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サイドFIRE その功罪を語る

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一昔前は「セミリタイア」と言われてました。

コロナも収束かと思いきや、オミクロンの襲来で一進一退ですね。年始からまん延防止等重点措置ということで、先の見えない不安が襲い掛かってきそうですが、こういう時こそ前向きになれるネタを探しましょう!今回注目は「2022年は「サイドFIRE」を目指そう!」という記事です。

2022年は「サイドFIRE」を目指そう!

昨年は若い世代を中心にFIREが話題になりましたが、FIREを実現するためには、極端な節約で投資金額をできるだけ確保し、生活費のほとんどを投資する必要があります。そこで、提案したいのが、働きながら無理をせず投資で稼ぐ「サイドFIRE」という方法です。今回は、「サイドFIRE」についてお話します…(中略)

…そこで、ぜひ目指したいのが、勤労収入+資産運用収入を組み合わせる「サイドFIRE」です。例えば、年間支出が300万円だとすると、資産運用の収入は100万円を目指し、残りの200万円は勤労収入で得るという場合であれば、100万円の25倍ですからFIRE資産は2500万円用意すれば良いということです。

引用元:Suits Woman1/17(月) 12:07配信

「サイドFIRE」を語る前に、皆さんは「FIRE」についての基礎知識はあるでしょうか。FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取った言葉で「経済的に自立し、早期退職を目指す」というものです。

まず極論でない所が良いですね。バッサリ仕事辞めるとか不測の事態があった場合に目も当てられませんので、失敗してもリカバリーできそうな所も評価ポイントです。

ちなみにみなオジは、以前「副業(複業)」(会社に依存をしない生き方)という切り口で、サラリーマンは経済的自立を早期に勝ち取ろうというブログネタを書きました。

関連過去ブログ:企業における「働き方改革」「多様性の尊重」を考えるは→コチラ

とはいえ、少し現実的と言えない様な点もあり、その辺りを少し検証してみようかと思います。

辞めてからの生き甲斐確保

FIRE関連の記事を見ると、仕事を早期退職する事が目標になっている人を散見されますが、そもそも辞めてからその余った時間をどう使うのかを考えておかないと「ただの隠居」になってしまう訳で、会社を辞めた後も社会と接点ができる様な準備も並行して行う必要があるでしょう。

FIREを目指す人の多くは、仕事(サラリーマン生活)が嫌で、早く足抜けしたいという想いから、追い詰められたように質素な生活をしているといったイメージがあります。しかし、そういった後ろ向きな姿勢でFIREを目指すと、その後の人生も(会社の拘束からは解放されますが)充実とはかけ離れた人生になってしまうでしょう。

他人のFIREの動機にとやかく口を挟むのもどうかと思いますが、サラリーマンから解放された時間を何か他に費やそうという動機付けが重要になってくるのではないでしょうか。

FIRE後の生活感がイメージできているか?

ちなみに記事では「資産運用の収入は100万円を目指し、残りの200万円は勤労収入で得る」とありますが、これまで働いてそれなりの年収を得ていた人が果たして300万円で暮らしていけるんでしょうか。

人間は欲にまみれた生き物で贅沢な生活は簡単にできるのですが、逆に一回覚えた贅沢を抑える事はかなりの苦痛を伴います。私自身の実体験上もその通りだと思います。

また、200万円という金額を稼ぐ術はどのように確保するのでしょう。一見200万程度の収入を得る事は簡単そうですが、サラリーマンをしていた人にとっては逆にどのように働けばよいかイメージが付きにくいのではないでしょうか。パート?それとも派遣や業務委託等で月に10日くらい働く感じでしょうか?それなりにバリバリキャリアを積んだ人にとって、200万円を稼ぐのはむしろストレスがありそうです。

医者であれば、仕事の質を変えずに量や働き方(救急外来のバイト)を調整する事で収入をコントロールする事は比較的簡単ですが、普通のサラリーマンはそういう方法で収入を200万円程度に落とすのは、仕事の質、つまり今まで事務職だった人が慣れない力仕事をするとか、立ち仕事等も組み合わせて行く必要が生じるでしょう。(つまり、やりたい仕事だけで生活できるほど余裕が無いという事です。)

