚えた知識だけで通用する程、世の中甘くありません。特にアドバイザリー業務は一定の実務経験があって初めて説得力を持つものですので、無資格でもマンション管理の業界にいる人の言葉の方が重みがあります。ただ、管理される側の住人も一定程度の知識を有する必要はありますし、管理費の横領等も良く問題となっています(残念なことに理事長・管理会社双方が犯人となっています)のでその抑止力として外部監査的な役割は必要ではないかと思います。この点、企業では、弁護士や会計士が外部監査を務め、有事の際は外部調査委員会等を組織します。マンションも営利活動をしない点を除けば企業と同様の組織体ですので、同様のチェック体制は有しておくべきなのです。彼らの知識ではマンションのトラブルに効果的に対応できないので、マンション管理士がその辺りに専門的に介在できれば良いのかなと個人的に思います。

マンションを取り巻く環境

マンションを取り巻く環境は、それ程悪いとは思っていません。法令遵守の動きが企業だけではなくマンション運営にも求められている事、そして今後老朽化マンションが増えることから、建て替え事業などで一定程度の需要が見込まれます。ただし、独占業務を有する資格ではない為、他業士との競合が予想されるでしょう。突っ込んで言ってしまうと、建替え事業は行政も巻き込む様な規模感と関係者が多岐にわたることから難易度と専門性は高くなりますので、マンション管理士の受験勉強をしたくらいでは到底対応できないことが多いのです。また、競合相手も管理会社勤務上がりや建築士や行政書士・司法書士等の資格者がダブルライセンスとして取得した者となり、その資格一本で相対するのは難しいかもしれません。できれば、自分ならではのプラスアルファ(行政に何らかの影響力を持っている等)の強みをアピールすれば勝機はあるかと思います。

民間の認定資格が多い不動産系資格の中では、国家資格という信頼感の高さと難易度もそれなりに維持されていることから、名刺などに資格名を入れると箔が付くかもしれません。(不動産関係の民間資格は有象無象含めてよく分からないものもありますからね。)いずれにしても、マンション管理士という資格が世間から認められるためには、活動を通じて評価を高めるしかありません。

みなオジは、なぜマンション管理士を取得したか?

一般的な資格取得の経緯は、不動産管理業務に従事する中で必要性に駆られて取得したという方や中には自身が住むマンションの管理組合の理事に選ばれたのを契機に資格を取得したという方もいます。で、当のみなオジはというと、仕事というよりも、大好きなマンション(運営・管理)のことをもっと知りたいという知識欲の延長上でこの資格(とついでに「管理業務主任者」も)を取得したので、正直この資格で稼いでやろうという気持ちはありません。ただ、この資格を持つことで(本業ではないですが)司法書士業務にも活きるだろうという下心はあります。当然本業である不動産投資家としても役に立っていて、中古マンションの目利きは相当自信があります(マンションは管理状況が一番大切ですので)。個人的には司法書士としての法律的な目線に加えて、投資家としての不動産相場感やマンション管理士として管理の実態も理解している点で、誰よりもバランスよくマンションを知っている(タラララッタタ~♪の長谷〇よりも?!)と自負しています。

学習の手引き

マンション管理士試験は上記で記載した通り、色々な流入者が資格取得を目指すので、その流入元の特性に合った学習法があります。みなオジは法律系資格からのダブルライセンス狙いで勉強を始めたので、民法・区分所有法などは改めて勉強しませんでしたが、一方で設備や建築関連の知識は覚えるのに難儀した思い出があります。具体的な勉強法は後で記載しますが、まずは試験科目を見ていきましょう。

試験科目(問題数は大体の目安で)

【一般法令】

◆区分所有法:10問  民法・借地借家法:6問 マンション管理適正化法:5問 

◆不動産登記法:1問 建替え等円滑化法:1問 被災マンション法:1問

行政書士等の法律系資格をすでに所有する受験者であれば、民法などは特に追加で覚える箇所はないでしょう。宅建合格者レベルも問題ないと思いますが、念のため流しておいて、受験当時の記憶を呼び覚ましましょう。また司法書士に合格レベルでしたら不動産登記法や区分所有法や借地借家法も無勉強でOKでしょう。(逆に落とせないというプレッシャーがあるかも?)

【建築・設備関連】

◆建築・設備・維持保全:11問 

前述の通り、みなオジは一番苦戦しました。でも、勉強していて一番役に立ったなと感じる分野でもありました。U字トラップとかさや管ヘッダー方式とか、聞いたことなかったけど、賃貸募集の時はたまに封水切れ起こさないように、洗面所のとか風呂場の排水溝に水流したりしてました。マンション・ビル管理会社に勤務されている人であれば、楽勝?

◆都市計画法:1問 建築基準法:1問→街づくりとか、興味ある人には興味深い分野の法律。マンションデベロッパーや不動産仲介の営業であれば簡単ですよね。この2法は2個イチで理解すると横断的かつ相互理解が深まります。

みなオジは独学でマンション管理士を取得しましたが、土地計画法が中々理解できなかったので、ノートにまとめたりして覚えました。当時のノートから一部転載(一部加筆・修正あり)します。

都市計画法のイメージ(みなオジ受験時のノートを加筆・修正)

みなオジが勉強した時から多少法律も変わっていて、恥ずかしながらウォッチできていない改正点もあり、この機会に改めて振り返って非常に良かったなと感じました。以下、都市計画法のホンの触りだけ説明します。

用途地域に新種別が

①市街化区域内においては「用途地域」(2019年4月から「田園住居地域」が25年ぶりに追加され、そのほかに「第1種低層住居」等、地域用途に応じて13地域が存在)を定める必要があり、③非線引き区域⑤準都市計画区域では用途地域を定めることができる、とされる…

生産緑地法ってなんだ?

ちなみに「田園住居地域」とは、都市部の田畑と宅地の共存を目的とする用途地域であり、昨今の都心部の宅地不足を受けて、生産緑地法(農地の保護を目的に世田谷等の都心部の農地を政策的に低い税率とした法律)が2022年に廃止される事となりました。これを受け、固定資産税が増加される前に、一斉に宅地として売却され、急激な宅地化が懸念されたことからその緩和を目的に追加された用途地域なのです。

ブログでいつか記載しようと思いますが、生産緑地法にまつわる「2020年問題」はどうなるのでしょうね。生産緑地の多い世田谷区、練馬区等で営農義務が解かれた土地が一斉に市場に出るのではという予想があります。営農義務は30年課せられていましたから、生産緑地化当時の農地所有者も高齢化しているはずです。また、営農義務解除後は自治体に買取申出が可能ですが、自治体側の買取義務はない(買取拒否が可能)ので、結果として相続時対策でおなじみの大〇建託に流れていくのでは?という内容です。(問題の本質はそこではなく、空き家問題ですね。)司法書士的には不動産売買が活発になることは良いことですが、「空き家問題」の解決にも取り組まなくてはいけません。そもそも、「生産緑地法」を作った国の方針自体が転換(30年の間に日本は人口増加の時代から人口減少のステージに入り、食物自給率の向上が課題とされた)しているのですから。

◆水道法:1問 消防法:1問

【管理実務・会計】

◆管理組合の会計・税務:2問 

◆マンション標準管理委託契約書:1問 マンション標準管理規約:8問

会計税務については問題数的にも落としても良いので、無視しても良いかもしれませんが、簿記3級くらいの知識があれば解けるレベルの問題ですので、ここを取れると他の受験者との差を広げることが可能です。

8問程度出題される「マンション標準管理規約」は、分譲マンション(法律的には「区分建物」といいます)の管理規約について国土交通省が一定のガイドラインを示すため作成したマンション管理規約のモデルを言います。役員(理事・監事)の定め・管理組合総会や理事会の決議事項や決議要件に関する規定もあり、会社で言うところの「定款」に似ています。マンションに住んでいない人は、マンションが「専有部分」と「共用部分(と専用使用権)」に分かれているという事を知らない人も多いでしょう。知っていたとしても、ベランダは「共用部分」ですとか、その部分の修繕費用や管理義務は誰が負うのか等は結構知られていません。また、駐車場使用やペット飼育に関する定め等は「使用細則」に落とすといった定めも標準管理規約に記載されています。この内容及び改正論点だけで一つネタが書き切れてしまうボリュームなので、マンション管理士のトピックではこれくらいにしておきましょう。

勉強法

一部クセの強い問題もありますが、レベル的にはそれほど難しくはないですし、設問傾向としては過去問を中心となっている印象が強いため、みなオジ的にはあれこれと教材に手を伸ばさず、一つのテキストと過去問を数回回していけばよいと思います。直前期は本試験の解答ペースをつかむために資格スクール(ユーキャンLECの通信講座等)の問題集や模試を受けておけば良いでしょう。建築系の知識を有する者(建築士)、法律系の知識を有する者(司法書士)、会計系(日商簿記、税理士)の知識を有する者がダブルライセンスとして受験する傾向があることは前述の通りですが、上記資格者の得意分野での取りこぼしはほぼ生じない難易度の問題ですので、その分、不得意科目の学習をいかに効率よく進めるかが合格の鍵といえる。また、5問免除を活かすために先に周辺資格である「管理業務主任者」資格を取っておくのも一つの手です。

学習期間はどのような経緯で学習を始めたかによりますので、人それぞれで参考になりませんが、みなオジ(司法書士・宅建士・マンション好きの不動産投資家)がこの試験にかけた時間は2か月弱です。日中はサラリーマンとしての仕事をしていましたし、基本的には土日に集中して勉強するといった感じでした。

マンション管理士

最後に

いかがでしょうか。願書を出したはいいが、仕事が忙しくてあまり勉強が進んでいないという人でも、ここからラストスパートかければ十分合格可能です。リモートワークで通勤時間等を勉強時間に充てられるという追い風もあると思いますので、このチャンスを生かして是非合格を勝ち取ってください!

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みなオジアバター

港区オジさん(みなオジ)です。
長い極貧オジさん生活を経て、いつの間にか小金持ちのアーリーリタイアオジさんにクラスチェンジしました!
投資家と司法書士の肩書を有する一方、妻の尻に敷かれるちょい駄目オジさんの異名も持つ。