結局のところ、2500万円というFIREの目標金額は一律な基準ではなく、人によるという結論になるのではないでしょうか。30代、40代で2500万円を貯める事ができる人は年収的にもかなり限られると思われ、年功序列の日本のサラリーマンだと30代に年800万円くらい稼いでいないと、FIREに十分な蓄財を達成するのは難しいでしょう(実家暮らしなら別ですが)。記事を見て「2500万円溜まったから自分もサイドFIREしようかな?」と飛びつくのは少々短絡的ではないでしょうか。

そうすると生活を維持したいがために無理な運用をして資金を溶かしたり、勤労収入を増やそうとかえって労働時間が増えてしまうという本末転倒な状況になってしまうので、準備すべきFIRE資金は7500万円以上(運用額300万円~)を見ておかなければならないでしょう。(あ、そうすると結局FIREと同じか??)

40代前後でまとまった資産を貯める事が出来るのは、高収入は勿論の事、金を持っているにもかかわらず支出を抑えられるセルフコントロールができる人に限られます。しかし、高収入の(特に若手の)サラリーマンはお金を使いたくても使う時間が無かったという環境に助けられたという人も多いと思います。サラリーマンを辞めて時間が有り余った状況下でも今までと同じ様に金を使わずに過ごせるという自信が無ければサイドFIREは難しいでしょう。そう考えると、サイドFIRE適正のある人はかなり限定されると言えます。

サイドFIRE達成者は「世捨て人」にあらず

物価の安い田舎で暮らすなら、生活費の心配も無く十分やっていけるでしょう?という反論がありそうですが、そもそもサラリーマン生活から脱出したい一心でFIREをした人は、都会よりも人間関係の煩わしい田舎のムラ社会でやっていけるでしょうか?生活コストの安さだけで田舎暮らしをしようというのであれば、それはやめておいた方が良いでしょう。

結局、FIREの魅力というのは、経済的自立により得た自由な時間を自分自身の夢や家族の幸せ、もしくは社会へ還元できるというものです。FIREの動機が「ただ楽をしたい」というのは少々もったいないですし、上記で挙げた様にそもそも長続きしないものと思われます。田舎で暮らすにしても、そのコミュニティでの自分の役割をいかにして果たすかを考える事で人生の充実度が変わっていくのではないでしょうか。具体的には(自分自身の親を含む)高齢者との触れ合いだったり、これまでの自身のキャリアを活かして農業・林業といった地場産業への従事と絡めて地方創生に尽力することで、これまでの無機質なサラリーマン生活とは異なった充実感を味わえるでしょう。

サイドFIRE指南書に惑わされるべからず

最近、これまでセミリタイアと言われていた悠々自適な不労所得生活を「FIRE」という耳障りの良い単語に置き換えたことから、FPや自称投資家を名乗る人が安易にFIRE指南書を出していますが、彼らはFIRE実現の為のテクニック的な事(運用する金融商品の情報)ばかりを言って、FIRE後どのように生きていくかという「QOL(人生の質)」についてはほとんど触れていません。甘い言葉でFIREをちらつかせ、本来FIREができる水準にない人にまで爪を点す様な生活をさせた末に、準備不足のままに会社を辞めさせる事はむしろ不幸の大量生産をしている様に見えてなりませんよ、みなオジは。

そもそも、働くという事を単なる「生活の手段として」のみと捉えているから、安易にFIREを勧めてしまうのです。仕事は生活の手段であることを否定する訳ではありませんが、仕事は社会貢献や自分の生き甲斐を与えてくれるモノでもあります。

自分に子供がいたとして、十分な資産があるからと言って、父親が育児もせずに毎日家でぶらぶらしていて、子供に勉強しろと言って、説得力があるでしょうか?何かに打込む姿を見せなければ、家族ですら付いてこなくなるでしょう。

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港区オジさん(みなオジ)です。
長い極貧オジさん生活を経て、いつの間にか小金持ちのアーリーリタイアオジさんにクラスチェンジしました!
投資家と司法書士の肩書を有する一方、妻の尻に敷かれるちょい駄目オジさんの異名も持つ。